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六十二話 ブラリの昔話 きっと毎日が楽しいんだろうな6


 あれから更に二年が経った。

 僕とダフティは五歳になり、スイザウロ学園の入試対策を始め出す。


 スイザウロ学園は名前にスイザウロを冠している、この魔王国きってのエリート校だ。

 この学園は初・中・高等部からなるエスカレーター式の学園。


 一度入ってしまえば、比較的楽に卒業まで辿り着けるが、外部受験で入るのはまず無理とまで言われている。

 とは言え、名門校と言われるだけあって初等部も倍率がかなり高く、入学は簡単な物ではない。


 そのため、この時期がスイザウロ学園に入学するに当たって一番大切な時期と言える。


 魔王家でも朝から晩までみっちり入試対策をしている。

 倍率が高いとは言え、正直僕らなら入学自体はそこまで難しくない。

 なんせ二歳の内からそういった勉強はしてきている。


 ただ、あの学園は入試時の成績が良く、魔王国内での家柄が良いと自分でクラスを選べるようになる。

 在籍するクラスを選べるだけで無く、クラスのメンバーも決める事が出来る。


 学園生活は最長で十二年と長くなる。

 その十二年を僕は楽しく過ごしたい。


 だから、クラスメンバーに拘りたい。

 面白い奴だけで構成する。


 そのために僕は今必死で勉強していた。

 ちなみにダフティは僕と同じクラスに入りたいから勉強を頑張っているようだ。


 楽しい学園ライフを夢見て勉強を頑張っているけども、辛いものは辛かった。


 部屋の隅でスヤスヤ寝ているフィラフトを見る。


 フィラフトは出会った頃に比べかなり大きくなった。

 身体を広げても一メートルも無かった小さなフィラフトは、今じゃ僕の身長を越し一メートル五十くらいはありそうだった。


 身体が大きくなっただけで無く、強くもなったと思う。

 魔法だけで無く、ブレスも使えるようになり炎を吐く様はもう立派なドラゴンだ。

 他にも腕を使った薙ぎ払いや、尻尾による不意打ち、それに突進と物理面でも強い。


 でもまだ小さな竜である事に変わりは無い。

 翼も未熟だし、角もまだ子供のままらしくちょこんと生えているくらいの角だった。


 いつかフィラフトが大きくなったら、フィラフトに乗って冒険とかしてみたいな。

 ダフティやスフィラ、フィラフトとそう喋っていた。


 フィラフトには三人を乗せられるくらい大きくなってほしい。


 フィラフトを見ていたら、更に勉強が手に着かなくなる。

 フィラフトに会い家を抜けるのを禁止され、習い事を不真面目にやっていたらスフィラが監視員として付き、この二年は僕にしては信じられないくらい真面目にやってきたと思う。


