四十八話 「可愛いからってなんでも許されると思うなよ」
感謝の三投稿目です。
順番間違いなきようお気をつけください。
「えっ、ディスティアとパーフェクトってあたしの叔父さんと叔母さんだったの!?」
引き続き竜王ネスティマス家の学園メンバーで話をしていると、ラフティリが驚きの声を上げた。
「なんで、俺とアズモの件の時より驚いてんだよ」
「アズモ達には分からないでしょうけど、学園にあたしの叔父叔母が三人もいるのよ! 驚くに決まっているじゃない!」
そういうもんなのか……?
アズモのこの身体に、俺が憑依しているって事をラフティリに打ち明けた。
ラフティリは初め全く理解が出来ていなかったが、テリオが手伝ってくれどうにか苦労しながらも理解してもらう事が出来た。
まだ、俺が元人間だっていう事は打ち明けていないが、
この俺とアズモの事情は叔父叔母三人の衝撃に負けたのか。
「いや待て、自分の事をパーフェクトとか名乗っていたテリオはまだしも、私はディスティア・ネスティマスとちゃんと名乗っていただろう」
「聞いて無かったわ!」
「可愛いからってなんでも許されると思うなよ。授業はちゃんと受けろ、悪ガキ」
俺の記憶が正しかったら、「ディスティア」って所までしか名乗って無かったと思うんだが。
だいたいファミリーネームまでちゃんと名乗っていたら、クラスの連中、主にブラリが興奮して大はしゃぎするはずだ。
それが無かったから、絶対名乗って無かったと思う。
とは言え、ラフティリは授業中寝ている事が多いので、言っていた所で感は否めない。
そして、俺にも聞きたい事がある。
「どうしてテリオ兄さんは、パーフェクト・カンペキなんて偽名を使っているの?」
パーフェクト。完璧。
日本人の俺からしたら、頭が頭痛で痛いって言われているようなもんだ。
そのくらいの違和感があるし、何よりもワードチョイスが飛びぬけている。
「あぁ、この名前はね父さんからコウジ君の世界の話を聞いた時に知ってさ、カッコイイなって思って使っているよ」
「えぇ……」
なんだろうな。確かにパーフェクトも完璧も良い言葉だ。
良い言葉だが、海外の人が日本語の意味を知らずにカッコよさだけでやばい日本語がプリントされているのを目撃した日本人の気持ちを異世界で味わっている。
しかもこの人はそれを名前でやっているんだよな。
本人が気に入ってそうだし、何も言わないでおくけども……。
「そろそろ真面目な話をしようか。エクセレの所属している団体は現時点で、世界渡り、私達に悟られないレベルの変身、魂の受け渡しの三つが可能……怖いね」
そうだ。今目の前にある問題はそれだ。
「あぁ……。エクセレの足取りがあまりにも見つからないから、どこかで匿われているとは思っていた。クソ、私等はエクセレだけでなく、エクセレに繋がっている組織も逃しちまったのか!」
ディスティアが悔しそうに、自分の膝を打ちながら言う。
「そうでもないかもしれないよ。この学園にはアズモちゃん達の学年に内通者がまだいるかもしれないって話はしたよね。私はその可能性が高いと思っているさ」
「そうか? オミムリが変身した姿だと思うがな。あいつの変身は気持ち悪いくらいに完成度が高い」
気付けなかった負い目からだろうか、ディスティアは膝に置いた腕を振るわせる。
「うん。だけど、オミムリが言っていたのだろう。アズモちゃんの身体にコウジ君を入れたと」
「そうか、入学式の日に見られた内通者はエクセレの背に乗ってどこかに消えたとフィドロクアが言っていたな……!」
「ディスティアちゃんは、あのエクセレが人間の精神をアズモちゃんの身体に入れた者を嫌わないと思う?」
「殺したい程憎いだろうなぁ! そんな奴を背に乗せる訳がねぇ!」
「これで当座の目標が決まったね」
「あぁ、内通者探しだ。逃さないように慎重にやらなきゃな」
内通者探し。
その言葉に俺は行きついた事がある。
そして自分なりの答えを導き出した。
「あの、俺……誰が内通者かを考えた事があります」
これからの事を話し会っていた兄姉の会話に混ざる。
「ほぅ……。今はどんな情報でも欲しい、遠慮せず全部言え」
俺は、寮のベッドの上でアズモに聞かせた推察を全部言った。
エクセレを使って俺を襲わせた事から内通者は人間嫌いであろう事。
ダフティから聞いたブラリが昔経験したエピソード。
