#1 - 04 破壊神
各作品に登場する破壊神こと『兎伽桜娑羽羅』について。
赤い髪。地球人に酷似した姿。外見は二〇代後半の女性体。
生物として超越者然とした存在の為、色々と規格外であり能力も多彩。性格は一言で言えば剛毅。人当たりは良いが悪戯っ子の一面が強い。そして、よく笑う。
破壊神としての役割は早期に受け入れた。それによる悩みは見せないが考えないことはないという。
神のとしての位は決して高くない。己の責務に忠実であり誇りを持っている。
時間があれば様々な世界に赴き、干渉したり容赦のない破壊活動に邁進したりする。特に異世界転生や転移する『主人公』達の性格によって、天敵たる面を見せる事がある。事実、それぞれの世界秩序を無効化。元より合わせる気を放棄することも辞さない。
気に入った場合は秩序に忠実となり、強敵として振舞うことも享受する。つまり絶対に不干渉でいる、ということは無い。寧ろ、率先して関わろうとする傾向があるので多くの者達からよく叱られる。
不死性であるため暇を持て余し、己の一部を描く世界に解き放っては返り討ちに合う。というより、その傾向が強い。
娯楽を好んでいるので各世界を構成する『物語』が終われば撤退していく。絶対に破壊する、という条件は持たない。しかし、一度でも気に障れば絶対に物語を破壊する。特に敵とみなした主人公に対しての制裁は苛烈である。
一説には肉体を持たない神と呼称される不死性の超越存在は彼女によって自由を奪われ、上位世界に封印された罪人とも――
かくいう破壊神自体もある意味では罪人と言えなくもないが当人はそのことについて気にしていない。
「あたしは今も昔も自由に生きると決めた。それ以外の事象は些事だ。いちいち気にしていられるか。気に入らなければ潰して消して……。時には永遠の檻に入れて捨てる。……神っぽいだろ? 後は知らんな。面白い奴は好きだ。神の権利を使ってでも応援してやるぜ。……ただ、魔女は簡便な。あれは……、実に面倒くさい。……自業自得なんだが……。女神については語りたくない。その上の奴らも。というよりなんだい、あの野郎……。いけ好かないと思ったらそういうことかよ、クソったれ」
● ☆ ●
破壊神の役割は『隔絶した主人公』とその者が起こす――または起こした――『惨状』に対する制裁。
当然、それぞれの作品に使われている能力は強制的――または自動的に――無効化――または剥奪――され、弱体化させる。
異世界転移――または転生――の場合は内容によって度合いが変わったりする。
例えば戻るはずの地球や太陽系の星の体積が何割か削られたり、千年かけて地球に天文学的な数の大型天体をぶつけられる。
分かりやすいものならばまだマシで、脱出方法の無い隔離空間に強制的に放り込まれたり、不死化された上での禁固刑もありえる。
主人公の行動に左右されるが自分の主義が強いものほど反発力、抑止力として作用する。
● ☆ ●
破壊神自身も隔絶した能力を持ち、超越者然としているが個人能力としてはそれほど大した存在ではない。なにより上位存在が無数に存在している。
倒す分には攻略できない相手ではないが真の意味での討伐は不可能である。せいぜいが無力化だ。それでも一度発動した制裁能力は主人公の能力で消すことは出来ない。――対消滅ならば可能性があるかもしれないが、世界一つと引き換えになるのは決定事項である。
● ☆ ●
破壊神に目を付けられると並行世界や死に戻り、似て非なる世界への逃亡などが基本的に不可能になる。
回避するには異世界で得た全てを返上し、元の状態にでも戻さない限りは――
● ☆ ●
破壊神と出会うと強制的に制裁を受ける、というとそうでもない。気に入られれば見逃される。というよりも制裁を受ける方が稀有な例だ。
破壊神とて興味を持つ制目体のようなもの。面白いと思わせれば何も問題は無い。
便利な道具や主人公だけが持つ都合のいい発現能力は目を付けられやすい。
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超絶的な存在たる破壊神すらも回避できない敵が存在する。それも複数人――
世界は常に抑止力の規則によって安定化されるものである。だからこそゆらぎが大きければ反動も大きくなる。
