第23話 葵の家
映画館を出て、帰路に着くと葵が少し照れながらこう言った。
「耕平、この後さ、う、家来ない?」
「え? 何で?」
「そそその、そ、そう! 宿題とか! 宿題とか見て貰いたいなぁとか思ってまして……?」
「何で疑問系なんだよ。別にいいけど」
「ほんと! よかった。断られたらどうしようかと思ってた……じゃあ、行こ!」
また腕を掴まれ、俺たちは駆け足で走り出す。
「別に走らなくていいだろ?」
「そっか、そうだね。歩いていこうか」
と、自分が俺の腕を掴んでるのに気づき葵は顔を真っ赤にした後「し、失礼しました……あはは……」と、目をぐるぐると回してテンパっている。
帰り道、というか、葵の家に向かう途中、話は映画の話題になる。
「やっぱり動く恐竜の骨が私は好きだな。耕平は?」
「あの恐竜の骨もいいが、俺は蝋人形の大統領推しだ、イイキャラしてやがる。喋るモアイ像も中々だ」
「ふふ、えーと確か26代目だっけ? 大統領って」
「へぇ、よく覚えてたな。勉強もそれぐらい覚えられればいいのにな?」
「映画ならイイけど勉強ってなると別腹なんだよー」
勉強はやはり苦手なのか、う~、と苦い顔をする。
そんな会話をしながら葵の家に向かう。
──葵の家は綺麗な新しい一軒家だ。
まだ家を築十年ちょいぐらいでは無いだろうか?
「さ、上がって、お茶ぐらいはあるよ」
「お邪魔します。てか、家の人は?」
「今日は皆、お爺ちゃんの家に行ってていないんだ」
うおっと!? 二人きりかよ!?
少し緊張するな。誰だって好きな子の家に二人きり何てシチュエーションは緊張ぐらいするだろう。
「二階の突き当たり左の部屋が私の部屋だからそこで待ってて。私、麦茶持ってくるから」
「え、ああ、うん、分かった」
てか、女子の部屋なんて初だぞ!?
しかも好きな子の! どうしろってんだ……
つーか、葵は今日は暇だと言っていたが、お爺さん家には行くつもりは無かったのか?
まさか俺との映画の為にわざわざ時間を作ってくれたのか? いや、確か宿題をやるつもりだとか言ってたし、お爺さんの家に行く時間がないほど宿題が切羽詰まって……いや、なら映画にも行かないはずだ。
うーん、考えるほど分からん。元引きニートにとって女子の心理や、ましてや恋愛は未知の領域なのだ。
『私が何で怒ってるか分かる?』と聞かれたら、取り敢えず『生まれてきてすいませんでした』と土下座で平謝りするだろう。
タイムリープ前の30年間、年齢=彼女無しの俺はそこら辺の中学生よりも恋愛に疎い自信がある。
いや、そんな自信要らないんだけど!!
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