第87話 葵のダチ
*
思い出したぜ。安曇野美咲──
てか、何であんな強烈なキャラ忘れてたんだよ俺!
タイムリープ前、奴に最後に会ったのは葵の葬式だ。何故か凄い仲が良かったんだよな、ミーコと葵。
そうだ、タイムリープ前──
あいつは事件を起こして、進学した農業高校は退学になり、女子少年院まで行ったと聞いている。
でも、俺は安曇野美咲が間違ってたとは思ってない。
タイムリープ前、安曇野は葵を轢いた運送会社に乗り込んでいった。
会社の不正や責任を逃れようと夜逃げをしようとしていた会社の社長と役員をボコボコにしたのだ。
ただそれ以上に気が収まらなかった安曇野は止めに入った警察にまでも意図的では無いにしろ怪我を負わせてしまった。後の裁判でそれが痛かった。
俺は葵と仲のよかった女の先輩に聞いたのだが、曰く、安曇野はワンワン泣きながら、最低な大人どもに拳を振り下ろしていたという。
親友を返せ、命を返せ、葵を返せ──と。
誰よりも葵の死を悲しんでいたのは葵パパだとしたら、次に葵の死を悲しんでいたのは安曇野なのかも知れない。
──俺は何もできなかったな……
葵を轢き殺した飲酒運転の容疑者の判決に、葵の死に納得いかずに刑務所まで乗り込んだ葵パパ。
親友の死を嘲笑うかのように、自身の保身を選んだ間違った大人たちに鉄拳制裁を加えた安曇野。
葵の死が招いた、人生を狂わされた人間のツートップは恐らくこの二人だろう。
──そんな時に俺は何をしていた?
葵の死に実感も持てず、葵パパに比べれば安い涙を流して、何もかも人のせいにして、俺は家に引きこもり続けた。
ダメだよな。そんな俺がどの口で葵を好き何て言えるのだろう。
この神様から貰った最初で最後の一度きりのタイムリープの葵を救うチャンスを必ず成功させよう。
あんな悲劇は二度と起こしてはならない。
葵を救えば、葵パパも安曇野も救われるだろう。
どうしようもない俺だけど、いや、どうしようもない俺だからこそ与えられた、タイムリープを使い、葵を──皆を必ず救うと誓おう。
それが俺に与えられた使命だ。
「──夜咲君? 委員会、遅れるわよ?」
「ん、ああ、海崎か。悪い、急ごう……って、あれ? 清掃委員会って会場どこだっけ?」
「夜咲君、時々凄く抜けてるわよね。私たちは理科室よ。はい、行きましょ? 初回から遅れると気まずいんだから、他皆他クラスと後輩なんだし、格好付かないでしょ?」
海崎に笑顔で両手で背中を押されながら、理科室を目指す。ふと、タイムリープ前の葵の葬式に海崎も来て泣いてたのを思い出した。いくら葵の死とはいえ、あの海崎が泣いていたのを見たのは凄く驚いたのを覚えている。
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