第76話 小さな朝のお花見4
サンドイッチ、野菜スープ、プリンを綺麗に平らげた俺と葵はご馳走さまをすると、食器を下に運ぶ。
「あ、凄く美味しかったです! ご馳走さまでした」
葵が母さんに礼を言うと、母さんは嬉しそうに、
「はい。お粗末様でした。お口にあったなら何よりだよ」
と、笑った。いや、母さん、本当に嬉しそうだな。
「毎日でも食べたいぐらいです。あ、食器、私、洗いますよ」
「いいんだよ。葵ちゃんは学校があるんだから」
やんわりと母さんに皿洗いを断られた葵は俺と共に洗面所で歯を磨く。つーか、学校に行くのに歯ブラシセット持ち歩いてるんだな。確か、給食後に歯を磨く層が一定数いた。そしてその9割は女子生徒だった。
「コップ使うか?」
と、先に口を濯いだ後のコップを軽く水で長したコップを葵に渡すと、
「う、うん/// あ、ありがとっ///」
と、顔を赤らめた。何だ? 一回洗ってるんだから、こんなの間接キスでもあるまいし。
歯を磨き終わると、葵が「写真撮りたい!」と、俺の部屋にまたやって来た。
勿論、俺の部屋の写真を撮りたいワケでは無く、あ、いや、何か、俺の部屋の中も撮りたそうだったが、部屋の中の撮影は断固拒否。なので、俺の部屋の窓から葵は庭の桜の写真だけ、携帯でパシャりと撮っていた。
「あー、朝食も写メ撮ればよかったなぁ……」
「また来ればいいだろ? 母さんも喜ぶよ」
「いいの? うん、また来たい! えいっ!」
『えいっ!』なる掛け声と共にパシャりと写真が撮られた。戸惑い顔の俺と笑う葵、そして窓から覗く満開の桜と言うスリーショットだった。
「えへへ、撮っちゃった♪」
「あのなぁ、俺は写真苦手なんだが?」
「あ、ごめん。知ってたけど、つい……お願い! この一枚だけ許して!」
一枚だけ、一枚だけだからと、懇願する葵。あー、もう可愛いな。写真ぐらい何枚でも許しちまいそうだ。俺の気持ち知らないだろうけどズルいぜ。
恋は先に惚れた方が負けとはよく言ったものだよ。
「はぁ、それだけな」
「やった! 待ち受けにしようかな」
「いやそれは止めろ! 俺が写ってるんだぞ? 縁起が悪い!」
「えー、何それー? ここ最近の耕平、前よりずっとイイ顔してるよ。死んだ魚は卒業だね!」
この時代の少し前の俺は葵から見ても、死んだ魚のような目をしていたらしい。
でも、それを晴れて卒業の太鼓判を貰った。
「て、え!? 耕平、泣いてる!?」
「ば、バカ、泣いてねぇよ! べ、別に死んだ魚を卒業できたのが嬉しかったワケじゃないんだからな!」
「あ、耕平、時間!! 急がないと遅れちゃう!」
「え? もうそんな時間か?」
時計を見ると7時50分──
うお、マジで、時間無いじゃん!
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