36.本物のお姫様と本物の王太子様の従弟
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明朗快活なタナ様のお人柄のお陰でその後の各自己紹介もスムーズに終わり、和やかな談笑が続いていた。今はタナ様がこちらの国のファッションに興味があるという話から、ジュリア様とスカーレット様主導でここ最近の流行アイテムについて女子トークが盛り上がっていた。
「これからの季節の新定番アイテムといえば、何といっても”ストローハット”ですわ!バロット公国発祥のものですわよね?ちょうど昨年、リリーがスクラップブックにコーディネイト例を紹介してくれたお陰で爆発的ヒットをしましたのよ」
得意気に私の話をしてくれたジュリア様とそれに強くうなづくスカーレット侯爵令嬢とウィンズバー伯爵令嬢のマーガレット様。つられるようにジュリア様から私へと視線を移されたタナ様がこちらに笑いかける。
「まあ!こちらの国でストローハットを広めてくだっさのは貴女だったのですね!実は昨年、この国でストローハットの需要が高まっているという話をバロットの服飾商から聞いていたはいましたの。その節はありがとう。お陰で商人たちが嬉しそうに働いていたわ」
本当に嬉しそうに微笑んで話しかけてくださるタナ様は、本当に祖国と民を愛する心優しいお方なのだと分かる。そしてとにかく、私への過分な評価が恥ずかしい。きちんと誤解を解かなくては。
「もったいないお言葉をありがとうございます。しかしタナ様、私はただコディネート例を本に載せて紹介させていただいただけでございます。本当にストローハットの普及に貢献されたのは、ジュリア様とスカーレット様が早くからストローハットを着用して社交界で皆様に熱烈に勧めてくださったからなのです」
ね?とジュリア様とスカーレット様に視線をやると二人は照れくさそうにして互いを見つめあう。その様子にマーガレット様が、私も二人が被っていらしたものが可愛らしくて、つい買い求めてしまいましたの、とタナ様に笑いかける。
「だってストローハットがあんまり素敵だったものですから。つい二人で皆さんに勧めてしまったのですわ……」
とジュリア様がおっしゃると、タナ様が商人たちがとても喜ぶ話を聞けたわ、ジュリアもスカーレットもありがとう、と微笑んだ。
「ちなみにリリーが作ったという”スクラップブック”というのはどういった本ですの?」
一口お茶をいただいた後、不思議そうに私へと問いかけるタナ様。そりゃそうですよね。
「主に女性向けの流行のファッションアイテムやそのコーディネイト例などを季節ごとにまとめた本です」
端的な説明に留めた私に対し、ジュリア様が続く。
「他にも王都にある美味しいランチやスイーツの紹介、人気デートスポットの紹介なども載っていて今や流行の教科書なんて呼ばれていますのよ!」
「まあ!それは是非わたしも読んでみたい!季節ごとということはそろそろ新しいものが出る頃なのかしら?」
「そうですね。女性向けの準備は終わっておりますので、来月には発行できたらと思うのですが…」
「何か問題でも?」
男性用と同時刊行予定だったが、男性用についてお話してもいいものだろうか。ちらりと王太子様をみやるとぱちりと目があう。ん?と一瞬首をかしげた王太子様だが、隣のアルベルト様に肘でつつかれて、ああと話を引き取ってくださる。
「実は最近、トラス嬢とアルベルトに男性向けのスクラップブックの作成をお願いしていてね。そちらと同時刊行を考えてくれているみたいなんだよ。先月はアルベルトと休日に取材に行っていたようだけど進捗はどう?」
「ええ。鋭意作成中です。詳しくは掲載内容にかかわるのでお話できないのですが、先月の取材ではサフィール様を王都中連れ回してしまったので反省しております」
「確かに。あの日はよく歩きましたね。滅多に乗らない遊覧船までのって……。この王宮もよく見えました」
「まあ!素敵!さすが海運の国!私も是非乗ってみたいです」
