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ショートショート集

その日、大雨が降った

作者: 青樹空良

 ものすごい熱さだった。じりじりと焼かれるようだ。体の中が煮えたぎっている。

 このままだと、溶けてしまいそうだ。事実、すでにどこか溶けている気がする。やばい。

 ああ、熱い。


 早く涼しくなって欲しい。

 そんな私の思いに誰かが答えてくれたのか、厚く立ちこめた雲からぽつりと何かが落ちてきた。

 雨だ。雨が降り始めた。熱く火照った体に心地いい。

 最高だ。

 ほどよくクールダウンしたところで、雨は止んだ。一息つく。気持ちがいい。


 が、そんな心地よさに浸っていた私の上に、再びどでかい雲が現れ始めた。あ、これは来るな、なんて思ったと同時に再びの雨。しかも、さっきとは比べものにならない豪雨だ。

 雨が全てを覆い尽くしていく。ものすごい雨だ。何も見えない。雨しか見えない。雨も見えない。視界が奪われる。というか、痛い。溺れる。


 いや、うん。

 確かに、むちゃくちゃに熱かったから涼しくなって欲しいとは思っていたけど。これはちょっとやりすぎなんじゃないかな、と言いたいくらいに雨が降り注ぐ。

 本当にもう、いい加減にしてくれ。

 文句を言っても、雨は止まない。

 しかし、本当に何も見えない。世界はどうなっているんだろう。


 ようやく雨が止んだ。当たりを見回す。景色は一変していた。

 大きな大きな水たまりがある。水だ。いままで見たこともないような大量の水。

 しかも、水たまりの中では何かが動いている気配もある。さっきまで私の上には赤くてどろどろした何かしか無かったのに。

 あまりの変わりっぷりに驚くしか無い。

 でも、雨が降る前よりはずっといい。なにしろ、涼しい。


 しばらくすると、私の上はなんだか賑やかになった。

 もう、あのときのようなものすごい雨は降らないけれど、今日も私の上のどこかで雨が降っている。

 私は時々、熱くてたまらなかった頃が懐かしくなって、そこら辺の火山を噴火させたりしてみている。

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