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四十一話 「お、お前は!」

「頼もうー!」

「邪魔するわ!」

「へぇー、八組ってこうなっているんだね~」


 ブラリとラフティリを先頭に皆でゾロゾロと八組のクラスに入り込む。

 八組は今度のクラス対抗戦の相手だ。


 五組を破って、現在五位に名を収める八組は強いだろう。

 この学園では入試時での結果を元に優秀な者が上に来るように振り分けられる。

 八組は自分達よりも三クラス分優秀な奴らを相手に戦って勝ったクラスとなる。


 ブラリがこの前シレっと「十五組には問題児が集まった」と言っていたが、普通はそんな振り分けられ方だ。


「ねえねえ君、このクラスで強いのって誰?」

「ひ……」


 ブラリが扉の近くに座っている大人しそうな子に話しかける。

 話しかけられた子は怖がって委縮してしまう。

 これはいけないと思い、静止に入る。


「待て待て、怖がらせるなってブラリ。あ、ごめんね。いきなり話しかけちゃって」

「い、いえ……」

「ただ聞いただけなんだけどなー」


 ブラリはどこ吹く風だ。

 怖がらせるつもりは無かったのだろう。


「まどろっこしいわ! このクラスで一番強いやつ! 出てきなさい!」


 ラフティリが耐えきれずにそう叫んだ。

 普段から相手の事など考えずに、直球で喋る子だとは思っていたがここまでする子だとは思わなかった。


 八組がラフティリの剣幕を受け静寂に包まれる。

 俺は一人、溜息を吐いていた。


 ブラリが「敵情視察しに行こうよ!」と言い出した時から悪い気はしていた。

 十五組の皆は誰も反対する事なく、寧ろ乗り気でブラリに賛同した。

 授業も始まるし、放課後にしようぜ? という俺の言葉は誰にも響かなかった。


 敵地に侵入して強い奴を呼ぶ。

 やっている事は新手の道場破りなんだよな……。


 静寂を破ったのは、ベランダの窓を開ける音だった。

 全体的にミニマムサイズの男子が開いた窓から飛び込んでくる。


「一番強いのは俺だぁ! このクラスのリーダーをやっているぜ!」


 そいつは宣言しながらブラリの前に立つが、見えない。

 俺より少し大きい程度のブラリの身体に全身が隠れている。


 どんな奴が来たのか気になり、立ち位置を変えた。

 頭に獣耳を生やし、口からは八重歯を覗かせたちんまりした男子だった。


「へぇ、君が八組のリーダーか。名前は?」

「テウだ!」


 表情は見えないので分からないが、ブラリが楽しそうな声を出す。

 これは相手を値踏みする時のブラリの癖だ。俺も初対面でやられた。


 ブラリの前に立った男子は臆する事無く喋り出す。


「ブラリさん……俺感動したっす!」

「へぇ……え、感動?」

「はい!!!」


 斜め上の解答だった。

 身体の割には大きな尻尾を振り回しながらその男子は捲し立てる。


「前回の十五組の対抗戦観戦していました! あの見事な戦い、全部ブラリさんの作戦だったと聞いて感動しました! あの索敵、カチあげ、空中戦……全部、完璧でしたよ! 俺感動して感動して! ブラリさんの足元にも及ばないですが、俺も作戦を練ってみたら五組に勝てました! ありがとうございます! 馬鹿デカイキノコを出す術とか無かったし、空中で機動力のある奴も一人しかいないので——」


「分かった。分かったから」

「はい!!!!」


 ブラリは尚も捲し立てそうなのを予感しテウを黙らせた。


「でも、お前小さいし弱そうね」


 またもラフティリが直球を飛ばす。

 俺はひたすらハラハラしながら眺めていた。


「はい、俺はちっちゃいです! 俺の父も母も婆ちゃんも爺ちゃんも皆ちっちゃいです! だけど俺は強いっす!」

「ふーん、本当かしら?」

「なんなら今から模擬戦をやってみますか!」

「いいじゃない! 望む所よ!」


 二人の間に、バチバチと火花が散る。

 今にも喧嘩が開始されそうな雰囲気が漂いだす。


「だけど、戦う相手は俺じゃないっす! 出てこいフール!」

「うん、フール?」


 テウの呼んだ名には聞き覚えがあった。

 テウの言葉にビクッとした奴が居たのでそちらに視線を飛ばすと、見た事のある奴がいた。


 そいつは若干気まずそうにしながら俺達の前に出て来る。


「よ、よお、久しぶりだな。アズモ」


「お、お前は! 保育園の時に、スフロアに固執するものの全く相手にされず、スフロアと仲良くし出した俺を男だと勘違いして『このままじゃ、スフロアを取られてしまう!』と焦った結果俺に無茶苦茶な理由で喧嘩を挑んで来たのは良い物の、結果は惨敗。その後、度々俺に勝負を挑むものの全部勝てず、挙句の果てに俺に告白してきて玉砕した……あのフール!?」


