偽り
俺は次の日学校を休んだ。
結局昨日家に帰ってからずっと布団の中に入ったまんま寝落ちていた。
どうして、どうして
頭の中でそう繰り返してばかり、何回頭の中で問いかけても答えが返ってくることは無かった。
スマホが震えたと思うとそこには結月からの一通のLINEがきていた。
『竜騎さん大丈夫ですか?お兄ちゃんから学校に登校してないと連絡があったので気になってLINEしました。返せるようなら返してください。』
なんだろう、返さないのは失礼だと思うのに腕が動かない。何もしたくない。
「どうすりゃいいんだよ。この痛みは」
心を何かでえぐられたような気持ちが昨日からずっと続いている。
俺はそのまま何もかも忘れたいとまた瞼を閉じるのだった。
━━放課後①━━
「りょうせいくん、君がどうして生徒指導室に呼ばれたかわかっているのかね?」
「なんですか?俺別に何も悪いことしてないですよ。」
りょうせいは面倒くさそうに軽く返すと生徒指導の先生を見る。
「柴田先生や他の生徒との不純異性交友についてだ。周りの生徒からその手の連絡がいくつも来ている。これは許されない行為だぞ。」
「先生硬いっすねぇ。じゃあこれでどうですか?」
りょうせいはそう言うと机の上に1つの紙を置く。
「なんだこれは?」
「これは俺がこれまで調教してきた女の子たちの連絡先ですよ。ここにいる子達は俺が欲求不満な体にしてるんで先生みたいなおじさんでも喜んでエッチしてくれますよ?」
「な、何を言う。」
「この子なんてどうですか?弓道部の神崎ひより。弓道部のエースと呼ばれる野村咲夜と並ぶ弓道部のリーダー的存在…そんな彼女も俺が呼べばすぐにメス犬になる。」
「な、何をそんなこと。」
「1回やってみれば分かりますよ。今日の夜楽しんでくださいね。連絡はしとくので。」
「そ、そうか。今回だけだぞ。」
「ありがとうございます。今後ともよろしくお願いします。」
りょうせいはニヤリと笑うと生徒指導室を後にした。
━━放課後②━━
そろそろは学校は終わっただろうか。
1日中家の中にいると時間感覚がわからなくなる。
今日の夜は眠れなさそうだ。
そんな時家のチャイムがなる。
「はーい…て、陸斗か。どうしたんだよ。」
「体調は大丈夫か?急に休むから心配したぞ。」
「わざわざお見舞いに来てくれてありがとうな。部活大丈夫だったのか?」
「部活よりお前の方が大事だよ。」
なんて優しいんだ。俺は陸斗と友達になっていてよかったと心の底から思った。
「それで何があったんだ?」
俺たちは部屋で座ると昨日あったことを陸斗に話した。
「そうか。それで立ち直れていないと。」
「そうなんだ。もう、どうすればいいのかわからなくて。咲夜のこと嫌いじゃないだよ傷つけたくもない。どうしたらいいんだよ陸斗。」
陸斗はしばらく黙り込んだと思うと息を少しいつもより深く吸って話し始めた。
「いいんじゃないか?別に。」
俺は驚いた。俺が陸斗に求めていた言葉とは違うものが返ってきたからだ。
「それじゃダメだろ。だって、傷つけちゃ相手と変わらないだろ。」
「自分が辛かったら意味が無いだろ!」
陸斗は強めの言葉で俺に言い放つ。
「どうして自分のことを傷つけるやつに優しくするんだ。別に言い返せとか傷つけろとか言ってるんじゃない。普通に接すればいいじゃないか。」
「俺はあの時から、もう誰も傷つけないって決めたんだよ!」
頭に血が上って来る。さすがに自分の信念を曲げられるのは腹が立つ。
「そんなこと出来るわけないだろ。お前だって一人の人間なんだよ。弱いんだよ。それは身をもって知ってるだろ。傷つかないことなんてないんだ。だからお前が抱え込むことじゃないんだよ。」
「なら尚更じゃないか。」
「お前に助けを求めたか?助けてくれと誰かが言ったか?妹のことは感謝してる。だけどな、人間は1人で立ち直れないほど弱くはないぞ。」
「なんだよ、さっきと言ってること真逆じゃないか。」
「ちげぇよ、お前が人の弱さを測り間違えてるってことだよ。少しは考え直せ。俺は今日はこれで帰る。」
「おい。」
陸斗は立ち上がるとそのまま家を後にした。