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聖夜の戦い ―準備編―

大遅刻クリスマス回になります。

この話は六歳児(保育園最後の年)での時間軸となります。

主に出てくるのはコウジ、アズモ、ルクダ、スフロアです。


「俺の世界にあったクリスマスっていうイベント事がやりたいんだ」


「よかろう。存分に友をもてなすが良い」

「ありがとう、親父!」

「良い。……ところでどんな友が出来た。アズモとも仲良くやっているのか。保育園での調子はどうだ。次の保護者参観は――」


 そんなこんなで親父……竜王ギニスに家の使用許可をもらい、準備を手伝ってもらうよう頼んだ。

 あいつらがどんな反応をするのかがもう楽しみだ。


『おい待て。私は納得していないぞ』


 頭に声が響いた。

 俺の宿主、竜王家末娘アズモが俺に語り掛けてきたのだ。


 ――何に納得がいっていないんだ?


『私もプレゼントが欲しい!』


 それなら親父に強請っておいたから大丈夫だぞ。

 抜かりはない。


『起きたら枕元にプレゼントが置いてあるというサプライズを私も経験したい』


 残念ながらそれは無理だ。


『何故だ』


 俺がサンタさんって事はアズモもサンタさんだからだ。


『なっ……!?』


 雷に打たれたような衝撃をアズモは受けているようだ。

 普段では到底考えられないような反応をしている。


 まあでも当然だろう。

 俺とアズモが一つの身体で共生している都合上、俺がアズモにサプライズをする事なんて出来ない。


 ましてやクリスマスプレゼントをアズモに気付かれずに用意する方法なんて無い。

 どう頑張ってもコウジサンタ兼アズモサンタになってしまうのだ。


 アズモにはサンタとしてクリスマスを楽しんでもらおうと思う。

 ……まあこの世界にクリスマスなんて文化は無いので俺が勝手にそれっぽい日をクリスマスにしようとしているだけだが。

 今まではクリスマスなんてイベントはしてこなかったが、今年はどうしてもやりたい。


 というのも、アズモが今年で六歳になったからだ。

 来年はもうこの家には居ない。

 スイザウロ学園とかいう全寮制の学校に俺達はぶち込まれているだろう。


 つまり、今年が最後のチャンスなのだ。

 夜にこそこそ動かなきゃいけないという都合上、このイベントは寮で出来たものではないのだ。


『コウジサンタは私の元には来ないのか……?』


 コウジサンタは常にアズモの心の中に居るぞ。


『私の中には会話とそれ以外をしてくれるコウジしか居ない』


 そいつがコウジサンタなんだ。


『コウジはコウジだ。コウジサンタでは無い』


 ……哲学か?

 というかいい加減、俺の代わりに何かやろうぜ?

 今のところ俺が全部担当しているじゃねえか。


『やだ。私もコウジサンタからプレゼントが欲しい』


 分からず屋め。いくら駄々を捏ねられても無理なもんは無理だからな。


『私は諦めないからな……』



―――――



「おお、眠そうだなルクダ。ベッドに行こうか」

「まだ眠くないー! まだ遊ぶー!」

「よく見たらスフロアも眠そうな顔してんな。俺と一緒に寝ようか」

「……何が目的なの?」


 クリスマス当日。大問題が起こっていた。

 竜王家に招いたルクダとスフロアが全然寝てくれない。


 ルクダはこうして皆で遅くまで遊べるのが楽しくて仕方ないのかずっとはしゃぎ回っている。

 普通こんなにはしゃいでいたらそろそろ眠ってくれても良さそうなのに、何故か全然寝ない。

 母さんの用意したご飯を口にしては、リビングをグルグル回っている。


 スフロアは俺の横で不動。

 家から持参した映画を鑑賞しながら、俺をクッションにしている。

 ついでに時々近くによってきたルクダへご飯を与えていた。


 だが、しかしだ。

 二人は六歳児、いずれ眠気に負けてしまうのは確実。

 俺はただその時を待てばいい。


 ――そして、一時間が経った。


 走り回っていたルクダは俺の隣に座りウトウトしていた。

 途中で歯磨きさせていたら意識が覚醒するという事件が起きたが、その後すぐまた眠気が襲ってきたのか俺に寄りかかってこくりこくりと頭を動かしている。


 そしてスフロアは…………。


「私の顔に何か付いているかしら?」

「いや、なんも……」

「そう? しかし友達の家に集まるのって楽しいわね……」


 こうして感傷に浸っている始末だ。

 普段なら「楽しいこと沢山しようぜ」って気持ちになるが、今はその気持ちになれない。

 なるべく速やかに入眠してほしい。


 しかし、こうなるのも想定内だ。

 こっちには竜王がついている。


 ――親父、やってくれ!

 斜め前に腰掛ける親父にアイコンタクトを送った。

 親父はコクリと小さく頷き、目を怪しく光らせる。


「……あれ、なんか眠くなってきたかも」


 スフロアが目を擦り始めた。

 どうやら、親父の魔法がしっかり効いたようだ。

 いきなり昏睡させるんじゃなく、少し微睡む程度の入眠魔法をさり気なく使うなんてやはり親父は凄い。


「眠い? そうか、眠いか。じゃあ俺の部屋に移動しようぜ」

「なんでそんな嬉しそうなの? そんなに私と寝たかった訳? ……でも、お言葉に甘えようかしら」

「よしきた」


 もう半分寝ているルクダと魔法の影響でうつらうつらとし始めたスフロアの手を握って俺の部屋へと誘導する。

 二人は俺の手を頼りにトコトコと歩く。


 直ぐに部屋へと着き、おかしな程大きいサイズのベッドの前まで来た。


「大きいね……」

「普段、竜形態で寝ているのかってくらい大きいわね……」


 ――危ない。

 あまりにも大きなベッドのせいで二人が微睡に落ちる意識を取り戻しそうだ。


「良いから良いから。ゴローンってしようぜ」


 二人の手を放し、まずは俺が横になる。


「うん~」


 ルクダはそんな俺の右隣りに飛び込んできて身体を丸める。

 それを見たスフロアもポスっと俺の左にやって来た。


「皆で寝るって良いわね……」

「ねー、いいよねー」

「そうだな」


 二人が横になったのを確認してから足元にあった布団を身体にかける。


「今日楽しかったな」

「うん~。またこうしようね~」

「えぇ、そうね……」


 俺の言葉に二人はフワフワとした言葉で返す。


「じゃ、おやすみ」

「おやすみなさい~」

「おやすみ……」


 白い灯りを常夜灯へと変える。

 このまま少しジッとしていれば直ぐに二人は寝るだろう。

 そこからが今日の本当のイベントの始まり……。



二部始めました(告知)


二部でシリアス展開を書いていたらネタに走りたくなったので再会します。

以降は番外編として、頭を溶かした状態で読める話のみを投稿していきます。

二部の方がメインなのでこちらは不定期になりますが、よろしくお願いします。


この話の後編は15時くらいにあがる予定です。

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[一言] 幼女を執拗にベッドに誘う22歳独身男性
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