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三十六話 「確かに二人いる」


 嘘を吐いたら殺す。

 確かそんな事を過去にも言われた。


 あれはそうだ、スフロアを助けに行った山で、フィドロクア兄さんに言われた言葉だ。

 でも、確かあれは。


「……冗談ですよね?」

「冗談だと思っているなら試してみろ。ただ、あの親父が決めたルールにお前は含まれないがな」


 親父の決めたルール……ネスティマス家三つの掟の事だろう。

 その二つ目、家族で殺し合いをしてはいけない。


 つい最近、エクセレに殺されかけた事を思い出す。

 掟なんてあって無いようなものだ。


 エクセレが掟を知っているのかどうか、俺が掟に含まれるのかどうかは知らない。

 だが確かにあの日、明確な殺意を持って殺されかけた。


「……俺は別に死んでも良い。だがアズモは許して欲しい」

『…………馬鹿』


 場が沈黙で包まれる。


 アズモになんと言われようが、やはり俺の考えはそれに尽きる。

 元より、俺はこの身体を間借りしているだけに過ぎない。


 俺の本来の身体がどうなっているのか、どうしてアズモの身体に憑依してしまったのか何も分からない。


 だが、この身体の持ち主がアズモであるって事は確かだ。

 間借りしているだけの俺のせいでアズモに危害が加わる、殺されてしまうなんて俺には耐えられない。


 静寂を破ったのは、ディスティアだった。


「クァハハハ! 面白い! 私が家族を殺す訳がないだろう! お前はネスティマス家の一員だ、親父がそう認めている。私が親父の言いつけに背くなんてあるはずが無い!」

「……へ?」

「試しただけだ、申し訳無いな。ただ、エクセレから命を狙われているのに、自分だけの事を考える不届きな輩だったら本当に殺してしまっていたかもしれぬがな」


 ディスティアはなんて事ないようにそう言い笑う。

 だが俺はまだ状況を飲み込めず、生きた心地がしなかった。


「はぁ……久しぶりに笑ったな。どれ、こっちに来い。早うしろ」


 恐る恐るディスティアに近づく。

 手の届く距離まで近づいたら、ガバッとディスティアに捕捉され、ディスティアの足の間に座らされた。


「まずあれだな、確かめたい事がある。何か喋ってみろ」

「……あーーー」


 急に座らされびっくりしたが、気に障られたら不味い。

 俺は驚いているのを体面に出さず、言われるがまま従う。


「お前もだ。アズモ何か言え」

「あーーー」

『……あーーー』


「……!? こりゃ面白い! 確かに二人(・・)いる!」


 興奮したディスティアに抱き着かれた。

 後頭部に当たる弾力が心臓に悪い。


「こいつは凄いな、一気に二人の弟妹が出来たわけだ」

『離せ、私は抱き着かれるのが嫌いなのだ』

「親父にはいつもこうやって話していると聞いたが」

『父上が特別なのだ』

「知るか、私は姉だぞ。それにこうしていないとお前と話せないだろ」


 俺がひたすら困惑している間に、アズモが喧嘩を売り出した。

 こいつはどうしていつもこう、喧嘩っ早いのだろうか。


『ならば要件を早く済ませ。私達は試合後で疲れている』

「生意気な妹だ。まあ今後も会う機会はあるし、今回は聞いてやるか。まずお前だ、お前。アズモじゃない方。名前を教えろ」

「えと、コウジです」

「そう緊張するな。あと姉弟なんだからアズモみたいに敬語を使わなくていいぞ」


 アズモは敬語を使わないんじゃなくて、使えないだけなんだよな……。


「ブハ! ますます生意気な妹だ! 将来大物になれるぞ!」

「あ、頭読まれるのか」

「そりゃ、アズモと話すためにはな。コウジが胸の感触にドギマギしているのもしっかり伝わっている」


 身体が急に動いて足の間から飛び降りた。

 俺の意思では無い。アズモの意思だ。


「そうかっかするなよ。悪かったって」

「要件を早く言え」

「おー、アズモが喋るとそんな声になるんだな」


 ディスティアが両手を上げてオーバーなリアクションを取る。

 これはもうあれだ。遊ばれている。


「ふー。面白い弟妹を持っちまった、これは明日から楽しくなっちまうな」

「帰る……」

「待て待て。そろそろ真面目に喋ってやるよ」


「お前ら、親父から内通者の事を聞いたらしいな」


 ディスティアがニヤニヤするのを止めて、真顔で言う。