『終わりよければすべて良し』、『バレなければ合法』という理屈は基本的に通用しない。あらゆる手段をもってして報いが発動される。
条件は決して主人公には知覚できないが異世界人であれば多少の予感として感じる可能性がある。それでも手遅れではあるのだが――
回避方法の一つとして破壊神そのものを排除する事は基本的に出来ない。不可能であり、世界に紐づけられた主人公が存在する限り、どんな言い逃れも通用しなくなる。屁理屈や概念的なものも当然含まれる。
● ☆ ●
破壊神は気まぐれで、世界に干渉することがよくある。
不死性でもあるので退屈を嫌う。神としての威厳はあまりなく、ただただ与えられた仕事を従事するのだが――時には自分も楽しみたくなる気質がある。
自分が参加するからといって制裁しない理由にはならない。時には主人公の前に立ちはだかり、あらゆる手段をもって断罪を発動する。これを防げるのは基本的に――
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数多の世界を渡る破壊神だが脅威ではあるが多くの世界にとっては些事に過ぎない一面がある。特に――彼女に目をつけられていない世界にとっては。
時間の概念すら破壊しうる破壊神の目的は主人公の完全抹殺であり、世界そのものを終わらせる。
では、その終わった世界はどうなるのか。
世界が『消滅』した後、新たな復活は無い。再創造されたとしても、それは新しい世界になっただけで真の意味での復活でもなければ回避でもない。
破壊神は仕事で主人公ごと世界を完膚なきまでに叩き潰し、時には永劫の停滞を与える。であればその仕事を与えた存在が居る、という証明でもある。
何のために、と勘のいい主人公は疑問を持つ。持たない方がおかしいけれど。
● ☆ ●
一見すると救いようがないのだが、あくまで大事なことは『主人公から見た世界』への制裁である。それ以外の存在から見る世界にとっては本当に――些事にすぎない。
規則破りするとすぐに発動すると思われがちだが、あくまで内容や質によって引っかかる程度だ。
破壊神が感心するような面白い発想であれば見逃される。それどころか協力まで取り付けられる可能性もゼロではない。
気まぐれな一面を持つ破壊神は己の都合で適当な理由付けで世界を破壊することはしないし、出来ないし、やってはいけない、とされている。神とて規則に縛られ、抑止力が働く。
条件が満たされない限りにおいて主人公は基本的に『なんでもあり』が許される傾向にある。反対に主人公の敵対者は条件に含まれないかと言えば、そうでもない。反主人公も当然、規則に抵触すれば制裁を受けてしまう。
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異世界物にありがちな主人公にだけ与えられる特別な能力というものがある。これは与えられただけでは何の害もない。しかし、特定の条件を満たす場合は制裁対象となる。その詳細――
規則の範囲内であれば超絶的な能力であろうと構わない。その辺りは各主人公が意識して調節すればいいだけである。
面白みに欠ける行動をとらない限り破壊神は決して敵対しない。それが分かっていれば何の問題もない。これはどんな主人公にも言える事だ。
能力を行使する上でどんな報いを受けるか常に意識出来ていれば、あるいは――
● ☆ ●
無関心は悪である。破壊神は娯楽を求める傾向にある。時には思い切った行動も好まれる。
ラスボスや魔王などは娯楽に飢える破壊神にとってはありがたい存在である。積極介入はほとんどしないが見守ってはいる。なにより世界を壊さないし、主人公以上に規則に従順である。
反存在として天上世界に居るとされる神もまた規則に従順な使途なので制裁を受ける確率――または可能性はとても低い。ほとんど受けないと断言できるほどに。
● ☆ ●
創造と破壊、消滅は世界にとって必要な処置である。しかし、主人公にとっては避けたい問題でもある。
抗う存在を破壊神は歓迎する。寧ろ祝福対象だ。だが、与えられた仕事であるので一度発動した制裁を止めたり無かったことにすることは破壊神自身には出来ない。ただし、一般的な破壊活動における能力――魔法や殴打などの物理攻撃――はこの限りではない。
