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背反の魔物~異世界に転生したと思ったら竜王の娘に憑依していた~  作者: おでん食いたい
 学園生活と正反対の双子—動き始めた思惑—
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七十七話 「どうして教えてくれないんだろう」


「コウジって誰なの……?」


 ルクダはラフティリの漏らした言葉を聞き逃さなかった。


 コウジという名前をルクダは聞いた事が無い。

 寮や学校の空き時間でラフティリとよく交友しているが、その名前と一度も出会わなかった。


 新しい友達が自分の知らない所で出来たのだろうか。

 そう思いながらルクダは、ラフティリにコウジという名前を問う。


「コウジはコウジよ。ルクダは知らないの?」

「そうだよ、新しい友達かな。ルクダにも紹介して欲しいな!」


 知らない名前に少し違和感を抱いたが、ルクダは気にしない事にした。

 自分の知らない人と友達になれる事に対する期待感がそれを上回った。


「もしかしてあたし、言っちゃいけない事言った? あたしが勝手に教えたらアズモ達に怒られるわよね? ……どうすればいいのかしら?」


 しかし、ラフティリはコウジという名前についてルクダに教える事無く一人でブツブツ言いながら考え出した。


「ラフティリちゃん?」


 ルクダには何故ラフティリが言い淀むのかが分からなかった。


 ストレートに物事を言う所がラフティリの良い所だとルクダは認識していた。

 ラフティリが何かを聞かれているのに、「分からない!」とも言わないのはこれが初めてだ。


 人には言えない事だったのだろうかと、ルクダは考える。

 その名前には関わった事が無いが、その隠す行動には覚えがあった。


 アズモとスフロアだ。

 二人は保育園からの友達である。

 スフロアに関しては部屋が同じなので毎日会う仲だ。


 保護者同伴ではあったが、保育園の頃からよく三人で出掛ける仲なので、ルクダは二人ととても仲が良い、親友だと思って接してきた。


 だけど二人は時々、ルクダには分からない話をする。


 スフロアとアズモの二人は、同年代なのにルクダには大人に見える事が時々あった。


 難しい話をしていたり、初めて体験する事への反応が薄かったり様々な事から、ルクダは二人の事を「大人みたいだなー」と思いながら過ごしてきた。


 だから、二人が時々するルクダには分からない話は、話している事が難しいから分からなく、二人も気を利かせてルクダが居ない所でその話をしているのだと思っていた。


 そんなルクダにとってラフティリは同年代らしい友達であった。

 同じようにはしゃいでくれて、同じように元気に喋ってくれる。

 ラフティリはそんな友達だった。


 それなのにラフティリは、大人びて見える二人と同じような反応をした。


「話してくれないの……?」


 何故か、少し心がざわつくのを感じた。

 ルクダには初めての経験だった。


「あたしが言って良いのか分からないから、アズモに同じ質問をすると良いわ。もう身体も元に戻ったし、先に上がってアズモの部屋で待っているわ」


 そう言い、ラフティリは話から逃げるように風呂から上がった。

 出る前に身体を震わせ水気を払い、脱衣所に消えていく。


 ルクダは、風呂に一人取り残された。


「どうして教えてくれないんだろう……?」


 ルクダには教えてくれない理由が分からなかった。


「ルクダが子供だからかな……? 難しい話だからルクダには教えてくれないのかな……?」


 取り残された風呂で独り言のように呟いた。

 誰に聞かせるわけでも無かったが、思わぬ返答が返ってくる。


「どうしたのですか、ルクダさん?」


 ルクダと同じ一組に在籍するダフティだった。

 一人だと思っていたら、ダフティが隣でお湯に浸かっていた。


「あ、ダフティちゃん! ううん、なんでもないよ!」

「そうですか? その割には落ち込んでいるように見えましたが」

「落ち込んでないよ! ルクダはいつでも元気だもん!」


 ルクダは顔を明るく見えるように整えながら、ダフティにそう言った。

 ダフティはそんなルクダを見て、少し考え込む。


「私には言えない事なのですか? ルクダさんは友達なので、私に隠し事をしないと思っていました……」

「……!」


 ルクダはダフティの言葉に引っかかる物を感じた。


「ですが、友達とは言え秘密は誰にでもありますよね。言えない事もありますし、詮索はしません」

「……ううん、言うよダフティちゃん。隠し事はやっぱり駄目だよね」


 友達同士で隠し事をするのは良くない事だとルクダは思った。

 ルクダ自身も、お風呂から上がったらラフティリに言われた事をアズモに聞こうと思っていた。


 自分も聞こうとしているのに、ダフティには内緒にするというのはいけない事だとルクダは考えた。

 それに、ルクダにとってダフティも少し大人びて見えたので聞いたら分かってくれるかもという淡い期待をした。


 ダフティは言うと決めたルクダの事をジッと見つめ何も言わないでいた。

 ルクダはダフティを一回見ると、水面に視線をやり話す。


「あのね、ルクダの知らない友達がいるんだよね。ルクダは知らないのに、スフロアちゃんもラフティーちゃんも、アズモちゃんも知っている人みたいなの。ルクダだけが知らない友達が三人には居るみたいなの。それでさっき聞いたんだけどね、話してもらえなかったの」


