第14話 帰宅
家に帰ると、夜勤明けで、朝俺を送り出した後そのまま昼間は寝てたであろう母さんと遭遇した。
「ただいま」
そう言うと母さんは嬉しそうに、
「おかえり」
と、そう言ってきた。
タイムリープ前は生粋の引きニートだった俺は『ただいま』『おかえり』の会話すらも懐かしく感じる。
「そうだわ、耕平、これ」
「何だよ……って、映画のチケット?」
母さんから渡されたのは明日から始まる映画のペアチケットだ。
「職場の人に貰ったのよ。葵ちゃんとでも行って来なさい。一昨日も迎えに来てくれたのよ?」
……ああ、ダメだ。分かってしまう。
これは母さんの優しい嘘だ。
俺の知る限り母さんの職場の同僚何かに映画のペアチケットをくれるような奴はいない。
それに母さんはこの時間でもう化粧をしている。母さんは夜勤に行く直前に化粧をするので、この時間に化粧をしてることは普通ならあり得ない。ならば何故この時間に化粧をしているか?
答えは簡単。何処かに出掛けていたんだ。例えば、映画のチケットを売っている近所の映画館とかな。
だがそれを言うほど俺は空気の読めない男ではない。ありがたく貰って置こう。
「分かった、ありがとう。葵にも聞いてみるよ」
そい言い俺は自室に戻る。朝は気づかなかったが、パソコンが無い。変わりに古い携帯型ゲーム機があった。って、うお! モンスターハントーの2ndGがあるじゃねぇか。懐かしっ、やり込んだよなこれ。
あまりの懐かしさにゲームを起動してしまい、約二時間ほど時間を費やしてしまった。
すると、コンコンと部屋の扉が叩かれ、
「耕平、ごはんよ。降りてきなさい」
夕飯に呼ばれる。
「直ぐ行く」
と、だけ返事をし、いそいそと下に降りて飯を済ますと、母さんは夜勤工場の仕事に出掛けた。
そういえば、1日3食しっかり食べたの何ていつ振りだろうな。
ニートになってからは基本1日1食だったし。
部屋に戻るとモンスターハントーの続きをやろうかとも考えたが止めた。するとそのタイミングで俺のガラケーが鳴る。メールだ。着信音は国民的男性アイドルグループの一人が主役を演じた月9の刑事ドラマのテーマソングだ。この頃は意外と俺もミーハーなのである。
懐かしいなー。ガラケーの着信音設定に大好きだったな。電話の着信音とメールの着信音で二種類の他に特定の人物からの着信音を分けて区別することもできる。俺は特定の人物の区別はしてないけど。
新着メールを確認すると、差出人は──
──月島葵。葵からのメールだ。
メールを開くと、内容は──
『こんばんは。今日は学校で沢山話せて嬉しかったです♪』
と、書いてある。
どう返信すりゃいいんだ? これ。
にしても、好きな子からのメールとは、元引きニートの中身三十路には難易度高いぞ。返信にも色々と困るし。長文のがいいのか、短文のがいいのか、絵文字は? 顔文字は? と、考えてしまう。
これが和人からのメールなら『おう』だけで一秒で返信して終わるんだが、もう意識してしまってる葵に対しては些か気が引ける。嫌われないだろうか? 気持ち悪がられないだろうか? と。
って、中学生か!? 初恋か!?
あ、今は中学生だったわ。
しかもこんなちゃんとした恋心は初だ。
あー、もう、楽しいじゃねぇか。中学生ッ──!!
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