ブラリが怪しいと思っていた事。
「ブラリは絶対違うわ!」
俺の話が終わると、ずっと黙っていたラフティリがそう言った。
「あいつはエクセレが来た時、いつもの何考えているか分からないヘラヘラした気持ち悪い顔をやめて、あたし達の中で一人だけあの戦いに突っ込んで行った馬鹿よ! あたしには難しい事は分からないけど、ブラリが違うって事は分かるわ!」
そうだ。
あの時ブラリはいつもなら決して見せない表情をしてエクセレとディスティアの戦いに割り込もうとしていた。
そんなブラリが、内通者であるとは考えにくい。
「だな。ブラリは違うと私も思う。あいつは私等の戦いに入って来た時、あろう事か異形化を使おうとしていた」
「ブラリ君が異形化……」
テリオ兄さんの驚く声が聞こえる。
それには俺も同じ反応だった。
異形化。
俺達みたいな魔物が使える能力の内の一つ。
身体の形を歪めて、理性を飛ばし気が済むまで本能に従い暴れる力だ。
だが、異形化はエクセレみたく特定の行動をされるか、自分もしくは大事な者の生命に危機が迫ると発動してしまうものだと聞いた。
「異形化を任意で使う事って出来るんですか……?」
だから、俺は思わず聞いた。
俺の問いにディスティアが答える。
「普通は出来ない。普通は出来ないが、極稀に出来ちまう奴がいる。自分を見失わない程、大事な物がある奴なら出来ない事もない」
「そうなんですね……」
いつも飄々としているブラリが守りたい物か。
皆目見当もつかないが、あの日召喚の授業に持ってきた物が関わっているような気がした。
「きっとあいつにも色々思う所があったんだろうな。詳しくは聞かないでやれ。ただ注意して見とけよ、異形化は身体にのしかかる負荷が凄まじいからな」
「分かりました」
ブラリが異形化を使わないで済むように気を付ける。
今回みたいな事が起きなければ使う事なんて無い力だとは思うが一応。
「でも、コウジ君の言う、人間嫌いが内通者って考察は面白いね」
「それは私も同意だ。気が合う奴じゃなきゃ背中に乗せようなんて全く思わないが普通だ。邪魔だからな。あのエクセレと気が合う奴ってなったら必然的にそうなる」
アズモと同じように、テリオとディスティアが俺の考えに同調してくれる。
この強者二人に賛同してもらえて、少しホッとした。
「さて、家族団欒はここまでにしようか」
テリオが俺とラフティリの肩から手を放し、ポンと打つ。
「アズモちゃん達のクラス対抗戦が近いからね。こういう事は私達に任せて学生は学生らしく勉学に励もう」
「むぇー……」
テリオに見られながら言われたラフティリが泣きごとというか、泣き声を漏らす。
「良いかい、二人共。ここで話した事は他言無用さ。二人は普段通り、学園生活を送るのだよ。ただ、少しでも怪しい子が居たら遠慮せずに言ってくれたまえ。抱え込んで疑心暗鬼になるより良いからさ」
「はい」
「分かったわ!」
テリオの言葉に俺とラフティリが返答する。
解散の流れだったが、やはり家族の会話が出来る時間が名残惜しく少し喋った。
暗くなって来たので「流石にそろそろ帰れ」とディスティアに言われラスティリと一緒に帰った。
テリオとディスティアが残った部屋で会話が行われる。
「さて、今一番怪しい存在が決まったね」
「あぁ、どうする? さっさと捕まえるか?」
「いや、泳がしておこう。団体と接触した段階で一網打尽さ」
テリオの言葉にディスティアが獰猛な笑みを浮かべる。
「兄貴のそういう所は好きだぜ、私は」
「取り逃がした分は働くよ。それに……」
「……姉妹をこんな目に遭わせている奴をぶちのめさなきゃ気が済まないさ」
怪しく目を光らせたテリオがディスティアに勝るとも劣らない笑みを浮かべる。
ネスティマス家の特徴として、一つこんな通説がある。
曰く、一族は例外なく好戦的、手を出したら最後己の身は無い物だと思え。
~翌日の十五組~
ラフティリ「何があってもあたし達は味方よ!」
ブラリ「うん?」
コウジ「やめい」
前話で感謝の気持ちを爆発させたら、
なんとptを入れてもらえ、ブクマも増え、感想を頂けるという。
心が温まり過ぎて爆発しました。
ありがとうございます。
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ありがとうございます、よろしくお願いします。




