4
「嫌がっているだろ!その女の人から手を離せ!」
俺は男に向かって叫んだ。
司書の女性は怯えているようで座りこみ目を閉じて震えている。3人の中で一際でかい男が詰め寄ってくる。2m以上はある身長に丸太のような筋骨隆々の大男だ。
「あぁあ?何調子に乗ってんだぁ?ぶっ潰してやるよぉ!」
大男は急に殴りかかってきたので後方に飛び退いた。さらに2歩引き大男たちと10m程の間をとって向かい合う。
「ちぃぃ!ちょこまかと動きやがってぇ!俺様のコマンドで潰す!」
そう叫ぶと大男はポケットからパチンコ玉程度の鉄球を1つ取り出した。さらに大男は鉄球を俺に向かって投げてきた。
(コマンド...鉄球?意味が分からない...どうなるんだ?)
俺は呆気に取られ動くことができずにいた。
「炸裂しろ!」
大男が叫んだ瞬間、鉄球は俺の目の前で急に破裂し破片になった。鋭利に破裂した鉄球の破片が飛び散る。咄嗟に腕で庇ったが腕の表面に鉄球の破片が刺さり流血してしまう。
(鉄球が...割れた!くそっ...痛い!)
「もっといくぞぉ!ゴラァ!」
大男はさらにポケットから5つの鉄球を取り出し俺に向かって投げてくる。先ほどと同じように大男の掛け声一つで鉄球が破裂する。
俺は顔を腕で庇いながらさらに後方に飛び退くが破片が腕や足に突き刺さり流血する。
(この攻撃はやばい...無差別すぎて容易には避けられないし不用意に動けば周りを巻き込んでしまう)
俺は振り返り人がいない方を探して走り出す。
「逃すかよぉ!」
大男は距離を詰めようと追ってくる。
_____________________
俺は本棚の影に身を隠し様子をうかがいながら大男の使ったコマンドについて考えを巡らせる。
文献によるとコマンドとは物体に"命令"をする力だと記載されていた。大男はパチンコ玉程度の鉄球に炸裂しろと叫んでいた。その後、鉄球は破片になり身体に傷をつける程度の勢いで飛び散った。2回目は5つの鉄球を同時に投げて同時に破片にしていた。
ここで3つの疑問が浮かぶ。それを今から検証していくことで大男のコマンド攻略の可能性を感じていた。
「見つけたぜクソ野郎!」
大男は啖呵を切って鉄球を投げてくる。投げた鉄球は破裂し破片になり周囲の本や本棚の木に突き刺さる。俺は背を向けて逃げることでそれを回避する。走りながら大男を挑発する。
「お前の攻撃は見切ったぜ!この攻撃だけならもう俺に当たることはない!」
「んだとクソ野郎がぁ!」
大男は頭に血が上りやすいタイプなのか行動を誘導しやすい。俺は机や椅子の並ぶやや広いスペースに移動した。
(ここなら、俺の感じた疑問の検証ができる)
「オラァ!炸裂しろ!」
鉄球は破裂し破片が飛び散る。
(やっぱりな...検証成功!)
俺が感じた疑問の1つ目、大男は「炸裂しろ」という命令以外はできないのかどうかということだ。
確かに大男のコマンドは殺傷能力も高く攻撃的だが、飛ばしているのがパチンコ玉程度の鉄球である以上、破片の大きさも大したことない。
さらに今いるような広いスペースであれば鉄球を大きくなるように命じたり速くなるように命じるべきだ。ただ、大男は一貫して鉄球を炸裂させるだけだった。つまり大男は現状1つの命令しかできない可能性が高いということになる。