好奇心旺盛なタナ様が小さく手を挙げるタナ様がなんとも可愛らしい。
「後で予定に組み入れられるか確認してお伝えいたします」
「ありがとう。私ぜひ海を間近で見てみたかったからとって嬉しい!何を着ていこうかしら?」
国土の殆どが砂漠のうえにあるバロット公国の姫にとって海は相当珍しいのだろう。ウキウキとしている姿が可愛らしいが、先日の遊覧船でのキラキラしたアルベルト様が頭をよぎって悶絶しそうになる。あ。そうだわ。初めてなら、あの眩しさをご存じないはず。
「それならタナ様もご乗船の際は是非”サングラス”をお召になってください。海の照り返しがとっても眩しいですから」
「まあ!サングラスもご存じなの?」
新しい単語にそれはなに?と困惑する一同。何かに気づいて壁に控える侍女に声をかけるアルベルト様。みんなからの視線を感じ、タナ様にご説明をお願いする。すると嬉しそうに、日よけ用の色付き眼鏡であり、バロット公国では”サングラス”と呼ばれているのだという説明をしてくださった。そして、タナ様の説明が終わると同時にアルベルト様が実物のサングラスを差し出す。
「実は先日の取材時に購入した”サングラス”がバロット公国発祥のものだったので、タナ様とのお話のきっかけになるかと思い持参しました」
実物の登場にテンションがあがる一同に反し、差し出されたアルベルト様の色付き眼鏡とアルベルト様をじっと見比べるタナ様。どうかされましたか、とアルベルト様が声をかけると、はっとして笑顔を張り付ける。
「ヨーキのところの品でしょ?よく知っている職人の手のものだから驚いちゃった。人相は悪いけどいい人だし、何より腕がピカイチ!彼の彫る柄が素敵って一番人気なのよ?……ところでサフィール様、少しお耳を貸していただいてもよろしかしら」
なにかこそこそとアルベルト様の耳元でタナ様がお話をされる。周りに聞こえないようにするため、致し方ないのだけれど、距離が近い……。あんなにかわいくて美しい方が近くにいてドキドキしない男性なんて果たしているのだろうか、といけないと思いつつちらちらとみてしまう。
急にボンっと顔が真っ赤になるアルベルト様。
普段のポーカーフェイスはどこへやら。「こっ⁉…いえっ!違います!」なんて慌てだすアルベルト様は本格的に珍しいし可愛らしいのだけど、つきりと胸が痛い。真面目なお顔で話さていたタナ様だけど、途中からにやっと笑って更に彼の耳元へ何かを囁く。それにあからさまに肩を揺らすアルベルト様。しかもアルベルト様からもタナ様に何か囁き返していて……。
なんだか仲睦まじい光景にみていられなくて、誤魔化すために慌ててカップへ口をつける。
だって、今まであんなに感情をむき出しにして女性と話す彼をみたことは一度もなかった。
しかも、お似合いの”お姫様”だなって思ってしまった自分がいた。
聡明で可憐で快活で、そのうえ身分も申し分ない本物のお姫様の登場に、ひとり動揺を隠すためサングラスで盛り上がる皆さんのもとへとふらふらと寄っていった。
◇◇◇
「サフィール様、立ち入ったことを伺って申し訳ないのだけど、トラス嬢とはご婚約者でいらっしゃるのかしら」
「こっ⁉…いえっ!違います!」
「じゃあサングラスのグラスの色を婚約者の瞳の色にする風習はご存じないということかしら?お二人が公の関係でいらっしゃるなら、皆様に是非お話したくて」
「……恋人同士の風習と取材時に聞きましたが…」
「あら、それは正確じゃないわね。永遠の愛を誓った恋人同士、つまり婚約者が婚約の証に送りあう風習なの。……ということは、恋人ではいらっしゃるのね?」
「……いえ、恋人に関する取材を行っていた関係で購入しただけで、彼女とはただの友人です」
「……そんな顔で言ったら貴方の気持ちはバレバレよ?仕方ないわね。私が立ち入ったことを聞いたのが悪いし、二人のキューピッドになってあげる」
色々な人にバレバレのアルベルト…笑
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