第28話 葵の家6
数学の問題の解き方を説明してやると、葵は真剣に話を聞いた。
話はちゃんと聞くんだよな。授業も覚えないだけで。
すると問2で葵は嬉しいそうに声をあげた。
「あ、素数の問題だ! これなら分かるよ! 1は素数じゃない。耕平に教わったもんね♪」
「へぇ、それは覚えてたか。意外とテストに出るから忘れるなよ。まあ簡単な最初の方の問題だろうけど」
「うん! 忘れないよ!」
国語の宿題は漢字の書き取りなので出番は殆ど無い。強いて言えばテストに出そうな漢字をピックアップした程度だ。シャーペンから鉛筆に持ち変えた葵はカリカリと音を立ててペンを走らせる。
ちなみに国語の担当教師が国語は鉛筆で書け、シャーペンは使うな。という方針の教師なので少し面倒ながら宿題の漢字の書き取りも鉛筆で行っている。
『納める』『収める』『修める』と、どれも同じ読みなのだが、意味の違いを教えながら説明すると、葵はうんうんと頷きながら、書き取りしていく。「ちなみに税金はどれだ?」と聞くと、えーっと、と少し悩んだ後に「これ」と言いながら正解の『納める』を指差した。「へぇ、やれば出来るじゃねぇかよ」と言うと「えへへ、でしょ♪」と得意気に笑った。
あー、ったく、ほんと可愛いな、こいつ。
葵が宿題が終わる頃はもう夕方だった。夜には親が帰ってくるらしいので気まずいし、それまでには帰りたい。葵も両親と俺が鉢合わせたら面倒だろうし。
特に葵を溺愛している、葵パパには会いたくない。
……殺されかねない。いや、マジで……
ちなみに葵パパにはタイムリープ前に一度だけだが会ったというか見たことがある。高二の夏の日、そしてその日は葵の葬式だった日だ。顔を真っ青にし、涙を流すのを必死に堪えていたが、それでもどうしても涙が止まってくれなかったらしく、葬式の間、ずっと葵パパのすすり泣く声が聞こえていた。
葵の死に一番多くの涙を流したのは間違いなく葵パパだろう。
葵を轢いたトラックの運転手の判決が懲役たったの二年ということに対し、怒り狂った葵パパが『なら、俺がお前を殺しても懲役数年で済むよなぁ? 殺してやる。娘の仇だ!』と、刑務所に殴り込みに行ったのはネットニュースにまでなっていた。
後は葵の家族と言うと葵ママとは何度か話したことがある。気のイイ、葵似のどえらい美人ママだ。
葵の弟の佳祐とも面識がある。5つ下の筈だから、この世界だと小学4年だ。小柄だが葵と違い物覚えのイイ子ってのが俺の認識だ。
「もうこんな時間か。あ、ヤバい、お父さんたち帰ってくる」
「じゃあそろそろ帰るかな。宿題も終わったし」
荷物を纏めて立ち上がる俺に葵は恐る恐る問う。
「うん、また来てくれる?」
「逆にまた来ていいのか?」
「勿論、いつでも来てよ。お父さんが居ない日なら」
やっぱ葵パパは不味いらしい。
「あー、うん。是非その日は遠慮する」
「お母さんは耕平のこと昔から知ってるからいいけど、お父さんはその……耕平に殺意を向けかねないかも……って、何いってるんだろね。別にやましいことも、ましてや付き合ってすらいませんのに……」
玄関まで送ってくれた葵は、
「途中まで送るよ」
と、言ってきた。
「子供じゃあるまいしいいよ別に」
「私が送りたいの。まあ時間的に少しだけだけどね」
俺の遠慮もままならず靴を履き外まで出てくる。
夕暮れ、桜が仄かに舞う中、帰り道の橋の途中で。
「じゃ、私はここまで」
「ああ、ありがとな」
手を軽く振り再び歩き出そうとした、時だ。ヒシッと服の袖を軽く引っ張られた。
「耕平、今日はありがとう。凄く楽しかったよ♪」
「俺の台詞だ。ありがとな。それじゃ、またな」
「うん、また学校で!」
今度こそ、俺は帰路に就く。
あーあ、葵ともう少し居たかったな。
いや、贅沢過ぎか。
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