 そして最近は怒涛の入試対策。

 正直もう限界だった。


 息抜きは大事だと思うんだよね。


 チラっと窓を見る。

 先生は今トイレで居ない。


 ダフティとスフィラは勉強に集中している。

 フィラフトは寝ているし、そもそも監視員でもなんでも無い。


 僕らが最近勉強ばっかりで忙しいのを理解しているフィラフトは部屋の隅でずっと大人しくしている。


 抜けるなら今だね……。


 僕は音も立てずに窓に近づき、窓を開け放つ。

 この時点でダフティとスフィラに気付かれたが、気にせずに窓から脱走した。


 上からダフティの「兄様が逃走しました!」という声が聞こえる。

 これは追手が来る前に逃げなければ捕まってしまうだろう。


 身体を魔物化させて、肉体を強靭なものへ変化させる。

 重力に従うよりも壁を走った方が早いから、壁を垂直に走って下って行く。


 そのまま城壁を飛び越え、市街へと繰り出した。



—————



「とは言え何処に行くかなー」


 露店で買った串を頬張りながら街を練り歩く。

 こうやって街を歩くのも久しぶりだった。


 用が無ければ市街には来られないし、例え来られたとしても護衛が付く。

 なんだかんだで魔王の息子として丁重に扱われているから、こうやって一人で街を歩くなんて事はそれこそ家を抜け出さない限りは体験出来ない事だった。


 この国には色んな種族がいる。

 人間、魔物、エルフ、竜、亜人。


 色んな種族はいるが、この国は人間の形に習って造られているからほぼ人型しか居ない。


 この国は自然生成されたダンジョンを中心に、流れて来た人間を取り入れて発展した魔物と人間の住む国だ。

 元々住んでいたのは魔物であったが、人間を取り込むために施設が人用の大きさで造られた。

 その名残が今もある。


 そのお陰で人間と魔物を繋ぐ国としてこの国は成功したと言っても過言では無い。

 まぁ、中には「人間を優遇するな」と言う魔物がいるらしいけどね。


 それは置いといて、人型しか居ない国だから竜の姿のフィラフトは浮いてしまう。

 フィラフトとこの街を練り歩くのがちょっとした夢だったが厳しいだろう。


 フィラフトもその内、竜王様みたいに人型になれるようにならないかな。


「って、そうか、この国にはダンジョンがあるんだったね」


 何処に行くか悩んでいたが、行く場所が決まった。

 前と同じように森に行くのも考えたが、竜王様に行くのを禁止されている。

 あの森にはフィラフトの親を殺した強い魔物がいる。


 その点ダンジョンならば、階が浅い所であれば僕一人でも大丈夫だろう。


「ここから一番近いダンジョンは確か南にある……惑わしの鍾乳洞窟だったね」



—————



「えっ、ダンジョンに入れないの?」

「はい。こちらのダンジョンは冒険者ランクが8以上であるのが確認出来ないとお入れする事は出来ません。ですので、お引き取りください」

「そんなぁ……」


 ダンジョンに入ろうとしたが、入口に居た受付の人に止められる。


 盲点だった。

 ダンジョンに入るために制限があるなんて。


 まぁでも、考えてみたら当然ではあったね……。


 ダンジョンはモンスターで溢れている。

 そのダンジョン毎によってモンスターの強さは異なるが、冒険者を襲って来るという点では等しい。


 だから、そのダンジョンに通用する冒険者では無い者が入ったところで死ぬだけだ。


 この国はダンジョンで栄えているだけあって、その辺の管理は何処に行ってもしっかりやっているだろう。


 今から冒険者登録しても、今日中に8まで上げる事なんて出来ないだろうし、ダンジョンは諦めるしか無いかな。


 これじゃ何の為に家を抜け出して来たのか……。

 後で怒られる覚悟で来たのに、このままじゃ串を食べて帰るだけになってしまう。


「どうにかなったりしないですか?」

「そう言われましても……」


「冒険者ランクが届いていなくても入る方法とかは……」

「それでしたら、荷物持ち、サポーターとしてなら入れます。こちらは冒険者ランクが8でなくてもパーティーの荷物持ちなどの戦闘をしない補助でしたら入る事が出来ます」


「なるほど。ならそれで入りたいです」

「ですが、受け入れてくれるパーティーを貴方自身で探す必要があります……」

「どうにか見繕ってくれたりとかは……」

「冒険者ギルドならやってくれますが、ここでは出来ないです」


 受付のお姉さんは困ったように言う。

 お姉さんの尻尾も力なくユラユラ揺れていた。


 冒険者ギルドでマッチングしてくれるとは言え、登録もしていないし、今日中にどうにか見つかるもんなのかな……。


「おいおい、坊主。グリスちゃんを困らせるなよ」


 どうやってダンジョンに入るか考えていたら、大柄な男に声を掛けられた。

 大柄な男は、背中にこれまた大きな斧を携えた魔物的特徴の無い男、所謂人間の男だった。


「おじさんは?」

「俺はエクウスだ。冒険者ランク6のベテラン冒険者だぜ。というか、坊主。俺はまだ三十代だからおじさんじゃない」


 三十、か。

 魔物と違って人間は短命な種族だ。

 見た目の成長がとにかく早く、老いて行くのも早い。


 周りに人間が居ないからエクウスと名乗った人間が何歳なのか全く見当もつかなく、魔物基準だったら五十くらいに見えたからお世辞込みでおじさんと言った。


 でも、三十はおじさんで合っている気がするけど僕が疎いのかな。


「えっと、お兄さん?」

「首を捻りながら言うのやめろや。全く……で、坊主は何でグリスちゃんを困らせていたんだ?」


「このダンジョンに入りたくて、どうにかならないかなって」

「なるほどなぁ……。俺も子供の時はダンジョンに憧れていたし気持ちは分かるぜ。……だが、決まりは決まりだ。入りたいなら条件を満たしてからだな」

「そうするよ……」


 心の中では理解していた事を改めて人に言われ踏ん切りがついた。


 結局今日は何も出来なそうだし、街をブラブラ散歩するくらいにするかな。


「グリスお姉さん、迷惑を掛けてごめんなさい。条件満たしたらまた来ます」


 それだけ言い、僕はダンジョンを後にしようとした。

 だが、エクウスから声を掛けられた。


「待ちな、坊主。その心掛け気に入ったぜ。良かったら俺のパーティーの荷物持ちでもやるか?」


 まさかの提案だった。


 エクウスは白い歯を見せながらニカっと笑い、エクウスの指した方向には同じくニカっと笑うおじさんが二人居た。


「いいの? おじさ……お兄さん?」

「おう。今一気にお前を荷物持ちにしようっていう気持ちが削がれたが、聞かなかった事にしてやるよ」

「それじゃあ……」

「あぁ、良いぜ。一時的に俺達のパーティーの荷物持ちにしてやるよ」


 願っても無い事だった。

 荷物持ちとして認められたら、ダンジョンに入る事が出来る。


 戦闘はさせてもらえないだろうけども、ダンジョンがどのような物なのか見る事が出来るだけでも十分だ。


「ただな……」


 喜びかけたが、エクウスが何かを言いかける。


「条件がある」

「条件?」

「あぁ。ダンジョンは危険だ。俺達でお前を守るつもりだが、いざという時自分の身を守るのは自分だからな」


 エクウスの言う事はもっともだった。

 いくらダンジョンの入場制限を設けているこの国でも、毎年ダンジョンでの死傷者数は多い。


「俺にお前の強さを見せてみろ坊主。それで荷物持ちにするかどうか決めてやるよ」




ちなみにブラリ達が入試対策している間、

コウジとアズモは「小学校レベルの入試なら余裕だろうな」って遊んでます。



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