四十九話 「あたしの作戦は完璧」
「昨日凄かったね! ディスティア先生とパーフェクト先生があの天災竜をバキ! ドカ! バーン! って、圧倒していたね!」
「パーフェクト先生ってあんなに強かったんだね。正直不審者感が強くて夢でも見ている感じだったよ」
登校すると、興奮した様子のマニタリとムニミィメムリに捕まった。
翌日の十五組は、昨日体験したエクセレ襲撃事件で話題は持ち切りだった。
オミムリも衝撃は大きかったが、エクセレの方がクラスメイトの驚き度合いはデカかったらしい。
教室に襲撃してきた時はひたすら圧倒していたエクセレが、ディスティアとパーフェクト先生もといテリオのコンビネーションで一方的にやられていたから印象に残るのも頷ける。
「それでそれで、あの後どうなったの! 僕なんか気づいたらベッドの上にいて!」
「何故か私達は保健室に居たから分からないけど、アズモちゃんは居なかったもんね。何か知っている?」
どこまで言って良い物か。
昨日、ディスティアとテリオ、ラフティリ、俺、アズモの五人で色々喋っていたが、そこら辺を喋るのを忘れていた。
普通に家族としての会話を楽しんでしまっていた。
ここで色々考えて言った所で、ラフティリがペラペラ喋りそうだしな……。
ラフティリの知らない最後に現れた長身の男は避けて言っておくか。
「ディスティア先生とパーフェクト先生の二人で、エクセレをギリギリの所まで追い詰めたけど、結局逃げられたな」
「かー! そこら辺は流石天災竜って感じだね!」
「あの二人でも捉えられないって、そりゃいつまで経っても捕まらないわよねー」
尚も色々聞いて来る二人を相手していると、教室の扉が開きブラリが入って来た。
自席でボーっとしていたラフティリが勢いよく立ち上がり、良からぬ事を言いだしたのでチョップして黙らせた。
ブラリが不思議そうに俺達を見ているが、やがて何かに気付いたようにハッとする。
「そう言えば対抗戦の対策出来てないね!」
そうわざとらしく言った。
昨日色々あったから何か言って来るかと思ったが、それ以上に対抗戦の事だった。
ブラリの性格上、本当はマニタリとムニミィメムリのように根掘り葉掘り聞きたいはずだ。
だが、それをしてこないという事は昨日異形化を使いかけた事に触れてほしくないのかもしれない。
「あー。そういやそうだったな。作戦とかも白紙なのか?」
誰にも触れてほしくない事の一つや二つはある。
俺だってまだ、自分の事をクラスメイトに告げられていない。
だから、ブラリの話に乗ってやった。
「作戦、あたしが良いのを考えたわ!」
俺に非難の目を向けていたラフティリだったが作戦という言葉を聞くと、目を輝かせる。
「へー、ラフティーちゃんはどんな凄い作戦を考えたの?」
「皆で敵地に突っ込んで行くっていう作戦よ! あたし達が集まったら勝てない相手はいないわ!」
—————
「絶対あたしの作戦は完璧なのに……」
放課後、対抗戦メンバーで机を囲み次の相手にどう戦っていくかを話し合っていた。
今朝ラフティリが出した作戦と呼ぶのもおこがましい脳筋戦法はブラリに笑顔で却下されたのは言うまでもないが、ラフティリは不服そうだった。
「まあ正直僕も、アズモちゃんとラフティーちゃんの二人が居たら戦闘では負けないと思うけど念には念をね。勿論、戦闘は任せたよ」
「しょうがないわね!」
ぶー垂れていたラフティリがブラリのフォローで元気になる。
なんだかんだこの二人は仲が良い。
ブラリがラフティリの扱い方を良く知っている。
「スフィラ、例の物の用意は大丈夫?」
「勿論です」
「流石だね」
ブラリが優秀な従者ことスフィラにそう言うと、スフィラは何処かからか四角い機械を取り出して机の上に置いた。
「それは?」
「プロジェクターです」
気になってスフィラに聞くとそう返って来た。
プロジェクター……まぁ、寮にテレビがあるくらいだしプロジェクターがこの世界にあるって事に驚きはしないが、六歳児がそれをせっせとセッティングしている姿にはツッコミを入れたい気持ちになった。
