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34.未来の王太子妃からのご指名


ブックマークと評価、いいねをくださった方、本当にありがとうございます!!

いつもとてもとても励みになっております!


 「リリーはバロット公国にお友達はいらして?」


 放課後、ジュリア様から“この後我が家に遊びにいらして”と珍しく急なお呼ばれに預かり、二人きりのティータイムを楽しんでいると、ジュリア様から珍しい話題が飛び出す。


「……トラス家関係の商人の知り合いならいます。といっても、ほとんどがあちらで暮らす当国の人間です。弟の帽子屋でバロット公国の品を扱っているので、定期的に連絡は取れますが……」


何か気になる商品があれば伝手はありますよ?と暗に伝えれば、今にもスキップしそうなほど嬉しそうにニコニコされるジュリア様。“さすがトラス伯爵家ね!”とひとしきり褒めてくれたあと、気持ち前かがみになりながら声をひそめて再び話しだす。


「実はここだけのお話があって……。来月からバロット公国の公女・タナ様が急に我が学院に短期一か月の短期留学にいらっしゃることが決まったそうなの。そこでご年齢も近いフランツ様が学校生活のサポートをなさるのだけれど、王妃様からのお言いつけで、婚約者として私もご一緒にお手伝いさせていただくことになりましたの」


 王妃様直々のご指名があったということは、未来の王太子妃として外交に関わっても問題ないと認められたことと同義だ。さらに近年同盟を結ぶことができたばかりの国ということであれば、国同士の今後の付き合いも考えたうえで同世代の王太子様とジュリア様が適任と期待されての判断だろう。なによりも、国外の王族に王太子の婚約者として正式に紹介されるのだから、間違いなく王太子妃への階段をまた一段登られたということだ。友人としてジュリア様の努力が報われていることが晴れやかで喜ばしい。


「とても素敵なお話ですね!おめでとうございます!私自身もタナ様と同じ学び舎で学べる機会をいただけるなんて、とても嬉しいです」


ありがとうと嬉しそうに微笑んだジュリア様だが、何故か困り顔に変わってしまう。珍しく話づらそうに逡巡されている様子から、続きを待つ。


「……実はリリーにはその件で折り入ってお願いしたいことがあるの…。嫌ならもちろん断っていただいていいのよ?ただ、リリーとは一番仲良くしてもらっているから、できれば力になってもらえると私が心強いというか…」


なんていじらしいことをおっしゃってくださるのだろう。気まずさからか、いつもより少し早口になってしまっているところも相まって可愛らしい。つい詳細も聞かずにうなずきたくなるが、ぐっと堪える。こんなに念おしするということは結構な面倒事なのかもしれない。そうおっしゃると?と続きを促すと、ええいままよとばかりに勢いよく話し出すジュリア様。


「国賓といえど、私たちと同じ年の女性の方だから同性のお友達が多い方が心強いんじゃないかって王妃様が。だからフランツ様ではなく、私たちと同じクラスで学んでいただくのはどうだろうかというお話になっていますの。そこて是非、リリーには私と一緒にタナ様と“特に”親しくしてなっていただけないかしら」


「私がですか…?」


あまりのことに、はしたなくも目を見開いてしまって、やっとの思いで発した声も弱弱しい。一応、貴族令嬢とはいえ、伯爵令嬢でしかない私が国賓の歓待を任されるだなんて恐れ多い。


「あなたが良いの。リリーはいつもフランツ様とのお茶会はもちろん、クラスでもいつも私のことを助けてくれるでしょう?それに、貴方の心配りに助けれられているのは私だけじゃないわ。いつも自然と周りの人を気にかけてくれる貴女が傍にいてくれたら、タナ様もきっと安心して学院の生活に馴染めると思うの」


ジュリア様が慕ってくださる気持ちは嬉しいが、私が“特に”親しくさせていただく友人として侍るには、あまりにもタナ様の身分が高すぎる。それこそ侍女のような扱いであれば問題ない。でも、“特に”親しいというのはジュリア様と私のような距離間を望まれているということだろう。



「お気持ちは大変嬉しく受け取らせていだきますが、残念ながら私がお力になれるとは思えません。そもそも私の身分では、到底タナ様と“特に”親しくさせていただくこと自体、叶いません。それでも尚、ジュリア様が私をタナ様にご紹介された暁には、わが国がバロット公国を軽んじているとの誤解を招きかねません。ひいては、ジュリア様の未来の王妃としての資質が問われる結果となってしまいます」


あまり強い言い方はしたくなかったが、とにかく考え直してもらいたい。せっかく王宮から未来の王太子妃として認められた友人の外交デビューを、私のせいで傷物にする訳にはいかないのだから。珍しくはっきりとした物言いでの固辞に傷つけてしまっていないかとジュリア様の顔色を伺う。傷つくどころか、普段の温和な雰囲気は鳴りを潜め、困り顔でありながら強い芯を感じるまなざしで説得が続く。


「本当はプレッシャーになってしまうから承諾してもらった後から伝えるつもりだったのだけれど、今回の打診は私だけの判断で貴女にお願いした訳ではないのよ。フランツ様はもちろん、サフィール様も貴女に是非力を貸してほしいとおっしゃっていたわ。それに、リリーはトラス公国にお知り合いがいて、かの国の文化や風習に詳しいでしょう?そういった意味でも、初めて外国でお暮しになるタナ様のお力になって欲しいの」


……王太子様からの打診付きということであればもうお断りも難しい。それにジュリア様のおっしゃる通り、バロット公国の文化・風習に知見のある文官もどきとして選ばれたという体であれば伯爵令嬢がいても不自然ではない。先程の質問はバロット公国にある伝手をご存じのうえで、ここで私にうなずかさせるためにあえて確認したのだろう。さすが王宮お墨付きの未来の王妃様。これはもう、お受けするしか道がない。


「……ありがとうございます。言葉を翻すようで申し訳ありません。力不足に変わりはありませんが、私でよろしければお力になれように精一杯励みます」


「本当に?とっても心強いわ!ありがとう!王太子様とサフィール様も喜ばれるわ!タナ様が来訪されたら早速、極少人数での歓迎のお茶会を王宮で開催するの。貴女の負担を増やすようで申し訳ないのだけれど、是非招待させていただくわね」


ふふふといつも通り可愛らしい微笑みで、流れるようにタナ様にご紹介したい王都のスイーツへと話題が移っていった。相槌を打ちながら、とにかく家に帰ったらすぐに新しいドレスを発注しなければと今後の算段をたてる。タナ様と個人的に親しくなれる機会をいただけるというのはトラス伯爵家にとって間違いなくプラス。今夜は父と弟を交えて久しぶりの大規模作戦会議必須だろう。それに、今のタイミングで帰船しているバロット公国所縁の商人がいるかも至急探して少しでも知識を増やさなけば……。ジュリア様の顔に泥を塗らないよう、急ピッチで体裁を整えなければ……‼


今後のやることリストに眩暈を覚えていたその時の私は、タナ様が来訪されてからの方がより、やっかいなことになるだなんて想像することすらできてきなかったのだった。



最後まで読んでくださってありがとうございます!


お済みでない方は、よろしければ是非ブックマークや評価、コメント等してくださると大変嬉しいです。よろしくお願いします!!

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