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37.取巻き令嬢はうちのめされる


すれ違ってます。





「アルベルト様~!おすすめのランチメニューはどれかしら?一緒に選んでくださる?」



 タナ様が学院にいらしてから二週間ほどたった昼休み。カフェテリアで一目散にアルベルト様のもとへ駆け込むタナ様の姿はすっかり見慣れた光景になっていた。しかも……。


「私でよければ喜んで。……おや?今日のヘアアレンジは初めて見ました。とてもお似合いでいっらしゃいますね。バロット公国で流行っていらっしゃるものですか?」


 にっこりと邪気のない笑顔で楽しそうに笑って答えたアルベルト様は、そのまま自然な流れでタナ様の手をとって注文窓口までエスコートしていく。この一連の流れが最早当たり前になっているのだけど、毎回つきりつきりと胸が痛んで慣れることはない。アルベルト様が普段あんな風に自分から女性の変化を指摘して褒めるところなんて私は今まで見たことも聞いたこともなかった。もう見慣れてきた光景のはずなのに、今も注文列に並びながら仲睦まじく耳元へ何かを囁きあう二人の姿に目が勝手に吸い寄せられて、じくじくと胸が痛む。



「……リリー?大丈夫?私たちはこちらに座りましょう?」



 心配そうに私を覗き込んでくれたジュリア様が私の手をひき、スカーレット様がカフェテリアの奥にある特別給仕室の扉を開けて私を席に誘ってくれる。そしてこれまた心配そうな顔でこちらを振り向いてくださっているマーガレット様の隣に座らせてくれた。あの日のお茶会と同じメンバー、同じ席順の円卓にて毎日ランチタイムを過ごしているのだが、タナ様とアルベルト様が抜けるこの時間は、あきらかに私のせいで毎回お通夜みたいになりつつある。


 三年も続いた親睦会のお陰ですっかり私のアルベルト様への気持ちは皆さんにバレていたようで、特に女性陣が極秘お茶会以来ずっと私のことを慰めてくれているのだ。逆に、残された男性陣二人である王太子様とマーガレット様の双子の兄・トリトン様は、自分たちに話を聞かれるのは気まずかろうと毎回女性陣の話題が聞こえない程、別の話題に盛り上がっている体を毎回取り繕ってくれている。その後ろでは、遠征から帰ってきたレオ兄様まで心配そうにちらりとこちらを伺っている。本当に皆様にはお気遣いいただいて申し訳ない……。


 せっかくジュリア様からタナ様と親しくなる機会をいただいたというのに、自分の気持ちに振り回されて皆様に余計な迷惑をかけている現状がただただ情けない。そのうえ、タナ様ご自身は初対面の時の印象のまま、裏表のない快活で素敵な女性だった。クラスでもタナ様の傍にいるからこそ、彼女の良いところをたくさん知っているし、それに比べて自分勝手な気持ちでいっぱいいっぱいになっている自分が尚更恥ずかしい。いい加減、自分の気持ちに区切りをつけてやるべきことに集中しないと。私を信頼してくれたジュリア様や王太子様の気持ちを無得にしたくない。



「いつまでも辛気臭い顔をしてしまって本当に申し訳ありません。皆さまに毎回励ましていただいてしまって……。でも、いい機会かなって思えてきました。良い引導を渡していただけたかなって……。それにお相手の方は本当に素敵な方ですし!私もいい加減夢見てないで、そろそろ本腰いれて婚約者を探せって女神様からの図らないなのかも」



 自分でも力のないへらへらとした出来損ないの笑顔だと分かっているが、無理にでも笑わないと胸の痛みに押しつぶされそうだ。いつか”お姫様”が現れたらそっと身を引くんだって心に決めていたはずなのに、いざその時がきたらそんな覚悟はぺしゃんこに押しつぶされた。どうして私じゃダメなんだろう、私の方がたくさん彼のことを知っていて、絶対もっとずっと好きなのに…!と、寄り添う二人をみると、自分でも驚くほどの激情が私の中を支配した。そうやって、ずっと大事に育ててきたはずの気持ちが、まるで知らない怪物になって自分を飲み込もうとしてくることも悲しくて、せめてこのまま無理やり蓋をして綺麗なまま殺してしまいたかった。


「リリー……‼」


 どうやら痛々しかったのだろう。ジュリア様が自席を立ち上がって私を抱きしめてくれる。その横で、私の両手をそれぞれスカーレット様とマーガレット様がぎゅっと握りしめてくれた。人のぬくもりと皆さんの気持ちが嬉しくて、涙が自然とこぼれそうになるがぐっと我慢する。だってそろそろ、お二人が帰ってくる頃合いだ。



ガチャ



「まあ!皆様どうされましたの!?リリーお怪我でもされたの?」



 タナ様の分のトレーをもったアルベルト様とタナ様が現れ、タナ様が心配そうに私にかけよってきてくれる。本当に心からの心配とわかるそれに、自分の醜さが照らされるようで恥ずかしい。



「俺との口喧嘩に負けて悔しいって泣きそうになってただけですよ。そんなに嫌がると思わなくて言いすぎて悪かったな」


 まさかのレオ兄様からの優しい助け舟に我慢していた涙がポロリとこぼれる。自分を悪者にして私の気持ちを隠してくれるなんて、不器用なレオ兄さまらしい。


「いいえ、こちらこそごめんなさい。色々気遣ってくれてありがとう。皆様もお騒がせしてしまって申し訳ありません。私の気持ちはもう大丈夫ですから、心配なさらないでください。さあ!お二人も帰っていらしたことですし、早くいただきましょう!」


 不自然に思われないよう、扉の近くに立ったままのアルベルト様へ背をむけたまま、今度こそにっこりと笑って皆様を急かす。これ以上、私の気持ちのせいで皆様に迷惑をかけようものなら情けなくて立ち直れなくてなってしまいそうだったから。




だから気づかなかったのだ。

アルベルト様とタナ様が焦ったような顔で互いに顔を見合わせていただなんて。









閲覧ありがとうございます!


次はアルベルト視点になります。


お済みでない方は、是非ブックマークや評価、コメント等してくださると本当に大変嬉しいです。よろしくお願いします!!


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