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百話 ブラリ様の覇道を手助けする一振りの剣


「“煌めけ”」


 ブラリ様から賜った剣の起動ワードを叫んだ。


 ブラリ様があの日、惑わしの鍾乳洞屈から持ち帰ってきたこの透き通るように白い短剣の名前は「幻惑剣(ゲンワクケン)白石(シライシ)」と言うらしい。

 城に訪れた一流の鑑定士がそう教えてくれた。


 この武器を起動させると、シライシは光る。


「……何をするかと思えば光るだけか」


 ポディカスロがやれやれと言った風に溜息を吐いた。


「ですが、これで戦いづらくなったはずです」

「確かに眩しいが、これくらいなら普通に戦える」


 ポディカスロは眩しそうに眼を細めるが、それは一瞬だった。

 直ぐに眩しさなど気にせずに私の元まで辿り着き抜刀。


 身体が肩から裂け、クラス対抗戦時に自身の身体の代わりになる魔力体のリソースが完全に切れた。

 敗者はこのまま転移装置に魔力体が切れた事を感知され控室に飛ばされるのみ。


「持ち手が優秀でも武器が弱いとこうも無様な敗北を晒す事になるのか。これでお前がブラリ様の元に駆けつける事も叶わない。精々、控室で主の散り様でも眺めているのだな」


 ——きっと、今のポディカスロには私がそのように見えている。

 ポディカスロが言ったように無様に散ると。


「これで十五組の手駒が一つ消えた。この後はダフティ様に合流してその他の選手も落として一組の完全勝利。十五組の連勝記録も止まり、ブラリ様の野望もこれでお終まいだ」


 ポディカスロは納刀し、転移する私を見届ける。

 しかし、一向に転移装置が働く事は無い。


「……どういう事だ?」

「貴方の負けです。ブラリ様の覇道は終わりません」


 困惑するポディカスロのガラ空きの背中にシライシを突き立てる。


 ポディカスロは咄嗟に飛び離れる。

 背中に刺さったままの短剣を抜き、自身が所持している剣の代わりに持つ。

 魔力体についた背中の傷からは魔力が溢れ出ており、脱落するのも時間の問題だろう。


「詰めが甘い奴だ……。確かこう言うのだったか“煌めけ”」


 ポディカスロが奪った短剣でシライシを起動する為の言葉を呟く。

 しかし、シライシは発光しない。


「知らないのですか? 魔法武器は使用者を選びますよ?」

「そんな事は知っている! お前が使えて私に使えない訳が無いだろう! クソッ! まだ私は幻影に囚われていると言うのか!?」


 シライシの能力は発光する事では無い。

 真の能力は光を見た者に幻覚を付与する事だ。


 きっと、ポディカスロには随分の都合の良い物が見えていた。

 だが、それはまやかしだ。


 そして、魔法武器は使用者を選ぶ。

 先程の一撃で仕留めきれなかった時はヒヤヒヤしたが、ポディカスロがシライシを使えない事は察していた。


「いいえ、貴方が見ているのは現実です。シライシは現実を見ようとしない者に心を開きません」

「馬鹿な事を言うな! 現実を見ていないのはお前達の方だ! ブラリが王になるだと!? 叶いもしない絵空事をいつまでも夢見ているお前達の方がよっぽど現実が見えていない!」


 ポディカスロがシライシを投げ捨てて、抜刀する。

 背中から溢れ出る魔力を少しでも逃すまいと抑えながら。


「それを決めたのはシライシです。シライシはダンジョンでブラリ様に握られた時からブラリ様に魔王になる為の器がある事を見抜いているのです」


 シライシはダンジョンでのあの惨状を見ている。

 そこでブラリ様が何を考え、どう動いたかを知っている。


 だから、ブラリ様を慕う私もシライシを使う事が出来る。

 私はブラリ様の覇道を手助けする一振りの剣になる。


「貴方もいい加減誰かの言葉に踊らされる事無く、自分の目で真偽を確かめるようにしてみては? それをしないからダフティ様に嫌われるのですよ」

「私がダフティ様に嫌われているはずがないだろう!?」


 余裕の無くなったポディカスロががむしゃらに剣を振り突撃してくる。

 迷いが見える太刀筋は避けるのが容易い。


 掠る事無く全て避け、ポディカスロの投げ捨てたシライシを拾う。


「全力で行きましょう、シライシ。ブラリ様を侮辱する者に遠慮なんて要りません」


 片手で持ったシライシを立てたまま顔のままに持っていきそう呟く。


「“煌めけ”」


 シライシが先程よりもいっそう強く光る。


「ぐ、ぐわああああ!!」


 ポディカスロが苦しそうに呻くが何を見ているのか私には分からない。

 私と同じようにポディカスロの言葉に思う所があったシライシが強い幻覚を見せているのだろう。


 頭を抱え、地面で転がるポディカスロは無様な物だった。

 ポディカスロに近づき短剣を構える。


「噂だけでブラリ様を嫌悪するような人がダフティ様に嫌われない訳が無いじゃ無いですか。そんな事も分からないのですね」


 最後にそう言ってから、ポディカスロの胸を貫いた。

 直後ポディカスロは粒子となり消えていく。


 魔力体のリソースが切れ転移装置が働いたのだ。


「助かりました」


 シライシにそう言い、納刀する。


 ポディカスロは強かった。

 私が勝てたのはシライシが居たからだ。


 私はポディカスロを倒したのだ。

 この事実が実感に変わると、どうしてか早くブラリ様に言いたくて仕方なくなった。


 今はただ、ブラリ様に会いたい。



その気持ちはスフィラが初めて抱いた感情だった。



百話です!

ここまで長かったです。ちょっと感動しています。

二章はもう直ぐ終わりますが、物語はまだ続きますので引き続きよろしくお願い致します!


もしエタったら私の事をボコボコに叩いていただいて構わないです。

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