25.取り巻きイケメンは勇気を出す
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「……週末に特別な予定はございませんが……?」
時は無事に騎士科懇親会を終えた翌週のアルベルト様との企画会議終了後。馬車まで送っていただいていた道中で、アルベルト様から「今週末はお忙しいですか?」なんて、まるでデートのお誘いのようなお伺いをたてられてしまった。
まさか。アルベルト様からデートのお誘い⁉︎ と早くも浮き足立つ心に、早まってはダメ!と格闘していたせいで、愛想のかけらもないお返事をしてしまった。
それに対し、横に並んで歩いていたアルベルト様が珍しく、いつものキラキラ似非スマイルではなくて、困った顔をしていた。しかも自信がなさそうに目線を外へ逸らしてしまっている。そんな頼りなげな姿にキュンとしながらも、罪悪感に苛まれた私は「アルベルト様は何かご予定がおありなのですか?」とデートのお誘いじゃなくても間違えていない質問を重ねておいた。それに対して、意を決した様に少し大きめに息を吐いて吸ったアルベルト様が答えてくれる。
「……もしもトラス嬢の時間を貰えるなら、二人でデート特集の下見で王都を歩いてみるのはどうかと思いまして。同行者が僕で申し訳ないですが、いかがですか」
困った顔のまま、ちょっと早口で週末のお出かけのお誘いしてくださるアルベルト様に私の脳内は大混乱だ。デート?いや、デート特集の下見だから!あくまでスクラップブックのために仕方なくだから!え!?これって完全に役得だわ。王太子殿下万歳‼︎
「……婚約者でもない年頃の男女が二人きりはまずいですよね。分かりました。マーク様ですとか、ジュリア様ですとか別の方も一緒にお誘いしましょう」
私が疑似デートのお誘いに浮かれて変な間ができてしまったばかりに、アルベルト様が代替案を出しはじめてしまう。そんな‼︎折角のデートチャンスなのに‼︎
「いえ、あの……。カップルでないと体験できないメニューを出しているお店もあったりするので、サフィール様がよろしければ是非二人で今週末にお出かけしたいです」
最もらしいことを言ってみたが、端ない令嬢だと思われてはいないだろうか。私には木登りに誘ったというとんでもない前科があるのだから、ちょっとしたことでも気をつけなければ。
「そのようなメニューもあるのですね。知りませんでした。そうと決まれば実際に行って取材しておきたい店のピックアップ等、次回の企画会議の祭に決めてしまわないといけませんね」
先程まで頼りなく儚げだった雰囲気が一転、華開くかのように柔らかな笑顔になって声を弾ませるアルベルト様。好きな人のそんな珍しい笑顔を間近で見てしまったせいで、心臓が耳の側で動いているのかのようだ。鼓動が大きく早くなっているのが分かる。しかも、その笑顔の原因が私との疑似デートができるというものだ。彼にとっては王都のデートスポットへのただの好奇心だけしかなく、深い意味はないのだろう。でもなんかこんな顔されたら、期待したくなっちゃわない⁉︎
なんとか平静を装ってじゃあ次回までに取材したい場所を選定しておきますねと約束して。やっとの思いでようやく迎えの馬車に乗り込んでアルベルト様とお別れしたのだった。
レオ兄様はアルベルト様に気をつけろ、何かあったら俺が戻るまで会うな、困ったことがあればマーク様を頼れなんて散々念をおして遠征に旅立っていったけど。まさかこんな風に困ることがやってくるとは思っていなかったに違いない。ある意味この気持ちのやり場に困ってはいるけれど、マーク様もこんなことで頼られるだなんて思っていないだろう。
先程のアルベルト様との一連のやり取りの破壊力がすごく、思考があっちへこっちへと散逸してしまってまとまらない。今まで冷たくあしらわれることばかりだったのに、急にどうしたというのだろうか。まさかスクラップブックの企画会議で共に過ごす時間が増えて、どうでも良いと思っていた私のことを少しでも気に入ってくれたとかなのだろうか……。
だめね。どう転んでも自分の都合の良い様に良い様に、考えが流れていくわ。それに。先程の本当に嬉しそうな柔らかな笑顔を思い出すとドキドキが止まらない。きゃー、うわー、と淑女にあるまじき喚き声をあげるものだから、途中で御者に大丈夫ですかと声をかけられる始末だ。
家に帰ったら早速、どんなデートコースが良いか考えなくっちゃ。それから今日のことも、自分のノートに忘れないように大切に書き込んでおこう。今日の刺激が強すぎてなかなか寝付けない夜になってしまうだろうと覚悟を決めながら、それでも何度もアルベルト様とのやり取りを思い出してニマニマしてしまうのを止められないのだった。
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