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三十四話 「皆準備は良いかい?」


 クラス対抗戦とは、魔王立スイザウロ学園で行われているクラス単位で集団戦闘を行うイベントである。


 初等部では一年生から六年生までの全てのクラスで、参加希望者を募り、その希望者から各試合四人までを出場選手として、一クラス対一クラスで行われる。

 出場選手を先に全員脱落させる、または試合終了までに脱落させた数が多い方のクラスが勝ちである。


 試合中は生身の身体ではなく、スイザウロ学園独自の技術で開発した魔力体という物を使用する。

 魔力体は、手足を斬られようが、首を取られようが、生身の方にはダメージがいかない優れ物。参加者はこれを生身の上から纏い、一定ダメージを受け魔力体を解かれる事態に陥ると脱落となる。

 魔力体が切れたら修練場の安全システムが働き、直ちに選手控室に転移させられる。


 クラス対抗戦で上位を維持すると、シーズン毎に景品が贈られる。

 一年生は入学時に振り分けられたクラスが、そのまま順位になっている。

 一組が一位、二組が二位といった具合に、アズモ達が在籍するクラスの開始順位は十五位となる。

 週毎に行われる、ランダムで決められた近い順位でのクラス対抗戦で勝つと上昇、負けると下降する。

両クラスで同意が得られると、同意を得たクラス同士で対抗戦を行う事も出来る。



「さあ、今年も始まりました! クラス対抗戦です! 実況を私、放送部のクラーマーファ、解説を突然赴任して来た白過ぎる男、パーフェクト先生でお送りします!」

「試合をクラーマーファちゃんと完璧にお送りしてみせるので、よろしく!」


 会場がワーと盛り上がる。

 修練場のキャパシティは相当の物だが、座る事が出来ず立って見学する者もいる。


「それにしても今日は凄い観客の数ですね! 今年に入ってから初めての対抗戦とは言え、一年生の最下位クラスの対抗戦なので、こんなに集まるとは思っていませんでした!」


「これは確実に十五組目当てかと、十五組には外交関係で手腕を遺憾なく発揮する現魔王の息子であるブラリ君、ダンジョン業や商品開発で長者番付上位に毎年ノミネートされる生きる伝説竜王ギニスの娘であるアズモちゃん、その竜王ギニスの息子でネスティマス家最強の水龍フィドロクアの娘であるラフティーちゃん。面子が一学年で集まるのが信じられないくらい豪華と来た」


「何故、そんな子達が十五組に入っているのでしょうか!? って、事はもしかしてこれって世紀の大一戦となるのでは!?」


「それはこれから行われる試合を見れば分かるだろう。頑張って実況しようね、クラーマーファちゃん。ここだけの話、ブラリが裏で手を回してメディアが参列しているから下手な事を言うとバーンだよ」


「ひ、ひえぇえ! 魔王の息子はいたずらっ子っていう噂はかねてより伺っていましたけども、スケールが大きすぎないですかねぇ!」


「あ、選手が入場して来ましたね! 今シーズンは森林ステージ、鬱蒼としげる木々で見晴らしが悪く、敵味方の位置が把握しづらいステージです! ですが、安心してください! フィールドに浮かんだ各種カメラが、モニターに映像を映し出してくれます!」



