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背反の魔物~異世界に転生したと思ったら竜王の娘に憑依していた~  作者: おでん食いたい
 学園生活と正反対の双子—動き始めた思惑—
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七十六話 「内通者なの……?」


「嘘でしょ……? ダフティが内通者なの……?」


 俺の話を聞いたスフロアが目を見開きながらそう言った。


 内通者というのは、エクセレと繋がっている生徒だ。

 そしてエクセレは、十五組に突然現れ襲い掛かって来たネスティマス家の長女である。


 内通者というのはエクセレを利用して俺達の命を害そうとした人物という事になる。


 つまり、ダフティは俺達を殺そうとした。


「信じられないわ……ダフティが一組でどういう風に思われているか知っているかしら?」

「優等生として扱われている事は間違い無いだろうな」


 わなわなと震えながら質問をしてくるスフロアに、俺はそう返した。


「そうよ。ダフティは一組のリーダーよ。クラス長をやって、授業では率先して発表もして、皆から頼りにされて、クラス対抗戦でも活躍する優等生よ。そんなダフティがそんな……あんた達を殺そうとしたなんてどう受け止めれば良いのよ……」


 ブラリから聞いた時、俺も今のスフロアと同じような反応をしていたと思う。

 それだけ、ダフティが内通者だと言うのは受け入れ難い事だった。


「落ち着いて聞いて欲しい。あの日、エクセレに襲撃されてボロボロになって帰って来た日があっただろう。あの後、俺達は色々考えていたんだ」


「朝になって帰って来た日の事ね……。その前の日に待っていても帰って来ないから、夜遅くまで待っても帰って来ないから、朝早くからまたエントランスで待っていたら帰って来て、何があったのって聞いても何も答えてくれなかったわよね。しかもその後暫く部屋から出て来なくなるし……」


 十五組を襲撃されたあの日、エクセレに殺されかけた俺は真夜中に気付いた。

 そこで親父と少し話をして、朝までここで休んでおけと言われた。


 アズモはその時まだ気付いておらず、気付いたのは次の日の昼頃だった。


 俺は朝まで一人で考え事をしていた。

 エクセレに言われた言葉が引っかかっていた。


 ——忌々しい! また私から兄妹を奪うというのかお前達人間は!! なんて強欲で、傲慢な生き物なのだ……!

 ——やはりこんな種族は滅ぼさなければ……。

 ——魔物が人間如きを守るなよ。


 全部、エクセレから言われた言葉だ。

 エクセレは人間という種族をひたすら憎んでいた。


 エクセレは過去に人間から酷い仕打ちを受けたせいで異形化をして暴走。

 人間に甚大な被害を齎したと言われている。


 エクセレの異形化する条件は、人間が竜を食べる事。

 その条件から相当な事をされて異形化する事になったんだと思う。


 あの日、俺がエクセレから向けられた視線には、殺意しか籠っていなかった。


 俺は人間だから、エクセレに狙われるのは分かる。

 だが、アズモは魔物だ。それにエクセレの妹でもある。


 アズモが俺のせいで傷つけられるのが許せなかった。

 どうやったらアズモが、エクセレに襲われる事なく学園生活を送る事が出来るのか俺は一人でずっと考えていた。


 アズモだけじゃない。

 あの日教室に居た、まだ療養から帰って来ない担任のアスミ先生や、俺達を助けに来た結果身体を損壊しまだ復帰出来ていないフィドロクア兄さん、逃げ遅れて惨劇を見せられたマニタリとムニミィメムリ、檻に囚われ泣き叫んでいたラフティリ。


 俺のせいで傷ついた人がかなりいる。


 寮に帰った俺を見て安堵した表情で声を掛けて来たスフロアを無視して俺は部屋に行き、布団を被ってずっと周りの人を傷つけない方法を考えていた。


 アズモが気付いて謝るまで誰とも関わりたく無かった。


「あの時はごめんな……。自分の事で精一杯で、これ以上周りの人を傷つけたく無くて、スフロアを無視してしまった……」

「それはもう良いのよ。あの後、事情を説明してくれたからね。それにもう立ち直ったのでしょう?」


 十五組にエクセレが襲撃して来てから色々な事があった。


 俺達が平穏な学園生活を送れるように、ネスティマス家から次男と四女がやって来た。

 修練場では、オミムリの正体を見破り、追い詰められたオミムリがエクセレを召喚。

 現れたエクセレをテリオ兄さんとディスティア姉さんで追い詰めたと思ったら、謎の男の出現で取り逃がす。

 ブラリ喧嘩、そして昔話。


 入学してからまだ三カ月くらいしか経っていないのにこれだけの事が起きた。


 ブラリとの喧嘩の時に、俺がアズモの身体を動かす事が出来てもアズモと痛みを共有する事は出来ない事に気付き更に落ち込んだ。


 俺はどこまでいってもアズモに憑依しているだけに過ぎなかった。

 身体に入り込んでいるというよりも、操り人形のように上から糸で操って無理矢理動かしているという表現の方が近かった。


 だが、俺はアズモにネチネチ考えるのを止めろと言われ強制的に前を向かされた。


 この身体に入った事の役割を理解して、それに務めるのを考えるようにした。


「立ち直ったと言われたらウーンってところだが、悪い事を考えるのを止めた。アズモにあそこまで言われたし、ずっとネガティブな事を聞かされ続けられたら嫌な気持ちになるよな」