 内通者、エクセレに俺達の事情を告げ襲わせた人物。

 気を付けなければならない対象。


「……はい、聞きました」

「内通者が誰か、それは流石にまだ分からん。だが、それはこっちでやる。お前らは学園生活を楽しめ、遊べ」


 拍子抜けした。

 態々、真面目な顔をしたから何か大事な事を言うのかと思った。

 それが、まさかの遊べだと……。


「……遊べって言われても、俺のせいで姉さん達に迷惑をかけているのに、遊ぶなんて」

「そんなの考えるな。弟の事は姉の事、延いては家族の事だ。私達で片づける」

「私達……? 親父も学園に?」

「いや、親父はいない。忙しいからな。代わりにあいつがいる。ほら、お前らの副担任の」

「ぱ、パーフェクト先生!?」

「そう、そいつだ。」


 名前が怪しすぎるとは思っていた。

 何者かが、正体を隠すために偽名を使っているとは思っていたが、まさか兄さんだったのか……。

 俺、ちょっとなんか恥ずかしいよ、色んな意味で。


「あいつは強いぞ、私程ではないが頼りになる。あいつが副担任にいるんだから、お前らは何の心配もせずに学園生活を謳歌しろ」

「……一つだけ頼まれてくれ。コウジが、私の身体から出る方法を探しているのだ。コウジと喧嘩したく無いからそれもどうにかして欲しい」


 アズモがポツリと呟いた。


 あんな事があってから、アズモと意見が割れる事が多かったとは思う。

 それで言い合いになる事も少なくは無かったが……。


 ごめん、アズモ。

 皆の事ばっかり心配していたのに、俺の一番近くにいるやつの事をおざなりにしていた。


『……別に良い。私の事も考えてくれていたのは私が一番よく知っている』


「……お、お前ら可愛いかよ! 私の妹が可愛すぎる!」


 再び感極まったディスティアがくっついて来たが、今度は邪険にしなかった。


「あぁ、勿論いい。だが、条件がある」

「条件はなんだ」

「フィドロクアがまだ目を覚まさない。あいつには娘がいる。お前らも知っているだろう?」

「……ああ」

「あいつは、フィドロクアは、昔はネスティマス家でも尖った奴だった。だが結婚し、娘が生まれ丸くなった。そんなフィドロクアが会う度に毎回言っていた」


「ラフティーが心配だ。とな」


「まだ目を覚まさないが、あいつが一番気がかりにしている事は、娘が学園生活を楽しく送れているかどうかだ。だから、ラフティリと仲良くしてやって欲しい」


「それは言われなくても」

『お安い御用だ』

「完璧な答えだ!」


 満足のいく返答を聞けたディスティアは俺達を解放する。

 表情はニヤニヤした物に戻っていた。


「ま、今日は疲れているだろうし、こんくらいで許してやろう。ほら帰れ」

「なんだこいつ……」


 今日はアズモのよく喋る日だった。

 ただでさえ俺に会話を任せっきりのアズモだが、初対面でこんなに喋るのは今まで無い。


 なんだかんだでディスティアに懐いているのだろう。

『違うが?』

 照れんなよ。


「あぁ、そうだった。フィドロクアからお前らに渡せって頼まれているんだった」


 帰ろうとしていたが、思い出したように言うディスティアの一言で足を止める。

 ディスティアは何処かから、大きな茶色い物体を取り出した。


「これは一体?」

「実家の近くの山、あそこに生えていた何とかフラワーの球根だ」

「キンディノスフラワー!?」

「あぁ、そうだそれそれ」


 キンディノスフラワー。

 スフロアを助けに向かった時に、俺達の目の前に現れた馬鹿でかい花。

 実家近くにある危険な魔物がウロウロしていた山の主。


 こいつに遭遇した時、死を覚悟したのを覚えている。


「色々あったのは聞いたが、良かったらそれを私の授業に持ってこい」

「ディスティア姉さんの授業って……?」


「召喚術の授業だ」



クラス対抗戦時、

観戦するディスティア「妹と姪がカッコよすぎる! 推せる…!」


ちなみにディスティアは当初、

パーフェクト先生と同じようにクラスを担当する予定でしたが、

教師になるという事で一応学長面談したら、

教科担任のみ任せられる事になったらしい。



サクサク書けたので昼にも投稿。

今日はこの後、夕方と夜にも投稿します。


ブックマークや評価で書く速度が上がります。

よろしくお願いします。

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