第71話 帰り道3
いつもの別れ道に着くと葵は「じゃあ私はこっちだから。また明日ね♪」と、眩しい笑顔で笑ってきた。
俺も「ああ、じゃあまたな」と、軽く手をあげる。
葵と別れた後、あ、今日は月曜か。夕飯は松爺の店かな。と、考えながら帰宅すると、丁度、母さんが起きてきた所だった。「ただいま」というと「おかえり」と返事が帰ってきた。
その流れで俺が母さんに「葵が明日、俺を起こしに来るからまた葵の分も朝食を作ってくれよ」と、言うと、母さんは嬉しそうに「任せなさい」と微笑んだ。
「そうとなったら〝東友〟で食材を買い出しに行かなくちゃね。仕事終わりに買ってくるわ」
〝東友〟とは24時間営業をしてるスーパーだ。
だから夜勤帰りの明けの母さんの強い見方だ。
母さんが化粧をするのを待ち、夕飯を食べに松爺の店に行った。いつも通り醤油ラーメンを二つと今日は野菜炒めも頼んだ。
松爺の野菜炒めは見映えは悪いが、ラーメンのタレを使って作る為、唯一無二で普通以上に美味しい。
週刊少年漫画雑誌を読みながら待っていると、不意に母さんの携帯が鳴った。
母さんがメールを開くと「ふふっ」と、楽し気に笑った。メールを見て笑う母さんを俺は初めて見た。
え? 何、メールで笑う母親……何か怖い。
「葵ちゃんからよ『こんばんは。葵です。明日、お邪魔していいですか?』ですって、律儀よね。朝食の件も理由と合わせて凄い丁寧に書かれてるわ。こんなに他人行儀に遠慮しなくてイイのにねぇ」
「まあ、律儀だからな。あいつ、つーか、丁寧にっと、どんな風に書いてあるんだよ?」
興味本意に俺が問うと。
「ダメよ。女の子のメールを見る何て最低の行為よ」
と、軽く叱責を受けた。
うん、ぐうの音も出ないド正論だ。
そんなこんなをしてると松爺がラーメンと野菜炒めと餃子を運んできた。ん? 餃子?
「耕坊、ここん所はちゃんと学校に通ってるらしいのう。偉いぞ、餃子はサービスじゃ。沢山食べとくれ」
松爺はちゃんと学校に通ってて偉いから餃子をサービスと言ってるが、松爺は何かに理由を付けて、餃子や野菜炒めをサービスでくれる。
時には『何となく作ったから』などと言う、飲食店ではあるまじき理由でくれたりする。
こんな多サービスでお店はやってけるのか? と、心配になるが、松爺の店は常連だけでも十分やってけるらしい。酒も扱ってるし、人経費は松爺の他に一人だけいるバイトのおばさんだけだ。
そんなことを考えながら俺はラーメンと餃子に野菜炒めと、松爺の店のフルコースを堪能した。
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