決定事項となった場合、現在過去未来――並行世界や概念的なあらゆる事象全てに作用する。
それでも制裁を止めるだけの理由があった場合――その抑止を果たして誰がするのか。当然、破壊神に仕事を与えた存在であれば可能だ。――今のところ制裁を止めた例は一度としてないし、これからも無いだろう。ただ、ありえないとは言わない――
破壊神とて基本世界たる地球で例えるならば中間管理職のような立場だ。上司の命令には中々逆らえない。神の視点でも世知辛い問題となっている。
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余談だが――破壊神にとって『中性子ゴーレム』は玩具である。
異世界帰りの愚かな主人公が良く死ぬので重宝するとか。
破壊神は無敵に匹敵する存在ではあるが不滅ではない。だからこそ――である。
「最強ものとかいう物語の主人公が調子に乗っているらしいじゃねーか。唐突な能力キャンセルかましたらどうなるんだ? それでも強いのか、奴ら? ……強いのか。アナウンスさん? そいつがラスボスだろ? ……そうか。マップ表示にスキル強奪……。合間にカタルシス……。……で、そいつら本当に強いのか? 二〇〇年ほど幽閉しても構わないよな? 触れたら消滅するような破壊不能オブジェクトを投げ込み続けたらどうなる? 取り込む努力をする? ……そうか。ご苦労なこった。……それで地球に無事に帰れると思っているんだよな? 異世界で無双している間に地球の体積を削り取ったら同じこと言えるのか? ……言えるのか。……そうか。すごい主人公なんだな。……へー。死に戻りに並行世界、時間ループ……。色々とあるけど、それらを人間の身でどうやって解決するんだ? 酸素を必要としない超生物にでもならないかぎり……。はぁー、ご都合主義……。それをあたしが許すと本気で思っているんだな。それは楽しみだ。実に……、壊し甲斐があるじゃねーか。……そいつら日本人なんだよな? ……ふーん。冴えないけれど何故か正義感を持ち自身の主義を貫く、とかなんとか……。いろんな莫迦が居るんだな。莫迦は好きだぜ。……だが、それとこれとは話しが違うがな。あたしの『条件』に触れたら最後……だぜ。ちなみにあたしはいつ生まれたと思う? それと二兆年くらいは余裕で相手できるから。何せ破壊神だからな。かかって来いよ、愚かな主人公。ワンパンがお好みか? それとも魔法? だけどな、その時のあたしがお前らと同じ土俵に立っていると思うんじゃねーぞ。物理法則の無視から哲学、概念兵装……、なんでも相手になってやるぞ。時間はたっぷりあるからな。宇宙の法則の乱れ。事象崩壊。時空間に超次元。それと矛盾……。 色々あっていいねー、嫌いじゃないぜ。……だから、それがどうかしたか主人公共?」
言葉を喋る時点で実に人間臭い。これは元々彼女が普通――とは言い難いが――の人間であった証拠でもある。
ついでに破壊神とは彼女を表す単語としての呼称でしかない。
あと、名前に漢字が使われているが日本人ではない。今は名乗らなくなった彼女の本名など誰が興味を持つのか。しかし、それでも誰かは覚えている。
在りし日の人間であった彼女の事を。
「あたしの事か? 大したもんは無いぜ。聞くだけ時間の無駄だ。それより生意気な主人公ってどこに居るんだ? あ、ここじゃあ話題に出来ねーのか。……し、仕方ねーな。……あ? 広大な宇宙を移動する時、無音状態が続くから精神に異常が出るだぁ? そんなもんあたしに関係あるか? 宇宙程度の移動なんて実際は転移に匹敵する速度で移動できんだよ。こう、パパっとな。ほら、ここに生命体が住んでって漠然と分かんだよ。神だぞ、その程度出来なくてどうするよ。あ? 喋る相対速度? ……いちいちうるせーな。ぶっ殺すぞ」
破壊神は割と短気で飽きっぽい事も付け加える。
もちろん、我々の時間的感覚での印象である。
能力的には全能に近いが全知全能には程遠い。破壊神にも分からないことが多いから。そして、それは本人も自覚している。
攻略する時はそれぞれの世界の仕組みをしっかりと学ぶ。意外と思われるかもしれないが知識欲が人並みにあり、常に好奇心に満ちている。
破壊すればすべてが無に帰す。それが分かっていても――