表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/177

五十九話 ブラリの昔話 きっと毎日が楽しいんだろうな3


「お前はなんてもんを持って帰ってきたのだ……」


 城に帰ると、腕を組んで激怒した顔を浮かべた父さんが門で待ち構えて居た。

 父さんは僕を見つけるや否や、一瞬で僕に迫り拳骨をお見舞いして来た。


 僕が痛みに悶えている中、父さんは「もっと魔王家だという自覚を持って節度のある行動をしろ」などと説教をして来たが、僕の後ろから小竜が僕の事を守るように出て来ると父さんは黙り込み、最後に「馬鹿者!!!」とご近所に響き渡るように叫んだ。


 そして今、僕と小竜は父さんの部屋に通され、ひたすら父さんが頭を抱える姿を見せられていた。


「考えが纏まらないなら出て良い? 僕お腹が空いちゃったよ」

「お前なあ……。まぁ、良いか何を言っても無駄だ、この後また呼んだ時にこってり絞るから今の内に腹を満たしておくのだな」

「ありがとう、父さんのそう言う所は好きだよ」

「全く、誰に似たのやら……」


 父さんは僕によく呆れるが、僕の事を理解してくれている。

 僕のワガママを寛容してくれた上で、しっかり意見を言ってくる。


 父さんは国を纏めているし、家族の事もちゃんと考えてくれる。

 素晴らしい父さんだ。

 僕も父さんみたいな王になれたら良いなと密かに目標にしている。


 小竜を連れて父さんの部屋を出た。


 食堂を目指し歩いて行く。

 小竜は僕の後ろをパタパタと飛んで付いて来ていた。


 食堂には、ダフティとスフィラが居た。

 ダフティが口周りを汚したのか、スフィラがダフティに注意しながら拭っていた。


 ダフティは僕に気付くと、食事中だと言うのに僕の元に駆けて来る。

 スフィラは少し溜息を吐いていた。


「兄様ー、遅いですよ! 食事は一緒にしようと約束したじゃないですか!」

「ごめんね、今日はちょっと色々あってね」

「色々? また遊びにでも行ったのですか? ダフティを置いて……」


 ダフティは僕にジーっと批難の目を向けて来る。


 ダフティは自分の事を名前で呼ぶ。

 この癖はマナーの先生に凄く注意されているらしいが、その内違う一人称が使えるようになるのだろうか。


「遊びじゃなくて修行だよ」

「習い事じゃなく一人でやるものなんて遊びと同じです! ダフティも連れて行ってくださいー!」

「危ないからダフティは駄目だよ」

「もおおおお! 兄様の馬鹿ああ!」


 ダフティが僕の事をポコポコ殴ってくる。

 ダフティも習い事で武道を嗜んでいるから少し痛い。


「ギャウー!」


 僕がポコポコされていると、城の中をパタパタ飛びながら物珍しそうに見ていた小竜がやって来て前に出て来る。


「わ、この子は!?」


 ダフティが小竜に威嚇されて驚く。

スフィラも何が起こったのかと僕達の元にやって来た。


「この子は竜だね。今日拾ってきたんだ」


 ダフティは僕の説明を聞いても衝撃が凄いのが固まったままだ。

 スフィラがそんなダフティを心配に思い少し揺らし始める。


「か……」

「か、ですか?」


「可愛いですー!!!」



 城中に響き渡るような大声だった。

 至近距離で聞いていた僕とスフィラは思わず耳を抑えた。


「なんですか、この可愛い生き物!? そうですか、竜ですか! 時々竜王様がお城に訪れますけど全然違いますね! 竜って皆厳つい顔をしているのかと思っていました! 小さい竜ってこんなに可愛いのですね!!」


 ダフティは小竜に抱き着き、頬擦りをする。

 小竜は嫌がるかと思ったが、ギャウギャウ言いながらダフティを受け入れていた。


 小竜は家族を亡くしたばかりだし、そういう愛情表現に飢えていたのかもしれない。


「程々にしてあげてね……」


 とは言え、心配だったので声は掛けた。


 そんな小竜とダフティをほっとき食卓に着く。

 今日の晩御飯も豪華な物だった。


 毎日こんな物を食べていたら感覚がおかしくなりそうだと、子供ながらに思う。


「ブラリ様、今日も抜け出したのですね。魔法の先生がいじけていましたよ」

「うん、もう魔法も良いかなーって思ってね」

「先生が言っていましたよ。ブラリ様は物覚えが良く、才能もあるから勿体ないと」

「僕をおだてても意味無いよって先生に伝えといてよ」


 ダフティと小竜がじゃれ合うのを横目に見ながら夕食を取る。

 スフィラからダフティが今日はどんな事をやったのか話を聞いていると、面白い話があった。


「へー、ダフティが闘技の先生から一本取ったんだ」

「はい。私も近くで見ていましたが、ダフティ様は確実に強くなっています」

「小竜とあんな風になっているダフティがね……」


 闘技の先生は少し……いや、かなり気難しい先生だ。

 魔王である父さんの近衛隊。

 そこで隊長を務めているプロスパス隊長が僕らの闘技と剣技の先生をしてくれている。


 プロスパスは何も言わない。

 毎日、拳か剣を構えて三時間の打ち合いをするのみだ。


 実践で自分の動きから何かを盗めという事なのだろう。

 ただ単に口下手なだけなのかもしれないが、僕はあの時間が好きだ。

 無心でずっと身体を動かす事が出来る。


 プロスパスは強い。

 父さんお抱えの近衛隊隊長を務める男だから当然ではあるが。


 いつも僕達に合わせた打ち合いをしてくれているが、ちっとも攻撃は当たらないし、プロスパスの攻撃は避けられない。

 攻撃と言っても寸止めされるから痛くはない。


 そんな男から、あのダフティが一本取るとは……。

 僕も負けていられないね。


 既に三回プロスパスに攻撃を当てた事はあるけど、うかうかしていたらダフティにプロスパスに攻撃を当てた回数で負けてしまう。


 明日早速一本取ってやろう。

 正面から挑んでも適わないから、何か搦め手を考えておかないと。


 明日の事を考えていると、父さんが食堂にやって来る。


「ブラリ時間だ、小竜を連れて俺の部屋に戻れ。竜王様にお越しいただいたからなるべく直ぐに来るのだ」


 どうやら、小竜の処遇が決まったらしい。

 それに竜王様もやって来たと……。


 どう転ぶかは分からないけど、例え駄目だったとしても僕の部屋で父さん達に内緒で匿おう。


 僕は急いで食事を終え、ダフティと遊んでいる小竜捕まえて父さんの部屋へ向かった。



小竜を取られたダフティ「兄様の馬鹿あああ!!(猛追)」

それを見たスフィラ(私が止めなければ)

ブラリ(なんか二人共ついて来るね…)


よければブックマーク、評価、感想、いいねお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