「及第点だけど、それなら良いわ」


 周りの人から物凄く心配された。

 兄さんや姉さん、親父や、スフロア、ルクダ、クラスメイトにも。

 色んな人にその事でも迷惑を掛けた。


 もしかしたら、ブラリが喧嘩を吹っ掛けてきたのは、ブラリにとって大事な一組との対抗戦の前に俺の問題を解決したかったかもしれない。

 ブラリもアレで心配していたのだろう。


 だから、もうネチネチ考えるのは止めた。

 だいだい考えても解決する問題では無い。


「……それで、ブラリから昔の話を聞いてエクセレと繋がっている人物に目処がついた」

「それがダフティだったのね」

「ああ。ダフティは五歳の頃に、家族の変わり果てた姿を見て異形化をした。そして、エクセレに攫われた」

「……!?」


 ダフティが、人間を殺した事は伝えずに異形化した事だけを伝える。

 流石にそれを俺が言うのは違うと思った。


「攫われたって、ダフティは大丈夫だったの!?」

「ダフティはその日の内に帰ってきた。だが、異形化の後遺症か元は白かった髪が黒色から戻らなくなったらしい」

「そう、だったのね……。双子だから兄と同じようにそういう風に生まれて来たのかと思っていたけど、そうじゃ無かったのね。異形化をして兄と同じになったのね……」


 異形化は、俺達魔物に備わっている能力だ。


 魔物化や解放と違い、異形化をすると理性が無くなり、本能を剥き出しにして暴れる事になる。

 それが、異形化という能力の説明としてよく使われる言葉。


 ブラリもダンジョンの一件があり、異形化が出来るようになった。

 そんなブラリが言っていたが、異形化は自分が心からなりたいと思った姿になり、自分の願いを叶える為の力を使えるようになる能力らしい。


 フィラフトとブラリの姿を見て、ダフティは何を思ったのだろう。


「ダフティはエクセレと繋がりがあったんだ。攫われて何をされたのかは分からないが、それ以降もエクセレと会っていたんだろうな。そして、俺を襲わせた」

「そういう事なのね……」


「ダフティがどうして俺の事を知っているのかは知らない。だけど、俺と関わっているだけで危害が及ぶかもしれない。だから——」


 十五組に来ないか?

 そう聞こうとしたが、言葉が出なかった。


 スフロアに口を塞がれたからだ。


「……誰か入って来るわ」

「……」


 俺の部屋はイエラとダフティとの三人部屋だ。

 イエラだったらまだ良いが、ダフティにこの話を聞かれていたら不味い。


 口を噤み入って来る人物を見守る。


 足音が止まり、ドアが開く。

 誰かが入って来た。


「——アズモの服を借りに来たわ!」


 ラフティリだった。

 ラフティリが魔物化で翼を生やし身体を隠しながら部屋に入って来た。


 翼をしまい、俺のクローゼットを漁るラフティリは何故か裸だった。


「いや、なんで服を着てないんだよ」


 思わずツッコミを入れた。

 ラフティリはルクダに風呂に入れられた。


 そこまでは分かるが、どうして裸のまま出て来たんだ。


「服をずっと洗濯するのを忘れていたから今日纏めて出した事にお風呂から出た後に気付いたわ。着る物が無いから、身体の大きさも同じで尻尾穴の位置も同じアズモの服を借りに来たの。アズモの服なら翼にも対応しているし」


 ラフティリは白の下着を取り出し、上に何を着るかを迷いながらそう言った。


「なんだこいつぅ……」



~みんなの尻尾事情~


〇アズモ

尻尾は二歳で出せるようになり、暫く出していたが邪魔な事に気付いたため戦闘時以外出さなくなった。

〇スフロア

普段から尻尾を出している。尻尾の先に毒針が付いているのでいざという時の護身用

〇ルクダ

丸い小さい尻尾を普段から出している。

〇ラフティリ

普段から尻尾を出している。尻尾をカッコイイと思っているから。

〇スフィラ

邪魔だから普段は尻尾を出さない。



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