「放送部の方に掛け合って八組対五組の対抗戦ハイライトを譲ってもらいました。そこから更に五組の活躍に焦点を当て編集してきました」
この六歳児怖いな。
戦闘で強いという訳ではないが、底知れぬ怖さがある。
「ここからは映像付きで説明します。気になる点があればおっしゃってください。適宜対応します」
「ありがとう、じゃあ頼むよ」
「はい」
暗くした教室の黒板に映像が映し出される。
最初は四人の全身写真が出て来た。
二人には見覚えがある。
「前回の対抗戦で八組から出場したのはこの四名です。順に、テウさん、フールさん、ミリャさん、ポキさんとなります」
テウとフールは知っている。
ブラリの思いつきで八組に殴り込みに行った時に出て来た二人だ。
フールは保育園も一緒だったので、更に交流がある。
一度俺に負けてから、ほぼ毎日のように喧嘩を挑んで来た負けず嫌いだ。
惚れっぽい所もあり苦労した事を本当によく覚えている。
「この中で特に気を付けなければならないのは、フールさんです」
「フールを?」
俺は嫌そうな顔を作る。
何度も戦ったがフールには負けた事がない。
対抗戦で協力されたらどうなるかは分からないが、今まで通りにやればまず負ける事がない。
「はい。フールさんは空から爆発物を降らしてきます。これをご覧ください」
新しい映像が出て来る。
ミリャと呼ばれた子が、森林ステージの木からリンゴみたいな果実を取っている映像とそれを空中から降らせるフールの映像だ。
落ちた果実は漏れなく中規模程度の爆発を起こし、五組の生徒を容赦なく脱落させていた。
「森林ステージには爆発物があったんだ」
ムニミィメムリが楽しそうな表情をする。
ムニミーは授業中に気付いたら爆発している事が多々ある研究大好きな危ない子だ。
「いえ。これはミリャさんの特殊な魔法か何かです。森林ステージに実の生っている木はありません。彼女が木に手を触れると果実が出来ていました」
スフィラは映像を変え、ミリャが木に手を触れている所を出す。
スフィラの言う通り、普通の木に果実が実っていく。
「爆発する果実かぁ~」
今度はマニタリが楽しそうな表情をする。
マニタリは授業中にキノコをよく机から生やしている同じく危ない子だ。
十四組との対抗戦では、マニタリの尽力があり見学者の度肝を抜いた。
「八組にはもう一つ厄介なコンビがあります」
映像が再び変わる。
テウが五組の子と戦っている映像だった。
テウは小さい身体を上手く使い俊敏に動く。
五組の子はテウに対応出来ずに翻弄されていた。
隙を見てテウが五組の子を掴み上空に放り投げる。
そこにフールが現れ、五組の子は何も出来ずに消えていった。
「なるほどね。あの日、テウ君が言っていたのはこれか。僕達の真似をしていたんだね」
「はい。なので、このコンビにも注意が必要だと思います。他にもポキさんが居ますが、この方は最後まで残っていたものの目ぼしい活躍をしていなかったので、当日は違う方が出場されるかもしれません」
スフィラの話が終わると、ブラリが少し考え込む。
「どう勝つのが、一番面白いか……」
前回の対抗戦はスピード勝負だった。
ブラリが早く決めきるのが一番華麗な戦い方だと言い、実際にその通りにしたら見物客が沸き上がった。
ブラリはどうもエンタメを意識している節がある。
「よし、決めた。相手の土俵で戦おうよ。相手のやる事を全部僕達で超えたら面白いよね」
ブラリは対抗戦で勝ち方に拘っている。
もっと真摯に取り組めよ、と思わんでも無いが俺はブラリの作戦が好きだ。
「絶対面白いな」
俺はブラリの作戦に乗った。
「だからそうだね。次の出場メンバーは、僕、アズモちゃん、ラフティーちゃん……そしてムニミーちゃんでいこう。爆発合戦だ」
マニタリ「僕は……!?」
ブラリ「相手がキノコ使いだったら活躍してもらいたかったんだけどね」
マニタリ「くぅ……果実は食べ物なのに!」
ブラリ「キノコも食べ物だよ」
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次回は対抗戦です。




