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九十三話 「一組対十五組です!」


「さあ本日ももうすぐ始まります! クラス対抗戦、今回のカードは皆さんお待ちかねの一組対十五組です! 信じられますか、どちらもここまで無敗です!? 今回でどちらかの無敗記録が止まる事となります!」


 スイザウロ学園初等部エリア、修練場。

 そこではクラス対抗戦用の特別な施しがなされ、平時とは違った様子を見せていた。


 クラス対抗戦時は一般解放もされ、観客席は臨時バスや飛行可能な種族による飛行便サービス等の導入により導線が確保された事で学内外の見物人で溢れていた。


 今回はそれだけではなく、教員席、親御席の他に国内外から訪れた要人用の席も用意されているためスイザウロ学園が如何にこの一組対十五組のクラス対抗戦が注目されているかが分かる。


 実況席には、実況に命をかけている放送部員クラーマーファと、ヨレヨレの黒スーツを着用し淀んだ雰囲気を醸し出す一組担任エオニオが腰を据える。

 それと実況席の近くには、緑髪の巨漢が仁王立ちしていた。


「本日も実況はこの私、クラーマーファ! ……と行きたい所ですが、本日は私以上の適任がいます! 素敵な試合には素敵な司会をモットーに生きている私なので、実況したい欲を堪えて、このマイクを放送部OBメトレイさんに任せます! 私はサブとして頑張りたいと思います」


 クラーマーファはそう言い、自分の握っていたマイクを近くに立っていたメトレイに差し出す。

 だがメトレイはオロオロしてマイクを受け取ろうとしなかった。


 それを見たエオニオは立ち上がるとクラーマーファからマイクを受け取り、メトレイの元に近づく。

 一言二言交わしエオニオが自席に戻ると、メトレイの右手にはマイクが握られていた。


 その直後、メトレイは全身を震わせ緑色に発光し喉から声を捻り出す。


「——Yeahhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhh!!!」


 緑髪の男の声が響き渡り、会場が震える。


「竜王家が二十男、爆音龍メトレイ・ネスティマス! マイクを握ったからには今日のステージを最高に盛り上げるぜ! ヨロシクゥゥゥウ!!」


「————!!!」


 メトレイの言葉に中てられた観客が盛り上がる。

 観客席は熱気に包まれた。


「早速で悪いけど、一つ残念なお知らせがあるんだ聞いてくれ! この神聖なステージで悪さをしようとしている奴らがいると聞いた……だが安心してくれ! 学外からも皆が来られるように一般解放したまま、俺達ネスティマス家が守る事にした! ステージは何者にも邪魔させねえよ!!!」


「————————!!!!!!」


 何者かが今日の対抗戦を狙い乱入してくると聞いた観客は不穏な空気を感じ取り、思い思いの反応をしたが、その後の竜王家が守るという発言を聞き不安は払拭され更に会場のボルテージが上がった。


「そして解説はネスティマス家最強の男、アギオ・ネスティマスだ!! ……あれ、今なんか偽名使っているんだっけか!? まあ別に良いか!! 最強の布陣で今日の試合を盛り上げるぜ!!!」


「————————————————!!!!!!」


 アギオ・ネスティマスという名前を聞いた観客が更に盛り上がる。

 その盛り上がりの中には「えっ、エオニオ先生ってあのアギオ・ネスティマスだったの!?」といった具合に生徒の困惑する声も混ざっていた。


「……バラされてしまったな。俺はアギオ・ネスティマスだ。よろしく頼む」


 アギオの声がマイクとスピーカーを通し場内に響き、観客の驚く声が響く。

 無限龍として名を轟かせるアギオの知名度、人気は計り知れない。


「それじゃあ、今日のカードの発表をするぜ! まずは十五組! この国の第一王子ことブラリ・スイザウロ! 戦闘力なら一学年で一番という噂があるアズモ・ネスティマス! 普段はぐうたらしているが戦闘においては類まれなセンスを発揮するラフティリ・ネスティマス、勉強・戦闘何でもござれ王子の頼れる付き人スフィラ・バンティラスの四名!」


