疑惑
話の区切りで分けてるので少し短いです
団長の執務室は、なんていうかシンプルだった。
華美な装飾より重厚かつ頑丈そうな素材と機能美が優先された部屋は、こういう場面でなければ身が引き締まる思いをすることだろう。
今はぶっちゃけ怖い。これから俺どうなるんだ……?
「すまない、私の不注意で君の出身が漏れた。事態は一刻を争う」
団長がツェベリ地方の詳細地図を広げながら話しかけてきた。
深刻そうな言い回しに血の気が引いてきたが、団長の顔もかなり青褪めていた。
「君の家の、正確な位置を示してほしい。転移で今から飛ぶ」
「え?」
ヤバい、どうしよう
「どうした?」
口籠る俺を、団長が訝しげに見る。
その瞳はさっきよりさらに鋭く、顔色と相まってかなりの迫力だ。
「……あの」
「何だ?」
「すみません、さっきの……嘘です。俺のいまの実家は西方の湖水地方です」
さっきまでの険しさから一転、団長はきょとんとした表情で俺を見た。きょとんとしててもカッコいいとか本当に美形である。瞳の光は衰えず、俺の真意を探ろうとしていた。
「あ、生まれた場所って意味ではツェベリで合ってるんです!でもすぐに引っ越したって聞きました」
しどろもどろになりながらも、俺は説明した。
「一つの土地に長くいると、母が体調を崩すので…何年かに一度引っ越してたんです。だから出身地を聞かれたらツェベリと答えなさいって、入軍審査の書類には王都の下宿先を書きました。それで大丈夫だからって母に…言われて……」
話しながら少し冷静になったついでに、気がついた。
自分で言っておいてアレだが、おかしくないか?
何で同じ場所に住んでると体調を崩すんだ?それにそんな状態ならなおさら子どもは足手まといだ、養成院に入れるべきだろう。どうして預けなかった?
出身もまるで今どこにいるか隠したいみたいに…
それにこの状況……
「あの、団長……俺の実家に、母に、なにかあるんですか?」
俺は生まれて初めて母に疑惑を持った。
団長はそんな俺を見つめた後、静かに息を吐き背を向けた。
「君の疑問に答えるためにも、まず確認したいことがある。君の母親の正体だ、そのためには直接会わねばならない」
振り返った団長の手には新しい地図。
今度は湖水地方の詳細地図だろう。
「教えてくれるか、今の君の家の場所を」




