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元魔王による異世界領主生活〜強すぎてぼっちだったので領主として人生やり直す〜  作者: たんたん
【第一章】魔王→領主、脱ぼっちへの第一歩
8/12

【最終話】魔王、脱ぼっちに向け一歩踏み出す

「頭が痛い……いや重たい」


「たったあれくらい飲んだだけで情け無いわね。私なんてこの通りへっちゃらよ!」



 昨日王都の酒場で何年かぶりの宴会を行なった俺は、酒を飲んだ後特有の頭痛とも言える不快感、所謂二日酔いに襲われていた。

 いや、昨日ではないな、宴会という名の探索者対抗飲み比べ大会は、結局深夜12時を回り、時計が針が5時頃を指すまで行われていたため実際には、本日の早朝という表現が正しい。

 よっぽどアルコールに強い者でなければ、実際にそれが体内から抜けるのは6時間程度かかるものらしい。そして現在の時刻は午前10時、俺の体内には摂取したアルコールが未だ活発に蠢いていることだろう。



「翌日に私との約束があると知っておきながらよくそんな深夜まで酒を飲めたものじゃ、まあそれに関しては肝が据わっておるということにしておいてやろう」



 そんな俺の様子を見て、俺の正面に座る昨日身に纏っていた城内用の正装でなく、外行き用の機能性に優れた服を纏った国王が笑いながら口にする。



 俺とティナ、そして国王は早朝から馬車を走らせとある地を目指す最中であった。



 きっかけは、先日王の間で国王より提案を受けた「領主をやってみないか?」という一言であった。

 どうやら国王は俺を見込み、王都領内のある地を俺に任せたいらしい。

 然し、突然そんなことを言われたところで立地も環境もとにかく分からない事が多すぎる俺は、勿論「はい、やらせて下さ い」とはならず、結果として国王とティナと共に実際にその領地に視察に向けうといった流れになったわけだ。



「では、到着するまでの間、今向かっておる地について簡単に説明させてもらおうかのう」



 詳細については行きの馬車で説明する、とのことで先日具体的な説明は何一つ受けていなかった俺に対し国王は解説を始める。



「今向かっておるのは、先日お主らが真紅竜を討伐した秘境と呼ばれる森の目と鼻の先にある領地じゃ、森からの距離は1㎞も離れておらん」


「それって物凄く危険な場所じゃないかしら?」



 国王の発言に、ティナは即座に反応する。

 確かにティナの言う通りだ、あの森は未だにほとんど開拓の進んでいない未開の地と言っていた。

 要するにその領地は常に危険と隣合わせであると言っても過言ではない。



「その通り、危険な場所なのだ。つい先月も森の魔物達がその領地を襲った事があってのう、その時は偶然腕利きの探索者達が居合わせたため大事には至らなかったのだが、それがきっかけで当時の領主が逃げ出してしまったのじゃ。当然ながら少数ではあったがそこに住んでいた領民達も皆王都や別の領地に移民してしまってのう、今は誰もそこには住んでおらんのじゃ」


「もう誰もいなくなっちゃたのなら、そんな領地ほったらかしにしておけば良いじゃない、わざわざそんな危ない場所に人を置く必要のはリスクが高すぎるわ」

「それがそうとも言えんのじゃ」



 ティナの回答に、国王は蓄えられた髭を撫でながら困ったように言葉を発する。

 確かにティナの発言も一理ある、あの真紅竜のような協力な魔物が何体生息しているかわからないような地を人間の生活エリアにする等リスクが高すぎる。

 だがあの森にはそのリスクを優に補えるようなリターンも存在するのも確かだ。



「あの森で採れる多種多様な資源が目的ですね?」


「そうじゃ、あの森は先日お主達が調達してきた貴重な魔物の素材は勿論のこと、他にも鉱石、植物、食材、あの森で採れるどれもが我が国を潤す大事な資源であるのだ」



 俺が予想していた通りに回答をした国王は、その後右手の指を二本立て説明を続ける。



「そして、この領地には二つの大きな役割ある。一つ目は森の資源を安定的に王都へ供給すること、そして二つ目は他国への牽制じゃ。一つ目に関しては、王都の探索者達が定期的に資源を持ち帰ってくれるので大きな問題では無いのだが、二つ目に関して言えば、あの領地に人が居なくなってしまえば近隣他国がこれ見よがしに森へ侵入し、資源を根こそぎ奪っていくような事態にも発展しかねん。だからあの地には人材を再配置せねばならんのだ、それもとびっきり優秀であるな」



 そう言って国王は俺を一瞥する。

 どうやら国王は、真紅竜討伐の件で想像以上に俺のことを評価しているらしい。

 スキルを使ったらぶっ倒れる、場合によってはゲロまで吐いてしまうということは露知らずに……。



◇◇



「これはまた小さな村だな」


「所謂田舎ね、酒場くらいはあるのかしら」



 場所を走らせること1時間程度、国王の言う俺に任せたい領地内の廃村に到着した俺達は、高台から村の全貌を眺める。

 そこは小さな村であった。

 危険な地である、恐らく領民が中々集まらなかったのだろう。 

 眼下には数十程度の民家と、それより幾分か大きい領主の住居であろう屋敷がポツポツと見えるだけであった。

 そして少し奥の方には昨日俺が倒れていた森、秘境が口を広げている。



「意外と住みやすそうな所ですね」


「その通りだ、お主が住む家はあの館をそのまま使えば良いし、領民が増えた時は空き家を渡せば良い、建築いらずで今からでも住むことは出来るぞ!」



 俺の感想に国王はここぞとばかりに良い点をひたすら羅列する。

 それほど引き受けて欲しいのだろう。

 


 良かったな国王、俺が物分かりが良くて。



 俺は魔王として、既に完成された領地、こんなちっぽけな領地とは比較にならないくらい条件の良い領地を前魔王である父から引き継いだ。

 にも関わらず俺は上手くやれず、今までの歴代領主……歴代魔王達が築きあげてきた物を台無しにした。

 配下も領民も皆居なくなった。



 ふと今まで忘れていたある人間の少女、ほんの数回であるが、魔王である俺と唯一会話をしてくれていた年半ばもいかない彼女の言葉を思い出す。



「こんなに優しい人なら、ちょっと頑張ればみんなすぐに戻って来てくれるよ」



 結局、当時の俺にはその少しの頑張りが足りなかった。

 ぼっちになった後の俺は、去っていた者達を引き戻すことを簡単に諦めた。



 そうだ、俺は後悔していたんだ。

 俺のことを慕ってくれる仲間と共にやり直したかったんだ。



 あの時俺の脳内を刺激した、あの言葉を思いだす。



『あなたのことを誰も知らない千年後の世界で、領主として人生をやり直しませんか?』



 ああ、やってやる……!

 正直こんな危険と隣合わせのような地で、人望のない俺が領主として上手くやっていけるような自信などどこにもない。

 だがそれでもやる。

 二度とないチャンスだ、どうせ元々ぼっちだったんだから失う者など何もない!

 国王に対し声を大にし発言する。



「陛下、是非この大役、是非とも私にやらせて下さい!」



 もう魔王だった頃の俺はいない、これからはただの領主だ。

 領主として、領民達と最高の人生を送ってやる!

 


 これが俺の……脱ぼっちへの第一歩だ!


第一章これにて完結です。

まだ第八話ですが、たくさんの方に読んでいただけ感動しております。


もし皆様の時間をもう少しだけ頂けるのであれば、このタイミングで第一章部分までの感想や評価など頂けますと幸いです笑


今後とも宜しくお願いいたします!

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