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護衛士ハルトとふたりの姫様  作者: サイトウ純蒼
第一章「ゴールドバード編」
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17.決着

ゴールドバードの羽ばたく音だけが召喚域に響く。空中に舞う黄金の鳥。召喚域の中ではあるが、その姿はまるで太陽のごとく美しかった。

ゴールドバードは再びホバリングしながらハルト達に言う。


「だから言ったでしょ。駆け出しの召喚士やワンちゃんには負けないって」


ゴールドバードは余裕の表情である。そして羽を強く羽ばたかせると再度言い放つ。



「さあ、これがかわせるかな?」


激しく、そして高速で羽ばたき始める神鳥。その中から金色の羽が高速で飛ばされる。


ザンザン!!


「うわっ!!」


まるで金の弓矢のような攻撃。しかも速い。辛うじて後方へかわすハルト。放たれた金色の羽が地面に突き刺さる。


「もっと行くわよ!!」


更に強く羽ばたくゴールドバード。先ほどよりも多くの羽を放つ。ハルトは右腕を前にして叫ぶ。


「ライトシールド!!!」


カンカンカンカンッ!!!


飛ばされた金色の羽がハルトのシールドに当たって弾かれる。


「今だ!!!」


隙を見てゴールドバードの真下に潜り込んでいたウェルスが、思い切り飛び跳ねその自慢の爪を振る。


「グワアアアア!!!!」


シュン!!


「!!!」


思い切り跳躍するウェルス。しかし伸ばされた自慢の爪は、あと一歩ゴールドバードに届かなかった。

ドンと音を立てて地面に降りるウェルス。頭上にいる神鳥を見上げ明らかに悔しそうな表情を浮かべる。


「そなた、その盾は……」


今度はハルトが余裕の表情を見せて言う。


「ああ、俺召喚士じゃなくて、()()()だから。本業は」


羽ばたきながら近くの岩に降り立つゴールドバード。


「なるほどね。だからあんな盾を。しかし召喚士に、護衛士とは。器用だね、ハルちゃん」


「まあな。じゃあ、行くぞ!!」



そう言うとハルトは抜刀してゴールドバードに斬りかかる。同時に別の場所にいたウェルスも攻撃を仕掛ける。


バサッ、バサッ!!


ゴールドバードは羽ばたき空中に逃げようとする。すぐさま跳躍し攻撃するウェルス。しかしやはり届かない。再びゴールドバードが羽を矢のように放つ。



「シールド!!」


カンカンカン!!


盾で防ぐハルト。ウェルスが近場の岩を蹴るように登り、再度大きく跳躍。飛びながら攻撃するゴールドバードに斬りかかる。


シュン!!


「ざ~んねん」


またしても間一髪でかわすゴールドバード。

空振りに終わった攻撃の後、姿勢を崩すウェルス。ゴールドバードがその頭を小ぶりのクチバシでつつく。


「いてててて!!!」


何度も頭をつつかれ、地面に降りた後は手で押さえながら逃げるウェルス。楽しそうに、そして執拗に神鳥が追いかける。


「ウェルス!!!」


ハルトが剣を持ってゴールドバードに斬り込む。


「はあっ!!」


やはり間一髪のタイミングでかわされる。ハルトは続けざまに剣を振り回す。後方に飛びながら剣を避けるゴールドバード。

ムキになるハルトと余裕の神鳥。召喚域の外で見ている者にはどちらが優勢か一目瞭然であった。



「ハルト、やられるぞ……」


その様子を見ていたガイアがふとつぶやく。


「はあああ!!」


ハルトは渾身の力を込めて素早く剣を振る。


ブォン!!


やはり届かぬハルトの攻撃。ゴールドバードは強く羽を動かすと、剣を振って姿勢を崩したハルトの背後に素早く移動。そしてハルトの無防備な背中を切り裂こうと鋭い爪を振り上げる。


「ハルト!!!」


ルルやクレアが叫ぶ。


「クワアアアア!!」


ゴールドバードの咆哮。振り下ろされる鋭い爪。


ザンッ!!


「グゥワアアアァァァ!!!!」


その爪は的確に背中を切り裂いた。ただしハルトの背中ではなく、()()()()の背中を。


「ウ、ウェルス!!!」


振り返りハルトが叫ぶ。背中から流れる鮮血。倒れるウェルス。ハルトはすぐに抱きかかえるとシールドを張る。


「すまない、ウェルス。俺がカッとなったばかりに……」


ウェルスはハルトの手を握ると少し苦痛な表情を浮かべて立ち上がった。


「心配すんじゃねえ。鳥の爪ぐらいでやられる俺様じゃねえ……」



その様子を外から見ていたガイアは高揚のあまりまばたきひとつできなかった。


(ウェルス殿。立派に、立派になられて。やはりその血は争えぬものか……)


ガイアは自然と流れる涙を誰にも見られぬようそっと拭った。



「やはり駆け出しのアマちゃんだね。ハルちゃん達は」


ゴールドバードが余裕そうに語る。


ゆっくりと立ち上がるウェルス。ハルトが耳元で何やら囁く。そして言う。


「行けるか?」


「ああ、もちろん!!」


「行くぞ!!!」


ハルトは再び剣を持ちゴールドバードに斬りかかる。


「同じだよ!! そなたの剣じゃ届かぬぞ!!」


そう言いながら羽ばたき空中に逃げようとするゴールドバード。ハルトが叫ぶ。


「シールド・二連!!!」


ハルトがそう叫ぶと、ゴールドバードの頭上にシールドが出現。


ドン!!


「あいてっ!!」


飛び立とうとしたゴールドバードが頭上にできたシールドに頭を打つ。ならば横っ! と素早く移動しようとする。


「はあああ!!」


そこに斬り込んで来るハルトとウェルス。慌てたゴールドバードは反対側に逃げようと羽を広げ飛び立つ。


ゴン!!


「痛い!!!」


しかしそこには先に発生させたシールドがあり再びゴールドバードの行く手を遮る。


「グワアアアア!!!」


逃げようとする神鳥。しかしそれよりも早くウェルスが飛び掛かかり斬り込む。


ザン!!!


「痛あああーーーいっ!!!」


ウェルスの爪は見事にゴールドバードの右羽を捉えた。その美しい羽にウェルスの鋭い爪跡がはっきりと付く。吹き上がる大量の血と羽。


ドーン!!


地面に落ちる神鳥。ハルトが素早くやって来て剣を突き付ける。


勝負あり。



「ゴ、ゴールドバード様!!!」


外からライトの心配する声がする。ハルトが言う。


「大丈夫。その程度の負傷なら召喚界に行けば直ぐ治る」


安堵の表情を見せるライト。ハルトは剣を、そしてウェルスは爪を戻す。ゴールドバードがゆっくり立ち上がって言った。


「見事じゃ、ハルちゃん。そなたの勝ちじゃ」


ハルトは嬉しそうな顔で答える。


「ありがと、ごっちゃん」


喜ぶハルトであったが、気のせいかウェルスは少しだけ悲しそうに見えた。

少しでも面白いと思われた方、ブックマーク、ポイント評価を頂ければ作者はとても感激するので宜しくお願い致しますm(__)m

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