第65話 保健室
二時間目の後の休み時間、俺は保健室に向かった。別に体調が悪いワケじゃない。海崎に言われて葵の様子を見に来たんだ。ちなみに海崎は来ないらしい。何でも『夜咲君だけで行った方がいいから』との事だ。
保健室に入り、見舞いに来たと話すと。保健室の先生じゃなく、所謂、色んな諸事情から保健室登校の生徒に「あ、噂の夜咲耕平だ。月島さんのお見舞い? なら、そっちそっち」と、背中を押された。
噂のって、俺はどんな噂をされてるんだ?
と、思いながらも、
「おーい、葵、入るぞ?」
カーテンで仕切られた、一番奥の保健室のベッドに入ると……葵が着替えていた。
……何てお約束イベントは発生せず。だが、俺の来客に驚いた葵は「こ、耕平っ!?」と、ベッドから飛び起きる。お、元気よさそうだな。
「調子はどうだ?」
「うん、少し落ち着いた。三時間目からは授業出るよ。修学旅行の授業だし」
修学旅行の授業? ああ、確か六月の修学旅行のあれこれを決めたり、予習する授業だったか?
「それで、ほれ。一時間目の国語と二時間目の英語、勝手にだがノート取っといたから読んどけ」
と、葵に葵のノートを渡すと。
「え、ノート書いてくれたの? 耕平が?」
「まあ、お前には世話になってるしな」
パラパラとノートを捲る葵は、
「わ、分かりやすい……英語の文章、フリガナだけじゃなくて、意味まで詳細に書いてある。嬉しい」
と、ノートに喜んでくれて俺は満足した。
「それぐらい書かないとお前は覚えられないだろ?」
嫌みとかじゃなく、本気で心配してそう言う。
「あはは……う、うん。覚えられないかも……あ、でも、これなら覚えられそう。耕平、ありがとう!」
「どういたしまして、ほら、行くぞ」
と、言うと「うん♪」と、嬉しそうに葵がベッドから起き上がる。つーか、朝のあれは何だったんだ? まあ、元気出たならそれでイイか。
教室に戻ると、海崎が「あら、二人揃って楽しそうね」と、クスクスと楽しそうにまたからかって来る。
こいつ絶対に反省してないな。全く思春期め。
すると葵が海崎の方に行き、軽く耳打ちで何かを呟くと、少し驚いた顔をした後に海崎も何かを笑って呟いた。それが何だったかはよく聞こえなかった。教室も休み時間で騒がしいしな。お、俺は別に難聴系主人公じゃないぞ?
主人公と言ったが、人生なんて誰もが主人公だしな。俺の母さんや、松爺だって、自分が主人公の人生を送っているんだ。俺だって自分が主人公の物語を送ってもいいだろう。
まあ、難聴はともかく、俺はタイムリープ何て言う漫画の主人公みたいな経験しちゃってるんだがな……
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