ふゆのおはなし
ゆきがしんしんとふり、すこぅしつもったころ。
まちはクリスマスのおとずれをまっている人たちで、いつもよりにぎやかです。
そのまちのすみっこにある、ちいさないえにしょうじょはすんでいました。
しょうじょにはおかあさんがいません。
やさしいおとうさんはいますが、いつもしごとで、まいあさはやくにいえをでて、まいばんおそくにかえってきます。
あるひ、しょうじょはおとうさんにたずねます。
「クリスマスのひはいっしょにいてくれる?」
おとうさんはもうしわけなさそうなかおをして、しょうじょにこたえます。
「すまないね、クリスマスもしごとなんだ。」
しょうじょはかなしいきもちになりましたが、やさしいおとうさんをこまらせてはいけないとおもったのでわらいました。
おとうさんがしごとでいえにいないあいだは、となりのいえのおばさんがおせわをしてくれます。
おばさんもおとうさんにまけないくらいやさしいのですが、ゆうはんのよういがおわるとじぶんのいえにかえってしまいます。
あるひ、しょうじょはおばさんにたずねます。
「クリスマスのひはいっしょにいてくれる?」
おばさんはもうしわけなさそうなかおをして、しょうじょにこたえます。
「すまないね、ようじがあるからいつもよりはやくかえらなくちゃならないんだよ。」
しょうじょはかなしいきもちになりましたが、やさしいおばさんをこまらせてはいけないとおもったのでわらいました。
しょうじょのいえには、しょうじょがさみしくないようにとおとうさんがかってくれたねこがいます。
ねこはとしよりでほとんどうごきませんが、いつもしょうじょのよこでねていました。
あるひ、しょうじょはねこにたずねます。
「ことしのクリスマスもいっしょにいてくれる?」
ねこはすこぅしかんがえるふりをして、しょうじょにこたえます。
「すまないね、そうしてやりたいがもうすぐわたしはしんでしまうんだよ。」
しょうじょはかなしいきもちになりましたが、ずっといっしょにいてくれたねこをこまらせてはいけないとおもったのでわらいました。
しょうじょはおかあさんのおはかへいきました。
おかあさんのおはかはちいさく、まわりのおはかよりみすぼらしいですが、そこにはたしかにおかあさんがねむっています。
しょうじょはおかあさんのおはかにたずねます。
「クリスマスのひはひとりぼっちなの。おかあさんにあいにきてもいい?」
おかあさんのおはかはなにもこたえません。
しょうじょはかなしいきもちになりました。
そして、おかあさんのおはかのまえでわんわんとなきました。
クリスマスのまえのひ、ねこはしょうじょのかおをひとなめし、こういいました。
「さいごにひとつだけおねがいがあるんだ。わたしがしんだら、おかあさんのおはかにつれていっておくれ。」
しょうじょはいいます。
「どうかしなないで。」
ねこはすこぅしかんがえてこういいました。
「それはむりなんだよ。」
しょうじょはねこがこまってしまうとおもいましたが、がまんできずにないてしまいました。
「わたしをおかあさんのとなりにうめたあと、すぐにこのいえにもどってごらん。」
ねこはさいごにそれだけいうと、しょうじょにおしりをむけてまるくなり、ねてしまいました。
そして、もうおきることはありませんでした。
クリスマスになりました。
まちはこれまででいちばんにぎやかで、だれもがよろこびえがおにあふれていました。
でもしょうじょだけはちがいました。
しょうじょはねこをだきしめて、おかあさんのおはかへむかいました。
おかあさんのおはかのよこにちいさなあなをほり、うごかなくなったねこをうめてやりました。
そして、ねこのいったとおり、まっすぐにいえにかえりました。
しょうじょはずっとないていました。
いえにかえったしょうじょはおどろきました。
いえからはおいしそうなりょうりのにおい。
となりのいえのおばさんがきてくれたのかとおもったしょうじょは、いそいでドアをあけます。
「おばさん、きてくれたのね。」
そうこえをかけましたが、しょうじょのまえにあらわれたのはおばさんではありませんでした。
「おおきくなったわね。」
しょうじょはおどろきましたが、すぐにうれしそうなこえをあげ、だきつきます。
「おかあさん。」
ずぅっとむかしにしんだおかあさんがめのまえにいました。
「これからもずっといっしょにいられるのね?」
しょうじょはおかあさんにたずねました。
おかあさんはすこしかなしそうなかおをして、こういいました。
「ざんねんだけれど、いっしょにいられるのはきょうだけなの。ねこがいちにちだけいのちをくれたのよ。」
ねこはあしたしぬはずでした。
なんどもなんどもしょうじょといっしょにクリスマスをすごしたねこは、さいごのクリスマスをおかあさんにあげて、すこぅしだけはやくてんごくにいくことにしたのです。
しょうじょとおかあさんはたくさんたくさんおはなしをしました。
しょうじょはたくさんたくさんおかあさんにあまえました。
やがてしょうじょはおかさんのひざでねてしまいました。
それからしばらくたち、ねこのなきごえがきこえたきがしてしょうじょがふとめをさますと、そこにはおおきなプレゼントをもったおとうさんがいました。
「ただいま、おそくなってしまってすまないね。」
しょうじょはあわててベッドからおりて、おかあさんをさがします。
「おとうさん、おかあさんはどこにいったの?」
おとうさんはしょうじょのあたまをやさしくなでながらいいます。
「おかあさんにあうゆめをみたのかい?」
しょうじょはそのてをにぎっていいました。
「ううん、そうじゃなくておかあさんがさっきまでここにいたの。ねこのいのちをもらってきょうだけあいにきてくれたの。」
おとうさんはしょうじょのことばをしんじられませんでしたが、しんじることにしました。
そのほうがずっとすてきだとおもったからです。
「そうかい、それじゃあきょうはさみしくなかったね。おとうさんもあいたかったよ。」
おかあさんがかえってしまったことがわかり、しょうじょはかなしいきもちになりました。
でもなきませんでした。
もっとはなしたいことがあったとおもいました。
でもなきませんでした。
もっともっとあまえたいとおもいました。
でもなきませんでした。
おとうさんといっしょにケーキをたべはじめたしょうじょが、ふとまどのそとにめをやると、わらったおかあさんとおしりをむけたねこがみえたきがしました。