それぞれの気持ち、そして思惑
「私、何してんだろ…ほんと」
私は昨日自分がしてしまったことを思い出すと胸が痛くて何もかもが嫌になる。
「竜騎、許してくれないよね多分…あーあ、やっぱり私、本当はこんなことしたいわけじゃなかったはずなのに。」
━━13年前━━
「うぅ、誰か、助けて…」
私は小さい頃はとってもやんちゃでよく色んなところに登っては降りられなくなって泣いてしまうことが多かった。
「また咲夜何してるだよ。ほら、背中に乗れよ。」
「う、うん!竜騎ありがとう!」
「早く乗らないともう行っちゃうぞ?」
私はうるうると泣いていた目をグッと我慢しながら竜騎の背中に飛び乗る。
「お、おっと、大丈夫か?」
「うん!ほんと竜騎ありがとう!」
━━現実━━
「私、竜騎とそんなことしたかった訳じゃないだ。」
私はふと、我に返った。りょうせいとしてしまった時から男の人の体をそういう風にしか見れていなかったのは一種の洗脳のようなものだったのだろう。
「私、謝らなきゃ!」
私はクヨクヨしていた気持ちを叩き直すと、学校を休んでしまったことを後悔しながらも竜騎の家へと向かってみることにした。
━━田辺家━━
「お兄ちゃん、竜騎さん大丈夫だった?」
家に帰えってきた兄に私は何よりも早くそのことを尋ねた。
「あいつは、多分すごい悩んでた。多分立ち直るのには結構時間がかかりそうだ。」
少し暗い顔つきで私にそう話した。
「そ、そんな…私今から竜騎さんの家に行ってくる!」
「ばか、あんな竜騎お前に見せられない。」
お兄ちゃんは私の腕を掴み止めてくる。
「今回はお兄ちゃんの言うこと聞けないから!」
私はお兄ちゃんの腕を振り払うと家を飛び出した。
━━学校━━
「りょうせいさん、どこ行くんですか?」
取り巻きがこちらに尋ねてくる。
「生徒会室だよ。」
俺はポケットに両手を突っ込んだまま生徒会室まで歩いていく。
「生徒会長こんちわっす。」
「あなた、りょうせいさんですね。噂はよく聞きますが私に何の用ですか?」
「お堅いなぁ加賀生徒会長。」
「それであなたのような問題児が私に何かあるんですか?私も忙しいのですが。」
太陽はもう沈みかけていて生徒会室に差し込む太陽の光も段々と少なくなっていた。
「加賀美雪。この学校の生徒会長で成績も学年トップ、陸上部では部長を務めていて全国記録も持っている。文武両道を体現したような人だ。」
「そうですね。あなたとは正反対です。」
「俺は加賀生徒会長、あなたが欲しいんだ。」
「私を?何を言うんですか。」
「まぁそういう反応になるのはしょうがないです。ただ、少し迷ってることがあるんじゃないですか?」
そう言われた時彼女の顔色が少し変わったような気がした。
「ここに俺の電話番号とLINEが書いてあるんでもし連絡したくなったらここに連絡してくださいね。」
「するわけ、ないじゃない。」
「無理にはいいですよ。ただ、絶対かけてくれると信じてるんでね。」
「話はそれだけですか?それなら早く帰ってください。」
「良い話を待ってます。」
俺はそう言い残すと生徒会室を出た。
生徒会室では加賀生徒会長が連絡先の紙を眺めていた。