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「助けてくれてありがとう...なんでこの言葉が出ないんだろう...」
テトラは部屋のベッドに仰向けになりそっと呟く。
「もっと...自分の気持ちに正直になれたら...人を...頼ることができたら...」
そう呟いた後、テトラは急に起き上がり自身の言葉を振り払うかのように頭をぶんぶんと横に振った。
「もう、行かないと」
そう呟くと、テトラは部屋を出た。
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俺は俺は部屋に入ると机の上に置いてあったメモとペンをポケットにしまい部屋を出た。
宿屋のロビーに向かうとテトラの姿はなかったため、椅子に座って待つことにした。5分ほど待つとテトラがやってきたので合流した。この5分程度の間で4組の冒険者が宿屋を使わせて欲しいとやってきたが、満室で断られていた。どうやら俺たちはかなりいいタイミングで入室することができたらしい。
「これからどうするんだ?」
「そうね、私は武器屋に行こうと思っているけれど...あなたは?」
「俺は...少し情報収集をしようと思っている」
「そう...じゃあ一旦別行動をしましょう」
宿屋のエントランスでこれからの行動について共有し俺とテトラは解散することにした。
テトラと別れた後、俺は宿屋のボーイにこの街の地図をもらい、宿屋から一番近い図書館に向かった。
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図書館で文献を見ていくうちにこの世界のことが分かってきた。
この世界には35人の統治者がおりそれぞれが5つの大陸に国をつくり統治している。
ここクランバルマ大陸には比較的最近成立した国が多いらしい。国の名称は大陸のイニシャルと最上位統治者より与えられた数字で表されている。【C. 626】は35番目の統治者が国を治めている設立40年の国らしい。
コマンドという力についても少なかったが文献が存在した。コマンドとは生まれながらに身についている力のことで、椅子や机、ペンなどの形ある物質に"命令"する力だと記載されている。つまり俺には使えないのではなく、何に影響を与えるのかが分かっていないということらしかった。
(そういえば、テトラのコマンドは何に影響するんだろう?)
そんなことを考えていると何やら遠くで騒ぎが起きていた。
「おい、司書さんよぉ!何も悪いようにはしねぇからよぉ!」
どうやらガラの悪い屈強な男3人が司書の女性にからんでいるようだ。周りの人たちはやや距離を置いて関わらないようにしている。
「や、やめてくださいっ!」
司書は掴まれた手を振り解く。
「おいおい、俺が悪いみたいじゃぁねぇかよぉ!あぁあ?」
「そうだぜ!兄貴が声かけてんのにやめてはねぇだろぉがぁあ!」
手を振り解かれた男は逆上して司書に詰め寄る。周りの子分のような男たちも啖呵を切りながら詰め寄る。
男は司書を図書館の外に連れ出そうと司書の腕を掴む。
(こういった輩はどの世界に行ってもいるんだな)
俺は立ち上がり男に近寄る。
「おい!その手を離せ!」
「あぁああ?あんだぁ?女の子と楽しく会話しているだけだろぉがよぉ!」
案の定、男たちは俺の方に視線を向けてきた。