39.王太子様とその取巻きの秘密の話(アルベルト視点)
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「今日の帰りは城に寄れ。お前に話がある」
落ち着かないランチタイムを終えて教室にむかっているとフランツの方から僕に話があると言ってきた。しかも珍しいことに、心なしか高圧的だ。
「わかった。僕もお前に聞きたいことがある」
なんでお前が?と言いたげな顔でこちらをみたフランツだったが、互いにそれ以上の話はせず、教室への道を急いだ。
そして迎えた放課後。普段フランツが乗り込む馬車に同乗したのだが、向こうが誘ってきたくせに黙り込んでいる。しかも眉間に皺をよせたまま、何かを考えこんでいる様子で、こちらに一瞥もくれない。珍しい態度に驚くが、こういう時のフランツは放っておくのが一番だ。下手に考える時間を邪魔して、機嫌を損ねたくない。
それに、僕だってリリーの発言のせいで頭の中は爆発寸前だった。一体彼女は誰に想いを寄せているのだろうか。そんな話やそぶりは、今まで一度もなかった。しかも、あの部屋にいたメンバーはレオニダスを含めて全員が、そのことを知っている様子だった。当然、今目の前に座るフランツも。それならどうして、この男は今まで僕にそのことを教えてくれなかったのだろうか。もちろん、この男が勝手に秘めた乙女心を暴くような奴でないことは分かっている。同時にその事実を知りながら、無責任に僕の恋の応援をしてくる奴でないことも知っている。
……逆か?リリーの恋が叶いそうにないことを知っていたから、なのか?スクラップブックの共同編纂なんて、二人きりになれる機会を作って応援してくれていたのは…。
男二人が黙りこみ、蹄鉄が石畳を駆ける音がリズミカルに響くだけの車内。散り散りになる思考を遮るものはない。結局、リリーが想いを寄せる奴っていったい誰なんだ…?と、今度こそ止まらない思考に僕は沈んでいった。
◇◇◇
「お前に確認したいことがあって今日はここに呼んだんだ。いいか、まず俺の質問に答えろ」
到着したフランツの私室。よく見慣れた品の良い部屋で、一人掛けソファに座らされる。さらに、ティーテーブルの向かいに座った従弟は、やたらと背筋を伸ばして僕に詰め寄ってくる。その気合の入れようは何なんだ。しかもこの男、お茶の用意が終わった途端に、侍女だけでなく衛兵まで、部屋から追い出してしまったのだ。放課後まで待ったということは急ぎではないようだが、どうやら深刻な話らしいと感じ取り、自然とこちらも背筋が伸びる。
「なんだ。今更改まって」
聞く姿勢を整えているというのに、あー…、その、なんだ…等とやたらと言い出すのを躊躇う様子に、だんだんと不安でいっぱいになってくる。いいから早くしろと急かすと、ええいままよと勢いをつけて話し出す。
「…その、あれだ。お前の気持ちはトラス嬢からタナ様に移ったのか?」
「はあ?何言ってるんだお前。僕の気持ちなんてお前が一番よく知ってるだろ?」
どんな固くるしい話題かと身構えていたのに、想定外であり得ない話に、反射で否定してしまう。
「ああ知ってるよ。知ってるけど……。だってタナ様との茶会以来、やたらと二人で楽しそうにヒソヒソ話してるだろ?しかも最近は、昼休みになった途端、タナ様とイチャイチャしだすから俺はてっきり…」
「イチャイチャだと?そんな下品な表現を、タナ様に使うなんて無礼すぎる。取り消せ」
「それだよ!それ!お前がそんな風に、女の子をかばうのなんて見たことないなんだよ!俺は!たしかに今のは俺が悪かった。今の言葉は取り消す。でも、妙齢の女性なんて、普段のお前が一番警戒して近寄らない相手だろ?それなのに今までの誰よりも、自分から積極的に近づいてるから……。客観的にみて、人としても女性としても魅力的なタナ様に、お前が夢中になっているようにしか見えないんだよ!」
どうやら本気で勘違いしているらしいフランツの口ぶりに、開いた口が塞がらない。何言ってんだこいつ、とつい口が悪くなってしまいそうになるのをぐっと堪える。その為にできた変な間を、またもや誤解したフランツがさらに畳みかけてくる。
「いや、さ?俺はお前のことを親友だと思ってるし、お前の気持ちがタナ様に移ったていうなら応援するつもりだよ。例えジュリアに詰られたって、お前の気持ちを無視することはできない」
急に熱い男の一面をみせ、なにか固い決心を漲らせた目で僕を見ないでほしい。
「応援しなくて結構だ。お前のそれは勘違いで、僕は変わらずリリーのことを想っている。…たとえ今、リリーに想っている人がいたとしても、その気持ちに変わりはない。……というか、そこでどうしてジュリア様がでてくるんだ?」
「お…俺はっ……。俺だって”例え”って言っただろ?揚げ足をとるな!お前こそ、トラス嬢に想い人がいるってなんだ?もしかして、今日の昼休みの話が聞こえていたのか?」
「そうだよ。さっきの話がお前の本題だったなら、僕の本題はこっちだ。”いい加減夢見てないで、婚約者を探す”ってリリーが言ってるところしか聞こえなかったから、要領を得ないんだよ。彼女が誰を想っているのかまでは聞かないから、話の流れだけでも教えろ」
「それが聞こえていて今この状況なのに、どうして相手が分からないのかが、俺には分からない……。人のことを言えた義理じゃないが、お前も大概恋愛音痴だな……」
「うるさい。でも、この前タナ様にも言われた。それで、リリーへのアプローチの相談に乗ってくださっているんだ」
「なんだその面白い話は。聞かせろ」
にやにやと笑うフランツは、いつの間にか普段の悪ノリを取り戻していた。このままこいつの機嫌を損ね、肝心なリリーの話を聞けないと困る。仕方なく、茶会から今日までのタナ様とのやり取りをフランツに説明する。聞いている途中で、涙を流してげらげらと笑い出したから、一発殴ってしまったのは仕方のないことだと思う。それでも笑い続けるのだから、王太子としてまったくもって品性がない。愛しのイセール嬢に言いつけてやるぞと脅せば、やっと笑い止んだ。
今度は僕の番だ。目尻に残った涙をぬぐうフランツに、リリーの話の続きを教えろとせがむと、詳しくは話せないの一点張り。結局それかと、苛立ちのまま部屋を出ようとする僕の背に、奴はヒントだけやるよと声をかける。
「話の内容はほぼほぼ、お前の想像通りだ。でも、どうしてそんな話になったのか、俺は話せない。それと、タナ様との作戦会議だが、お前のために控えることをお勧めする。できれば次は、俺か、もしくはジュリアも一緒に誘ってくれ」
ウィンクまで決めてきた従弟に鳥肌がたった僕は、帰るとだけ伝えて扉を思い切り閉めたのだった。ヒントにもならないヒントのせいで、更にこんがらがった頭を抱える。だめだ。とりあえず明日、もう一度タナ様に相談しよう。ショート寸前の僕の頭で冷静な判断は難しい。岡目八目というし、ここは冷静な第三者のお力を借りるしかない……。
自然と丸まっていってしまいそうになる背中へ、意識を集中させる。まるで普段通りを装いながら、城の廊下を歩き切った僕を、誰でもいいから褒めてほしかった。
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