「お、おう、そのフールだぜ……」

「うわ……」

「うわぁ……」

「アズモちゃん……」


 クラスメイトにドン引きされるが知らん。

 こいつには保育園の時、もの凄く苦労させられた。

 事あるごとに勝負を挑んで来たこいつに。


 何度勝っても懲りずに戦いを挑んで来た、物語の主人公みたいな奴。

 ただ、こいつはアズモの性別を勘違いして勝負して来た事もあり、アズモにめちゃくちゃ嫌われている。


 こいつが、戦いを挑んで来た後に毎回ブーブー言い出すアズモを何度落ち着かせた事か。

 おまけに、「俺、実はアズモちゃんの事が好きで……」と言って来た時には流石の俺もドン引きしたし、鳥肌が立った。


「え、えーっと、何があったか知らないっすけど、フールは八組の空中戦を担当する切り札っす! 昔は知らないっすけど、今は凄く頼りになるやつっす!」

「ありがとう、テウ……。俺は一生あんたに着いて行くぜ……」


 フールが瞳から一筋の汗を流しながら、テウに抱き着く。


「なんか興が醒めたし、戦いは良いわ……」


 ラフティリは珍しく萎えたようで、それだけ言うとクラスに帰ってしまった。


「ラフティーが帰っちゃったし、代わりに俺と模擬るかフール。ほら、俺と戦うの好きだろ?」

「はい……」


 ニコニコしながら提案をすると、力無い返事が返って来た。

 ベランダから出て直ぐの場所にある中庭で軽く模擬戦をして俺も帰った。



—————



「アズモちゃん、何してんのねえ」


 クラスに帰り真面目に授業を受け、放課後。

 ブラリが真顔でそう言ってきた。


「あいつとは因縁があるんだ」

「それはそうだったのかもしれないけどさぁ。見てほらラフティーちゃんを。あのラフティーちゃんが今日は一日中居眠りをせずに真面目に授業を受けてたんだよ。あんな微妙な顔をしたままさ」

「知るか。良い事だろ」


 授業を真面目に受ける事は良い事だ。

 このクラスではそうじゃない奴が多すぎて真面目に受ける奴が浮いてしまうが良い事なのだ。

 流石問題児が集められただけの事はある。


「そうだけどさあー。うーん、まあやる気を出させるのもリーダーの務めか……」


 俺がいつもブラリに対して向けている表情を、ブラリが俺に向けて来た。

 少し癪に障るが、まあ感情の趣くままにやり過ぎた感は否めない。


 結局あの模擬戦も、三回戦まで伸ばしてストレート勝ちで回りをドン引きさせたからな……。


「よし、クラス対抗戦会議をしようよ! 今回は新しい魔法として召喚魔法も使えるようになったし、流石の僕でも作戦練るのは難しいだろうなあ!」

「……っ! あたしがやるわ!!!」


「あーそうだ、召喚される眷属達の強さも知っておかないとなあ!」

「ラフタロウは強いわ!!」


「修練場を借りられたら色々する事も出来るなあ!」

「あたしが許可を取ってくるわ!!!」


 ラフティリはさっきまで沈んでいたのが嘘のように駆けて行った。

 ブラリはそれを見て軽くガッツポーズをする。


 こいつやりおる。シレっと働かしにも行かせやがった。


「まあ、許可はもう取ってあるんだけどね」


 ブラリは舌を出しながらとんでもない事を言った。

 感心をしていたが、やはりいたずらっ子である子には変わりが無かったようだ。


「さーてと、先に僕らで修練場に行ってラフティーちゃんを笑顔で出迎えよっかー」



パーフェクト先生「修練場の使用許可? それはもうブラリ君に言われたから出しているさ」

ラフティリ「ハメられた!!!!」



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