第46話 学校の冒険5
「え、え、えーと、あはは……ビックリかな。そ、それに私なんて好きになってもイイことないよ?」
「そんなこと無い! 付き合ってください! 前から気になってたんです。もう気持ちが抑えきれなくて。俺顔も悪くないだろ? 優しくするし、こう見えて結構モテるんだ! 俺の友達も応援してくれてるし!」
沢何とかが葵に更にグイグイと言う。
「その……ごめんなさい。お付き合いはできません。モテるんなら私何かよりイイ人、きっといると思うよ」
──振ったぁ!! 葵は沢何とかの告白を断った。
その事実が俺の胸のつっかえを取り除く。
「そんなもう少し考え直してくれよ!! な、な、付き合ってくれよ! 後悔はさせないからよ!」
それでも諦めない沢何とか。葵は慌てるかと思いきや、落ち着いた、でも少し恥ずかしそうに口を開いた。そして俺はその言葉にショックを覚えた。
「ごめんなさい。何度言われても付き合えません。その……ずっと前から好きな人がいるので──!」
それでもまだ沢何とかは葵に何か言おうとしたが、葵は「ごめんなさい。私は部活があるので失礼します」と、タタタとその場を去る。
葵が去った後、沢何とかは「クソッ!」と、近くの木を腹いせにか何発か蹴り飛ばし、機嫌が悪そうに帰って行った。つーか、こんな奴と葵が付き合わなくて本当によかった。……それにしても……
「……そうか、葵、好きな奴いるんだな……」
一難去ってまた一難。葵に思い人がいると聞いて、俺は血の気が引いた。好きな人に好きな人がいるってのはこんなにも色んな感情が押し寄せてくるんだな。
ちょっと今は動けそうに無い。俺に舞うあんなに綺麗だと思った桜の花弁すらも今は煩わしく思えた。
壁に寄りかかり、その場にズルズルとしゃがみ込む俺は、本当に自分でもビックリするぐらい、身体に力が入らない。
葵だって思春期真っ只中の中学生だ。好きな人の一人ぐらい、そりゃ葵にだっているよな……
それがもしも俺だったら何て、それこそ思春期お約束の自意識過剰な勘違いは中身は三十路の俺はしたりはしない。
葵が好きな人と幸せなら、俺は葵が幸せならそれでいい。葵が事故で死ぬXデーを回避したら、俺はお役目ごめんでいいだろう。
葵が幸せなら、葵が好きなその誰かは俺じゃなくていい。イイんだ。そうだろ? 夜咲耕平──
好きだと伝えたいと意気込んではいたが、もう逢えることのなかった好きな人にまた出会えたんだ。三十路ニートの俺にはそれだけで十分過ぎるだろ。なあ?
……ッ……
……ごめん。やっぱダメだ。どうしてもこの気持ちだけは伝えたい。じゃないと一生悔いが残っちまう。
例えその返事が横振りの答えだったとしても──。
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