表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/40

8.取巻き令嬢と取巻きイケメンの再会のお茶会


 本当にあの頃のアルベルト様の可愛らしさは、桁違いだったなぁと思い出す。私にとっては大事なアルベルト様との昔話だが、王太子カップルとアルベルト様にも聞かせるようなら、こんな感じだろうか、と顔を少し赤らめながら話しだす。


 「……幼い頃、男の子のようにお転婆だった私は、弟が生まれるまで熱心な跡取り教育を受けさせられていたんです。その間、本当に色々な商談に連れて行ってもらっていました。そんな折、サフィール公爵家との商談の席にもお邪魔して、アルベルト様と出会いました。私も最初は大人しくしていたのですが、サフィール公爵家の広いお庭に我慢できなくなってしまって……。優しいアルベルト様をけしかけて、お庭での木登りや釣りに一緒に付き合って頂いていたのです……。」


 ……我ながら初恋という話を端折っているにも拘らず、とんでもなく恥ずかしい。話しているうちに耳の先まで熱くなってしまう。いくら初恋の男の子に女の子として相手にして貰えないからって、男の子ぶるとか本当にありえない……。あの頃の私の行動力が恨めしい。王太子様と特にジュリア様にとっては、信じられないくらいはしたない行いのはずだが、2人は驚きつつも楽しそうに相槌をうってくださる。却って優しい反応が居た堪れなくて、小さくなってしまう。


「けしかけたなんて、とんでもない。私も遊びたい盛りでしたから。こちらが付き合っていただいたというのが正しいです。それに、僕の木登りの師匠はトラス嬢なんですよ?」


 なんて、アルベルト様が話を引き取りつつ、私を揶揄ってクスっと笑う。……ちょっと悪い笑い方もお顔が綺麗で相変わらず素敵だなぁ、と魂を抜かれていると、その言葉に王太子様が反応する。


「おや!それでは、トラス嬢は私の親師匠だったのだな!」


と、青色の瞳が楽しげに揺れる。「まぁ、それでは殿下の得意な木登りは、サフィール様直伝なのですか?」とジュリア様もくすくすと笑われる。


え?王太子殿下、木登り得意なの??王太子なのに??と、混乱していると王太子様が


「そうなんだ。アルベルトとは、親戚で一番歳が近くてね。よく一緒に遊んだり、家庭教師の授業を受けさせられたりしていたんだが、この通り真面目な男だろう?一緒に遊ぶ時も、とにかく静かなつまらん奴でな。だけど、ある日突然、木登りをしようって庭に連れだされた時は驚いたよ。結局、アルベルトに手取り足取り仕込まれて、私も一通りの外遊びはマスターしたんだ。」


なんて笑われる金髪碧眼の王子様はとっても絵になるのに、おっしゃている内容が全然王子様らしくない。ていうか、アルベルト様澄ました顔してますけど王太子様に何を教えてるんですか……。


「つまらない奴とは失礼だな。そもそもフランツ様が授業をしょっちゅう抜け出そうとするから、私が一緒に授業を受けることになったんですからね?分かってますか?」と殿下を叱りはじめるアルベルト様に王太子様が慌てる。


「悪い悪い。でも今はサボったりしていないぞ?」とチラチラとジュリア様を気にして、身の潔白をアピールする。その様子にやはり、ジュリア様がクスクスと笑って「存じあげておりますわ。殿下は何事にも頑張り屋さんでいらっしゃるので、いつも尊敬しておりますもの。」と答える。


 頑張り屋さんという可愛らしい言葉のチョイスや、尊敬しているだけでなく、言外に"いつも見ています"というジュリア様からのお言葉に、王太子殿下のお顔が真っ赤になってしまう。そうでしょう? 私のお友だち、かわいいでしょう? と思いつつ、口をはくはくさせている王太子様に同情する。天然の気のあるジュリア様はそんな殿下には気づかず、私を見て何故か泣きそうなお顔をされている。


「私がリリー様とお会いしたのも、ちょうど同じ歳ごろでしたけれど、リリー様が跡取りとして育てられていたお話は初めて伺いましたわ。……リリー様のお気持ちも知らずに、私ったら無遠慮なことはしていなかったかしら……?」


 この方はなんてお優しいのかしら。幼い頃の私が夢敗れて落ち込んでいる時に、力になれなかったことを気にしていらっしゃるのだ。


「ありがとうございます。でも、ご心配におよびませんよ? 父は跡取り教育だなんて息巻いていましたけれど、私自身は、遊びのつもりで父について歩いていただけでしたから。それに、弟が産まれたおかげで父が私の学院入学が迫っていることに気づいて。私の"令嬢教育"に全然手をつけていなかったことに慌てだしたんです。……やっぱり、野山を駆けまわる"伯爵令嬢"なんていませんもの。それで、侯爵様にお願いして令嬢のお手本であるジュリア様とお勉強させていただく機会をいただけて。今やこうしてお茶をご一緒させていただけているのですから幸せ者です。」


 まあ!リリー様ったら、とジュリア様と友情を深めている脇で、アルベルト様が王太子様にお茶を勧めて強制的にクールダウンさせている。横目でいつ、王太子様に話を返そうか伺っているとパチリとグレーの瞳とかちあう。私の意図に気づかれ、ふふっと笑いかけてくださった笑顔はあの頃と同じ優しいもので。こんなに優しい顔をする方に腹黒だなんて口さがないことをいう不届者がいるなんて信じられなかった。



◇◇◇


……なーんて、3年前に再開した時は思っていたのにな。


 再設定されたお茶会のため入った第2温室の薔薇の香りに、サフィール公爵家のお庭を思い出していると、王太子殿下をせつせつと叱るアルベルト様の声が聞こえてきて苦笑いが漏れる。その声に気づいたアルベルト様と目が合うと、はぁと溜息を吐かれて目を逸らされる。


 ……幼い頃は、確かに仲が良かったはずなのに。再開した3年前のお茶会でも優しかったのに‼︎ 今や嘘くさい笑顔を向けられるか、面倒くさそうに溜息をつかれる関係になってしまったのはいつからでしたでしょうか……?




閲覧ありがとうございます!

ブックマークや評価、とても励みになっています!ありがとうございます!


続きはまた明日投稿予定です。

アルベルトのライバルキャラも登場予定……?

明日も是非、見に来てください!


不慣れで更新時間が一定にできず、お恥ずかしいです……。ブックマークしていただけると、通知がいくようなので是非お願いします!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