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三十八話 「ラフタロウと名付けるわ!」


「全員下級精霊を出せた事だし、ここからはお待ちかねタイムに突入するか。まぁ、アズモは下級精霊出せてなかったけど特別な」


 ディスティアの台詞に皆が「わーい」と子供らしい喜び方をする。


 俺が中級精霊を呼んだのが特例という形で許される事が無かったら、クラスメイトにどんな反応をされたのか。

 考えるのは良そう……こうなって良かったと思うだけで留めておくか。


 にしても、本当に魔法を唱える事が出来ない。

 原因が翻訳機に頼りっぱなしな事なのは分かるが、新しい言語を覚える事って難しいんだよなぁ。


 これじゃ実戦で使えないし、今から始まる特別授業も怪しい。


「触媒を元に召喚するって事だが、私の授業では魔法陣を使う。魔法陣の中央に持ってきた物を置いて魔力を注げ」

「わーい」


 呪文を唱える必要が無さそうで思わず子供みたいなはしゃぎ方をした。



—————



 魔法陣の準備が終わった。

 大きな円の内側に書かれた何と読むのかちっとも分からない言語が羅列され、付近には台座が設置された。


「あれだ。スカ……所謂何も召喚出来ないって事がある、というかだいたいがそうだ。そこら辺にある物で召喚成功出来てしまう程社会は甘くないからな。自分が召喚したい者と何らかの繋がりがある奴を使えば成功率は上がるぞ」