 十五組の紹介をしたメトレイは隣でソワソワしていたクラーマーファに「次は任せる」と小声で言い人差し指を向ける。

 その意味に気付いたクラーマーファは一瞬だけ嬉しそうな表情するが、すぐに表情を真面目な物に変えマイクを握る。


「一組は私が発表します! 同じくこの国の第一王女で一年生きっての優等生ダフティ・スイザウロ! 片目から覗く世界は深淵スフロア・エラスティス! キュートな見た目に反した物理娘ルクダ・サーウロス! 王女に仕える執事ポディカスロ・アール!」


 クラーマーファはメトレイの紹介に屈せず、一組の出場選手の名前を高らかに告げた。



—————



「いやー、緊張するね」

「嘘吐け。呑気に茶を飲みながら何を言っているんだ」


 修練場に備え付けられた控室。

 クラス対抗戦開始の合図を待つ俺達はそこで待機をしていた。


「子供達が密室に一杯だわあ~」


 控室に設置されている安全に戦闘を行う為に魔力体を生成する装置、魔力炉の隣には黒いサングラスをかけたエニスコスが座っていた。


「むえー!!」


 エニスコスの膝にはバタバタ暴れるラフティリが座らされている。


「あのエニスコス姉さん、ラフティーが嫌がっているので……」


 俺はエニスコスにラフティリを解放するよう要求した。

 これから一組とのクラス対抗戦だというのに無用な事で体力を消耗されるのは困る。


「嫌がってないと思うけどねえ」


 エニスコスの膝の上では鬼のような形相をしたラフティリが未だに暴れ続けている。

 明らかに嫌がっているのは誰の目から見ても明らかだった。


「まあアズモちゃんが交換してくれるなら解放するわよお~」

「いや、それはちょっと……。代わりにスフィラとかどうですか」

「私も嫌です」


 アズモもエニスコスの膝の上を嫌がるので代わりにスフィラを提案したが、スフィラにも食い気味に拒否された。

 一体どうして皆、エニスコスを嫌がるのだろうか。


「いやー、平和だねえ。こうも竜王家が学園に集まる事ってあるんだね」


 ブラリはスフィラから注いでもらった茶を飲みながらそう言う。


「ブラリはあの人が分かるのか?」

「有名人だよ彼女は。予言龍エニスコス・ネスティマス。当たる占いをする事で有名な占星術師だよ」

「えっへん」

「やっと抜けられたわ!」


 ブラリに紹介されたエニスコスが腰に手を当ててどや顔を披露した。

 ラフティリはその隙をついて俺の後ろに逃げて来た。


「どう、ここで一つ勝てるかお姉さんが占っとくう?」

「遠慮しとくよ。ここで何と言われようが僕のやる事は変わらないからね」

「かっこいいわねえ。まあ、この目で見ているだけでどうなるか分かっちゃうのだけどねえ」


 予言龍エニスコス・ネスティマス。

 彼女は竜王家が八女に当たり未来を見通す竜だ。


 アギオに招集されて、この学園にやって来た彼女は現在スイザウロ学園に占いの館を構え相談にしに来た子の悩みを解決する事に勤しんでいる。

 ただ、非常に甘やかしてこようとする姉さんなのでアズモやスフィラ等の一部生徒には煙たがられていた。


 ちなみにラフティリも嫌がっているのは、単にエニスコスが叔母に当たるからだ。

 ラフティリはディスティアに力加減を間違えられた寵愛を受けたせいで叔母という生き物を嫌がるようになった。


「分かっているなら僕達を止めないの?」

「勿論よお。子供たちのやりたい事は見守る、駄目そうだったら手を貸す。アギオお兄さんがそう決めたから私もそれに従うわあ~」

「へえ、案外ネスティマス家はそこら辺寛容なんだね」

「まあ、魔王家に比べたらそうなのかもな」


 エニスコスの言葉を聞き俺の方を向いたブラリに俺はそう返した。


 魔王家では、幼少時は保育園や幼稚園に通う事無く家でひたすら稽古に励んだと聞いた。

