第26話 葵の家4
その後も卒業アルバムは思いの外、盛り上がった。
実は俺は小学校の卒業アルバムはタイムリープ前の三十路になるまで大人になってからも、何度も、何度も、何度も見てる。それこそ、この学年、いやこの日本で小学校の卒業アルバムを一番見てる自信がある。
ちゃんと学校に通ったのは小学校だけだったからな。輝かしくて、眩しくて、尊い、いつの間にか無くしてしまった──大切な、大切な、大切な宝物が、この時期にはたくさん詰まっていたんだと思う。
それを懐かしんで泣きながら、この卒業アルバムを何度見たか分からない。古き良き時代と言う奴だ。
逆に中学の卒業アルバムは全然見てない。後悔ばかりだからだ。高校は中退してるからそもそも卒業アルバムを持ってすらいない。
でも、俺は今この時代にタイムリープして来た。捨ててしまった青春の時間を取り戻しに。
そして葵の死を、トラックから救う為に──
「あ、遠足の時の写真だ。紅葉が綺麗だったよね♪」
ああ、守りたいな。この笑顔。
「だな、日本の四季は世界に誇れる」
「だよね! 春は桜、夏は花火、秋は紅葉で冬は雪かな。……それに学校行事だって楽しいのいっぱいあるんだよ? お父さんが言ってた。学生生活は自分次第で一生の宝になるんだって──ねぇ、耕平、これからは本当にちゃんと毎日学校に来てくれるんだよね?」
気づくと葵は俺の顔を覗き込んでくる。
「ああ、言ったろ? 心境の変化があったって。ちゃんと通うよ。毎日な、風邪引いたら休むけど」
「うん、そしたらプリント持ってお見舞い行くね。後、修学旅行もちゃんと来てよ? その……折角同じ班なんだから」
修学旅行!? 何て甘美な響きだ。
ザ・学生感が半端ない。確かタイムリープ前の俺は中学の修学旅行は休んだんだよな。
葵からお土産の八つ橋を貰ったのを覚えてる。
「あー、葵、その……修学旅行っていつだっけ?」
「え、嘘!? 覚えてないの?? 耕平、可笑しいよ! 中学生が修学旅行の日にち忘れるなんて……」
いや、大人になると修学旅行がいつあったとか、本当に忘れるからな? つーか、そもそも行ってないけど、修学旅行。タイムリープ前。
そういや、修学旅行は行かないと返金になるので、その返金された金で母さんが焼肉に連れてってくれたんだっけ。ちょっと寂しそうな顔で。
母さん、行って欲しかったんだろうな。修学旅行。
「ちゃんと覚えるから、教えてくれ」
「もー、頭イイのにそういう大事なことはすぐに忘れるんだからー。六月の頭だよ。7日~9日の二泊三日。……これじゃ同じ班で一緒に回れると思って喜んでた私がバカみたいじゃん……」
ムスッとした葵は気を落ち着かせるように麦茶をくぴっと一口、可愛らしく飲んだ。