 意を決し喋った。

 ルクダがこのような弱音事を話すのは初めてだった。


 初めての体験に心が消耗したのか、目から涙が溢れ水面に波紋を作っていく。

 一度決壊したら止まらなかった。


「ルクダはスフロアちゃんも、アズモちゃんも、ラフティーちゃんも皆大好きだよ。皆大事な友達だよ」


「だけどね、皆ルクダに隠し事をするの」


「スフロアちゃんとアズモちゃんは、保育園の時からルクダには内緒の話をするの……」


「きっとルクダには分からないような難しい話をしているんだと思うの。ルクダは子供だから大人な二人には気を利かせてもらっているんだと思うの」


「もしかしたら、普通に秘密事を喋っているかもしれないよ……」


「でも、ルクダも二人と友達だよ。全部教えて欲しいよ……」


「隠し事をされると悲しくなるよ……」


「ルクダは子供だから我慢が出来ないんだ……」


 全部言い切る頃には、涙が止めどなく溢れた。

 ずっと一人で感じていた事を始めて喋った。


 ルクダはずっと疎外感を感じていた。

 スフロアとアズモは、ルクダと仲良くしているが、度々二人で内緒話をしていたのも事実だ。


 ルクダはそれにうっすらと気付きながら、何も言わなかった。


 それが今、初めて漏れ出た。

 今まで堰き止めていた思いが涙と一緒に溢れ出た。


 ダフティはルクダの話を黙って聞いていた。

 何も言わずにルクダに寄り添い、ルクダが落ち着くまでジッとしていた。


「……私も昔、兄様が何も言わずに何処かに行ってしまうのをルクダさんと同じように思いながら過ごした事があります」


 ルクダが落ち着くのを見計らい、ダフティは声を掛ける。


「私だって兄様と冒険する強さがあったのに、どうして兄様は私に何も言わずに、私の事を置いていってしまうのかと毎回思っていました」


 ダフティの言葉には思いが詰まっていた。

 確かに経験した事なのだろう。


 ダフティがルクダにかける言葉には、不思議な力が確かにあった。


「私はその答えを見つけました」

「答え……?」


 ダフティの言葉を聞いたルクダは、顔を上げてダフティと目線を合わせる。


 ダフティの黒い瞳は怪しく光っていたが、ルクダはそれに気付く事無くダフティの目を見つめた。


「えぇ、私なりの答えです」

「ダフティちゃんはどんな答えに辿り着いたの?」


 ダフティは、光を吸い込んでしまいそうな暗い瞳を濁らせ言葉を紡ぐ。


「強くなればいいのです。自分の思い描く力を持ってしまえば全部思い通りにいきます」

「強くなる……?」


「はい。ルクダさんはどのようになりたいですか? 理想の姿はどのような姿ですか? どのような力があれば友達に隠し事をしないでもらえると思いますか?」


 ダフティの周りには、黒い靄が無数に漂っていた。

 黒い靄はルクダを逃がさないように取り囲む。


「私にルクダさんの思い描く姿を教えてください」


 ダフティの言葉とは別に、何者かの言葉がどこかで響いた。


『——どんな力が欲しいカ』


 その言葉がルクダの脳内で無限に響く。


 声は急かすようにルクダに問い続ける。


 どんな力が欲しいか。

 どんな姿になりたいか。

 どうすれば自分の願いが叶うか。


 やがてルクダは静かに口を開く。


 ルクダの目元にはもう涙は無い。

 濡れていた頬は乾き、瞳は怪しく光っていた。



「ルクダは——」



ルクダちゃんはスズランちゃんを構うのが好きです。

ルクダちゃんはよく同級生に可愛がられる立場なので、可愛がる事の出来るスズランちゃんは特別に思っているのかもしれません。


スズランちゃんもそんなルクダちゃんに特別な感情を抱いています(74話の後書き参照)



励みになりますので、諸々していただけると泣いて喜びます。

書く速度が当社比で早くなります。

よろしくお願いします。


私はルクダちゃんが好きなのでル虐はしません。

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[一言] ルクダちゃんが洗脳されてしまう……!
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