—————



「えっ、お前何してんの?」


 出場選手控室で俺はブラリに詰め寄っていた。

 俺も出るのに、何も聞いていなかった。


「スイザウロ家の家訓でね、初陣は華やかにってあるんだよね」

「じゃあダフティの初陣もこうなるって事なのか? 本当か?」

「なるよ。ネスティマス家にも変な家訓あるでしょ」

「……うーん、そう言われると確かにあるんだよな」


 とは言え、うちのアズモが恥ずかしがり屋だからな。

 いつも通りのパフォーマンスを発揮出来るかどうか……。


『舐めるな。私は人見知りが激しく、喋るのがちょっと苦手だが恥ずかしがり屋ではない』


 本人がそう言うなら信じてやらん事もないが、威張るな。


『むーん……』


 まあ、なるようになるしかない。


「さて、リーダーとして最後に一言」


対抗戦が決まってからずっと真面目にリーダーをやっているブラリが、改まってそう言う。


「相手は十四組。僕らと入試時の成績がそこまで変わらない下から数えた方が早い人達だ。実力が拮抗しているから良い闘いになる……って、相手は思っているだろうね」


「僕らが十五組にいるのは問題児だからなんだよね! 実力が拮抗? そんなわけないないじゃん! この試合、華麗に決めて世界をびっくりさせよう!」


「お、おー……え、そうだったの?」

「おーーーーー!!」

「りょーかーい!」


 シレっと、なんかシレっと重要な情報が出たような気がした。

 ツッコミを入れたかったが、ラフティリとマニタリの元気な声に掻き消された。



 森林ステージ。

 聞いてはいたが、予想以上に周りが見えない。


「華麗に決める条件ってなんだと思う?」


 背の高い草を薙ぎ払っていると、ブラリがそんな事を言ってきた。


「敵に何もさせずにずっとこっちのターン状態で決めるとかか?」

「勿論、圧倒的な力で捻じ伏せる事よ!」

「芸術点が高い事っしょ」


 俺達は口々に自分の意見を言うが、ブラリは頷かない。

 どうやら違うようだ。


「皆が言うのも大事だけど、やっぱり一番は早さだよね。敵を早く倒せば倒す程、民衆は驚く。理解するのに時間が掛かる程早く倒すのが一番度肝を抜ける」

「そうか?」

「そういうもんだよ。よし、この辺りで良いか……『魔物化』」


 草を倒して出来た平坦な地にブラリが胡坐を掻く。

 額から白い角を生やし、目を閉じる事数秒。


「……見つけた。相手も四人で固まっているね、これなら一気にいけそうだよ。皆準備は良いかい?」


「ああ!」

「いつでもいけるわ!」

「いけるよーん!」


 俺とラフティリは魔物化で翼を生成しながら、マニタリは地面に手を着きながら準備が出来た事を告げる。


「ここから北東34m先、マニタリちゃんは馬鹿でかいのを一つ。アズモちゃんとラフティーちゃんはその場所に飛べ」


 静まった森林に轟音が響く。



—————



「両クラス動きませんねー、見晴らしの悪い場所での不意打ちを防ぐために固まる作戦でしょか?」

「十四組は全員で背中を合わせて周囲を警戒。こっちはクラーマーファちゃんの言う通りだと思われる。だが、十五組は何やら違——なるほど?」


「えっ、何がなるほどなのでしょうか……」


「さあ、なんだろうか」


 直後、フィールドの右上、十四組が居る場所が持ち上げられる。



—————



「おぉー、生えているなー。でっかいキノコ」

「こんな事が出来ながら、僕は何にも出来ないよーって言うなんてね。理解が出来ないわ」

「まあ、マニタリもブラリも仕事を果たしたし」

「次はあたし達の番ね!」


 今俺達がいる場所、空中にキノコで打ち上げられた十四組を迎える。


『コウジ、前方にいる奴が何かしようとしている』


 不意に打ち上げられただろうに、凄い対応力だな。

 だけど、何もやらせない。


 前方の敵に翼をはためかせながら近づく。


『ついでに左にいる奴も狩れそうだ。コウジはそのまま翼を頼む、私が左腕を使ってやっておく』


 サポートは?


『いらん』


 飛んでいる道中にアズモの言った子とすれ違う。

 アズモが通りすがりにそのまま一閃。


 浮かんでいた子は何も出来ずに魔力体を使い切り、転移していった。


『何かしようとしている奴は頼んだ。私はラフティリの方を見ておく』


 了解。


 そのまま飛んでいき、空中で身を翻す。

 足を鱗で覆い、飛び蹴りの構えで突っ込む。


 二人目も魔力体を使い切り粒子となって消えていく。


『ラフティリが一人討ち漏らした、援護するぞ』


 俺達の飛んでいる方向から見て右後ろ。

 そこでラフティリも俺達と同じように二人を相手取っていたが、一人は傷が浅かったのか決めきれていなかった。


 あの傷なら、魔力体ももうそんなに持たないだろう。

 そう判断して、威力を抑えその分速度を上げた細い炎のブレスを飛ばす。


 十四組最後の子に命中し、最後の子も散る。

 直後、試合終了のブザーがなった。


「うーん、2分43秒って所かな」


 ブラリが、魔力を使い切り疲弊しているマニタリの隣で呟く。


 十五組は一人も落とす事なく、十四組に圧勝した。



ラフティリ「あたしだって出来たもん! 討ち漏らしてなんかないから!」

アズモ「はいはい」

コウジ(こいつ煽る時だけ……)



ちゃんとスピーディーな戦闘になっていますかね…。


次話は明日の8時にあがります。

ブックマークや評価で書く速度が上がります。


よろしくお願いします。

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