 普通は家を出る事も滅多に出来ないため友達を作る事も出来ず、ブラリはまだしも妹のダフティは学園に入って始めて友達が出来たらしい。


 この国を担う為とは言え、かなり窮屈な家のように感じる。


「ただ、この魔力炉と転移装置は見守らせてもらうわあ。ここを弄られるのが一番厄介だものねえ~」


 魔力炉と転移装置があるお陰で、修練場内なら魔力体という魔力で作られた仮の身体を纏い、怪我する事無く安全に戦う事が出来る。

 魔力体がダメージを肩代わりしてくれ、リソースが尽きても転移装置が作動する事で安全にこの控室に戻って来る事が出来る。


「まあ確かに転移装置が弄られたら厄介かもね。うーん、ここにエニスコスが居るって事は一組の控室にも?」

「アミフィリアちゃんがいるわよお~」

「炎王龍か、本当に至れり尽くせりだね……。でも、ここまで厳重な警備をしているって事は……いや、止めとこう。試合に雑念を混ぜたくないね」

「フフフ~。こっちは裏で完璧に処理するから対抗戦に集中して大丈夫よお~」


 ブラリはエニスコスとの会話で色々と察したようだ。


 俺でも、二人の会話を聞き少し察する物があった。

 恐らくこのクラス対抗戦では何かが起こる。


 ……まあ、俺とブラリは起こす側だ。

 このクラス対抗戦を通じてダフティを異形化から解放する。


 本日の実況者による出場選手紹介が始まり、メトレイの変わりように俺は驚いた。


「それじゃあ行ってみようぜ! クラス対抗戦、一組対十五組開始ィイイイ!!」


 メトレイの号令と共に、試合開始のブザーが鳴り修練場への扉が開く。

 俺達はブラリを先頭に扉を潜っていった。



~ネスティマス家の秘密お仕事編~


・テリオ

普段はモデルや俳優として活躍している。

テリオが表紙を飾った雑誌は普段買わない人も手に取る程。

ただし、白服しか着ないので白特集等でしか雑誌に出られない。

雑誌関係者からは扱いが難しい。

ネスティマス家の顔と言えばテリオとの声が高い。


・ディスティア

アパレル会社を経営している。

パンクファッションを売りにしていて、その筋からの人気が硬い。

本人の私服も勿論ぶっ飛んでいる。

スイザウロ学園の教師になる時は「カジュアルな服装でお越しください」と書かれていたため、私服で行ったら学長に凄まじい剣幕で怒られた。

勿論、ディスティアはキレた。


・メトレイ

スイザウロ魔王国では無く、海外の一日中明るい街のとあるダンスホールでDJをしている。

メトレイの特殊な声を使った場の演出はラッパーからの人気が高く、是非来てくれと呼ばれる事も多い。

ただマイクを握っていないと気弱な性格の為、そこに居る人達全員を怖いと感じている。

ラップも出来る。


・エニスコス

メトレイと同じく海外で活動している占い師。

エニスコスが勤めている占いの館には連日長蛇の列がなされる。

時々その国の政府の要人が来て今後行われる政策の行く末を見たり、とある企業のさるお方が新商品が成功するかどうかを相談しに来たりする。

当然趣味外の占いは慈善事業では無いので、お金を結構要求する。


・フィドロクア

水族館や、水上テーマパーク、海底探査、水中ダンジョン等の水や水棲生物の関わる施設や場所の相談人をしている。

水族館で出会った女性と恋に落ちてラフティリが生まれるまではバリバリ働いていたが、生まれてからは遠地や危険な場所へ行く事が少なくなった。

愛妻家で娘も大好き。

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[気になる点] 魔力炉くん、毎回間違われているね…もしかして誤字じゃないのかな?
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