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ハグレ者達のダンジョン攻略  作者: 天野 雪人
第四章 嵐の前が静かな様に
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第四十一話 再出発

「あ、シェラ」

「おう。ルナ」


 翌々日。迷宮広場にて顔を合わせた俺達は、少し気まずげに挨拶をした。

 バウル達はまだ来ておらず、広場の一画にて二人きりで待つ事となる。


「「…………」」


 沈黙が訪れる。だがこのまま有耶無耶にするわけにはいくまい。必ず、ルナが好きだといってくれた事の返事を出さなければ。

 まだバウル達はこないかなときょろきょろと見渡す。だが俺が早く来すぎたのだろう。五分前には来るバウルすらこない。


 今、話しをしなければ後が辛くなる。そう断じた俺は、ルナに向き合った。


「ルナ」

「な、なに?」


 もう逃げないと、ルナの瞳をじっと見つめる。綺麗な瞳だ。だが見とれるわけにはいかない。


「ありがとな。一昨日の話し。うれしかったよ」

「そ、そっか。……うん」

「俺も多分。ルナが好きだと思う」


 それは紛れもない本音だ。


「だけど、良く分からない。どうすれば良いのか。経験がないからな」

「……ボクもだよ。どうすればいいのかぜーんぜん分からない」


 恋なんて、生まれてこの方一度もした事がない。だからどうすれば良いのか分からない。

 恋愛の話しをする友もいなかったし、恋物語など読んだ事がない。好きなんて感情、どこか遠い物だと思っていた。


「返事を返すのは、整理がついてからで良いか?」

「うん。もちろんだよ。ボクだってまだ整理がついていない。ちょっと急ぎすぎた」


 二人とも、恋なんてした事がなかった。それが突然やってきた物だ。もうなんか、良く分からない。


「はあ。とりあえず、お話しよっかシェラ」

「ああ。ちょっとよそよそしくて嫌だった」

「ボクもさ。いっぱいお話して、とってもメロメロにするからな!」

「覚悟しておくよ」


 もうだいぶルナにメロメロだと思うが。


「……で、どうなったんだろう」

「バウル君、し!」


 と思っていると、近くにある物陰から、ごにょごにょと聞きなれた声が。

 ルナと一斉にそこをみれば、こちらを盗み見しているロロナとバウルがいた。


「あぅ。ま、まさか……聞いてたのかい?」

「す、すいませんルナさん。あの空気の中に乱入できなくて」


 見られた。それに、恥ずかしそうに目を伏せるルナ。俺もだ。

 だが、まあ良しとしよう。この二人ならまあ良い。


「兄貴。で、結局どうなったんですか?」

「バウル君。それはそっとしておかないと」

「そ、そうなのか。知らなかった」


 正直、俺も良くしらない。とりあえず整理がつくまで正式なお返事は後廻しという形だ。早く整理をつけて、ルナと向き合わねば。


「こほん。さ、さあ。今日も元気にダンジョン攻略にでかけようか」

「そうするか。よーし。準備は良いな?」

「はい」

「バッチリです!」


 ロロナとバウルは元気に返事をする。

 本当に久しぶりのダンジョン攻略だ。俺達が五十一階層まで転移して、腕の治療やらなんやらとしばらく潜っていなかった。おかげで家計がやばい。早く二十一階層までいかなければ。


「と、行く前に一つだけ言っておく。怖いと思ったら、無理についてこなくても良い。ダンジョンは危険な所だ。それは、先の一件で良く分かってると思う。だから自分の意思で行きたいと、そう思わないんなら止めても良い」


 今言うべき事ではないかもしれない。だがここしかなかった。

 ダンジョンは危険な場所だ。ふと忘れてしまうが、死とはつねに隣にある。


「俺は凄いリーダーじゃない。判断ミスでまた危険な目に会わせるかもしれない……」

「前も言ったけど、ボクは行くよ」

「俺もです。このメンバーと、……まだ冒険を続けたい」

「私も。……みなさんと一緒に行きます」


 愚問だったか。その瞳をみれば、ただ流されて決断した者は一人もいなかった。

 俺達はハグレ者。このパーティでのみ噛み合う。このハグレ者達の集団だから、ここまでこれた。


「よし、『アジェガ』再出発だ」


 俺達はダンジョンに潜る。最奥部を目指して。



 ◇



 二十階層――。


「ウゴオオオオオオオオオオオオ!」


 一体の竜が吼えていた。

 翼を持たないが、屈強な肉体を持ち地をかける竜。


 二十階層階層主『地竜』。


 亜竜に分類される下位の竜であるが、その強さは折り紙つき。

 そんな地竜と、俺は一対一で戦っていた。


「『竜化』――」


 赤いオーラが吹き荒れる。竜と戦うには、俺も竜にならなくてはいけない。

 剣を抜く。五十一階層の宝箱で入手した剣は、俺が使う事になった。この剣と、五十一階層での経験を経てレベルアップした俺ならば地竜すら喰らう。


「はああああっ」


 地竜の一撃と、俺の剣はぶつかり合う。

 やはり思った通り。地竜はとにかく力が強い。そんな地竜と打ち合えるとは、だいぶ強くなっている。五十一階層での死闘を経験すればそうなるか。


 竜化の時間もだいぶのびて、全力ならば一分。抑えながらであれば五分ぐらいは問題がない。

 地竜と何度もぶつかり合う。


「ウゴオオオオオ!!」


 地竜も本気だ。本気を出して叩き潰そうとしてくるが、遅い。あまり速くはないらしい。

 とどめを刺すべく、俺は接近する。地竜の猛攻をかわしながら俺は肉迫した。


「とどめだ」


 地竜は何かを感じ取ったのだろう。逃げる様に方向転換するが、遅い。


「すぅ……『竜の息吹(ドラゴンブレス)』」


 もっとも威力が高く、もっとも射程が長く、もっとも強い息吹を至近距離から喰らえば、さしもの地竜といえども一撃で光の粒となった。


「っいてて。反動はなれないな」


 竜化を解除すると襲ってくる反動に耐えながら、地面に落ちた地竜の皮と牙を拾っていると背後で見守っていたルナ達が近づいて来た。


「おつかれシェラ」

「兄貴、さすがです。でもこんな無茶はあまりしないでください」


 今回は俺のわがままで一人で戦った事に、バウルは苦言を呈する。


「ごめんな。力を確かめたくて」

「少年のいうとおりだよ。でも余裕そうで良かった」

「ああ。……ルナもあまり無茶するなよ」


 俺を助けるために単身で二十階層まで行って地竜を狩ったルナも同類だ。

 とはいえ少しわがままを言い過ぎただろう。ペコペコと謝る。


「うん。じゃあ……行こうか」

「二十一階層ですね」


 ここらへんから攻略者の数はぐっと減る。

 二十一階層で活動できたら、もう生活の心配はいらないだろう。


 出現した階段を慎重に下りる。バウルが先頭となってしっかり警戒してくれた。

 階段を下りれば、光がさす。自然の土の匂いを感じながら俺達は二十一階層に到着した。


「ここは……二十一階層か」

「山ですか? とても見晴らしが良いですね」

「お、兄貴『索敵』が機能してます。それによると、岩山ですね」

「だろうな」


 見晴らしの良い景色だ。どこまでも続くきりたった岩の山。木々は一本も生える事なく、視界はとても開けている。

 空を飛ぶ鳥の魔物。山を走るゴーレムの様な魔物。さまざまだ。


「二十一階層『山岳地帯』。少し、一筋縄じゃいかないかもね」


 二十一階層の景色を確認して、俺達はいったん地上に引き上げた。

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