第86話 給食委員長
*
「うー、落ちちゃった。頑張って書いたのに。やっぱ最初に噛んじゃったのがいけなかったかな」
凹んだ様子で席に戻って来た葵はぐで~っと、机に突っ伏してしまう。
「いや、相手が悪かったな。藍の演説のが具体性があり、人を引くギャグまで織り込んでいた。お前がダメなんじゃない。あいつが良すぎたんだ。まあ、俺が言うのもあれだが、気を落とすなよ」
「じゃ、じゃあ耕平、一緒に別の委員会やろうよ?」
机に突っ伏したまま上目使いで言ってくる。
「あー、悪い、俺最初の第一希望で決めちまった」
「え、嘘、どこ!?」
「清掃委員」
「せ、清掃委員て、ユーリと一緒じゃん!?」
黒板に書かれた赤丸の付いた(もう決まった)委員会を見て葵が残念そうな声をあげる。
「まあ、海崎に誘われたしな」
「むー、耕平の裏切者~」
「あはは、夜咲君、誘っちゃった。ごめんね☆」
手を合わせる海崎に葵は終始ムクれ面。
「じゃあ私保健委員に第二希望出して来ようかな。保険の田沼先生優しいから楽しそうだし」
投げやりな葵、まあ一巡目の第一希望が通らないと萎えるよな。目ぼしいのは一巡目で大体埋まるし。
*
翌日の六時限目、今年度初の委員会活動の時間があった。
おかしい……何で、給食委員会の桐生と藍はスーツを着てるんだ? 委員会にスーツ?
「なあ、葵? って、あれ? 葵は?」
「葵なら委員会行ったわよ。私たちも行きましょ?」
「なあ、海崎、給食委員会は何でスーツなんだ?」
「え? ウチの学校の給食委員会はスーツよ?」
「何でだよ!」
「何でって、安曇野さんの意向でしょ」
「安曇野?」
何だこの感じ? あと一歩で思い出せそうな。
──!! 思い出した!
「安曇野美咲か!」
安曇野美咲──通称・安曇野ミーコ。
給食委員会のトップにして世界最強の給食委員。
噂をすればと言うのはこういうことだろう。
ウチのクラスに一人の来訪者が来た。
「葵はいるかい?」
かなり大柄な女子生徒だ。ボサボサの長い黒髪に体重は120kgを優に超えてるだろう。女子相撲があればスカウトが来そうな体型と圧力だ。
給食委員の二人はビシッとミーコに敬礼。他の生徒はミーコの登場に完全に固まってしまっている。
「あ、夜咲君、どこ行くの!?」
俺が前に出てミーコに質問の返答を返す。
「葵なら保健委員会だ。伝言なら預かるが?」
「ん~? お前、夜咲耕平だね? そうかい。葵は今年もウチには入れなかったか。あたしに言ってくれればどうとでもしてやるのにねぇ」
「葵はズルはしねぇよ」
「知ってるさ。付き合いは長いからね。言ってみただけだよ。時間を取らせた悪いね、またね、夜咲」
そう言うと重い足取りでミーコは去っていく。
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