第2話 多分、夢2
「タイムリープ? 確か意識だけが過去や未来の自分に時間跳躍するやつですか?」
そんなアニメ映画を過去に見た記憶がある。
「はい、そうです。タイムリープは睡眠時に発生します。正確には魂だけが抜けて時間を越えます。端から見れば寝て起きたら過去や未来にいる。それがタイムリープの大まかな仕組みです」
トリガーが寝ることだとすれば俺は今、条件を満たしていることになる。
「勿論ですが、タイムリープは現代の肉体から過去や未来への肉体に魂が移動します。故に本人の生きている時間にしか跳べません。あなた方で言う、肉体を持って移動するタイムマシンのように生まれる前には戻れません。人々の間で議論する、親殺しのパラドックスは起こることはあり得ないと言うことです」
こほんと可愛く咳払いをし、姿勢を正してリリスは改めて俺に問いかけた。
「耕平さん、貴方は過去に戻りますか? 勿論、断ってくださっても結構です。その場合は今の肉体に魂が戻り、本当に夢を見ていただけという感覚になるでしょ──」
「──戻りたいです!! お願いします。俺を過去に戻してください! やり残したことが、置いてきてしまったものが沢山あるんです!!」
反射的に情けない話だが半ば泣き付くように懇願してしまった。
「あれ……おかしいな……俺……何で……泣いて……」
気づくと目からポタポタと水が、涙が溢れていた。
「分かりました。神──リリスの名の元にあなたの願いを叶えましょう。私からの贈り物です。耕平さん、貴方を過去へと導きます──」
リリスは絵に書いた女神のような顔で微笑みそう言った。
「涙を拭いてください。素敵なお顔が台無しですよ」
とことこと俺の前まで歩いてきたリリスは何処からか取り出したハンカチを渡して来る。
「そのまま聞いてください。タイムリープには一つだけ条件があります」
「条件……ですか……?」
「あなたの記憶についてです。自然災害。これの記憶だけは消させて貰います。具体的には地震や台風、噴火などのことです」
「……構いません。一つ質問です。俺はアイツの……葵の死を覚えていられるんでしょうか?」
折角、過去に戻れるのならば、一つ救いたい命がある。高二の時に事故に遭い亡くなってしまった、幼馴染みにして、片思いのあの子を救いたいのだ。
「はい、でないと耕平さん的にはタイムリープする理由の大半が失われてしまうのではないですか? ……と、時間です。これよりタイムリープを開始します。では、暫くは私とはお別れです。今度は貴方が変えられた素敵な未来で遭えることを願っています」
「待ってください! 俺、まだ聞きたいことが!!」
その瞬間、視界がぐるりと回った。
まるで夢から覚めるかのように。