「「「「「はーい」」」」」


「さて、ここで注意しておいて欲しいんだが、触媒に使った物は消える。誰かからの貰い物とか、形見とか大事な物を触媒に使おうとしている奴は今一度よく考えてから臨め」


「「「「「はーい」」」」」


「じゃあ準備出来た奴から前に出ろ」

「あたしが一番ね!」


 ラフティリが懐から水色の塊を取り出しながら、我先にと向かっていく。

 ディスティアはその塊を見ると僅かに顔を顰める。


「一応聞くが、お前は何を持って来たんだ……?」

「パパの鱗よ!」

「ふー……」


 それを聞いたディスティアは、右手を顔に当て空を仰ぐ。


 ラフティリの父親は、アズモの兄であるフィドロクア。

 竜王の息子で、自身も名を馳せるフィドロクアの鱗はさぞかし召喚の触媒としては良い物であるだろう。


 しかし、倫理的にそれはどうなんだ。


「それは本当に触媒に使っていい物なのか? フィドロクアは何と言っていた?」

「パパは路銀に困ったら売れってあたしに持たせたわ!」

「それならギリ良いか……?」


 ディスティアはひたすら困惑していた。

 娘に自分の鱗を授ける父親と、それを召喚の触媒にしようとする娘と、それを聞く叔母。

 なんと叔母はアズモも含めたらこの場に二人もいる。


『あいつやばいな……。私だったら父上の鱗は家宝にする』


 叔母の内一人は難色を示す。

 俺もアズモと同じ考えだ。


 ディスティアと俺達の何とも言えない気持ちを余所に、ラフティリは笑顔で魔法陣の中央に鱗を置く。


「……よし、それじゃあここに来て魔力を注げ」


 ディスティアが魔法陣の正面に設置された台座をぽんぽんと叩き、ラフティリがその台座に手をかざす。


「えーい、なんか出なさーい!!!」


 ラフティリが魔力を注ぐと、魔法陣に光が灯る。

 光は段々と強くなっていき、円の中央から青い煙がモクモクと巻き上がる。


 煙が晴れると、小魚が現れた。

 フィドロクアが引き連れているあの魚と瓜二つの。


「やった、成功したわー!」

「あの馬鹿、こうやってあの魚の大群を作っていたのかよ……」


 喜ぶラフティリと、額を抑えるディスティア。

 対照的だった。勿論俺もディスティアと同じポーズをしている。


「ほら、出て来た奴のどこでも良いから触れて、もう一度魔力を流せ。それで今後も召喚出来るようになる」


 葛藤が色々と生まれたものの、無事召喚の儀を終えたラフティリが戻って来る。


「パパの命名の仕方に習って、ラフタロウと名付けるわ!」


『こいつやばいな……。私達が召喚した奴にアズタロウとか名前付けたら、コウジでも許さんからな私は』

 やめろ、俺がそんな名前を付けるわけがないだろ。



「あー……、気を取り直して次に召喚したい奴いるか」

「はい!!」

「はーい!」

「はいはいはーい!」

「じゃあそこの両手を上げてバンザイしている奴」

「やったー! 僕の番だね! マジカルキノコを召喚するから皆見ていてね!」


 次はマニタリが選ばれた。

 手には金色に光る粉末を詰めたタッパーが見える。


「お前は……対抗戦で凄い魔法を使っていたキノコ娘か。となると、触媒も」

「菌糸です!」

「今まで菌糸を触媒にする奴は見た事が無いから少し楽しみだ」

「えへー、見ていてくださいよ! 完璧に召喚しますから!」


 さっきラフティリがやっていたように、マニタリは召喚の儀を行う。

 今度は茶色の煙が舞う。


 しかし、煙が晴れてもそこには何も居なかった。


「……スカだな」

「うそおぉぉおおおお!!!」


 悲痛な叫びだった。


 その後、ムニミィメムリやスフィラ、クラスメイトの面々が続くが誰一人成功しない。


「お前ら落胆しているが召喚ってこんなもんだからな、慣れろ。とは言え、そろそろ空気を変えたいわな。よし、アズモ来い」


 ディスティアに指名され、俺はキンディノスフラワーの球根を抱えながら前に出る。


 やっと、こいつの出番か。

 本当に大きな球根だから、登校から今まで大変だった。


 あの化け花がどんな姿が出て来るか……。


「さて、本命だな」

「はい……」


「そのなんちゃらフラワーは、実家の近くの山の主だったもんな。あの親父から漏れだす濃密な魔素を吸って育ったからそりゃ強い。お前が心配するのも分かる。だが、私の方が圧倒的に強い。万が一は起こらないから安心しろ」


「はい!」


 ディスティアに勇気づけられた俺は魔法陣の中央に球根を下ろし、台座に向かう。


 心臓のドキドキする音がずっと聞こえる。

 何が出て来るか。


 緊張しながら魔力を注ぐ。

 暫く魔力を注ぐと、やがて魔法陣に光が灯る。

 光は外周から一番内側の円まで、様々な光を発しながら灯っていく。


『ガチャの演出みたいだ』

 おい馬鹿やめろ。それにしか見えなくなる。


 魔法陣の中央から白い煙が出て来る。

 俺は、その煙が晴れるのをハラハラしながら見守った。


 煙が晴れて出て来たのは、白色で四足歩行の獣。

 あの球根を触媒にしたには小さ過ぎるそいつは頭上に耳を生やし、伏せながら前足をベロベロ舐めた。


「ほら、速く接続しろ」

「あ、はい。お手」

『そいつはお手って言っても反応しないだろ』


 アズモはそう言うが、それに反し白色の獣は差し出した手に前足を重ねる。

 魔力を流したら、何かが流れ込んで来た気がした。


「成功したな。よし、戻った戻った」


 俺は球根の代わりに、白色の獣を抱えながら戻る。

 戻ると、クラスメイトが「可愛いー!」と言いながら囲んで来た。


 囲まれた白い獣は、持ち上げられた方向に身体を伸ばしながら吞気に欠伸をする。


 俺はこいつを知っている。

 こいつ単体と言うか、種族だが。


 この獣は、俺の居た世界でペットとして人気な生き物。

 猫だった。



すみません、昨日夜に投稿しますとか言いましたが間に合いませんでした…。


自粛期間が解かれるので投稿頻度が落ちます…。

エタらないように頑張りますので、是非お付き合いください。


それと、250pt乗りました、ありがとうございます。

今の流行りとは離れているのでこんなに見てもらえるとは思っていませんでした。


これからもよろしくお願いします!

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