不死者の日常
地の文は無いのよ( ˘•ω•˘ )
「あれっ今って何時だったっけ?この前遊んだのが、何時だったっけ?」
「アフッあっははははっ! いひゃヒャっ、なぁおいぃヒヒ……そろそろアレがよぉほほっホフ! 経つんじゃぁぁあねぇぇえへへヒュヒュ…」
「アックスうるさい。で、アレかあれも何時だったっけ? イヤイヤ覚えてるよ覚えてるって。もうそんな目で見ないで! 見ないでよ!」
「メメ君さ、忘れるなんて非情だよ。うん実に非情で冷酷だ。人は暖かくならなければいけない、冷たくあるべきではないのだよ」
「そうねぇ、セゼの言うとおり、忘れるなんて酷いわよぉ。いくら貴方でも……ねぇ?」
「ヒハハハハ…だせぇぇあれぁもう50ねんねんねんねんねんねんねんだぁあっはははぁ~はぁ~はぁ……ははっ!」
「みんな……覚えてる覚えてる覚えてる覚えてる覚えてるって言ってるだろ! 何だよ何なんだよ! みんな揃ってさぁ! タミャルが帰ってくるんだろ! 覚えてるよ!覚えてるってば! 煩いなぁぁ! 煩いって言ってるだろ黙ってよ!」
「なんだ覚えてるじゃないの。つまらないわぁ……本当に面白くない……」
「そうともメメ君。タミャル君が帰ってくるのだ。このまま冷たく迎えるのは良くないとは思わないかい? 冷たくあってはならないのだから。暖かく迎える準備をしなければ」
「それは良いわね! 何を用意しようかしら? やっぱりお花は必要よね、それとお食事の用意もしないと。セゼ、何かあるかしら? 暖かみのある貴女に聴きたいの」
「良い心掛けだと言わざるを得ないな。タミャル君は50年もの間、冷たい場所で孤独を感じていたのだ。暖かくする必要がある。となると暖かさを感じられる物が良いだろうね。タミャル君の性格を考えるに、最後は無くなる物が良いだろう。特に食べ物が良いだろうね、目の前で無くなるのだから。ボクはシチューを推そう。暖かく優しい味のシチューだ。メメ君、頼めるかな?」
「クククッ食いもんンンンッフフわぁ、おれが捕ってぇぇっへへははヒヒッ! 」
「セゼはシチューが好きだね。いいよ作ろう。タミャルの好物も用意しておかないと。……なんだよアリアメリア、文句あるのか」
「いいえ、貴方の手料理を思い出していたのよ。折角だし、リクエストをしても良いかしら?」
「そう…なの? なら良いや、後で教えてよ。作れる物なら作ってあげる」
「でぇぇ…ひひっ何時だぁぁっヒヒヒャヒャヒャッ!」
「4日後ね、私が迎えに行くわ。貴方達は目立ち過ぎるもの、また国が壊れてしまったら困るの。タミャルが居る国には、質の良い化粧品が揃ってるし」
「おっおほほ、おれぁぁ…いヒッ行ってくるぁぁああぁっはははは!」
「ボクはメメ君と贈り物を用意してくるよ。きっとタミャル君が暖まる物を見付けて来よう。さあメメ君、出発しようではないか」
「引っ張るなよ! やめてやめてよ! なんで…なんで僕ばっかり……やめろよ! あっち行け!」
▲▼▲▼▲▼▲
「んふふ…人間の国に入るのは何時以来だったかしら? 彼処、元々はキャラバンの休憩地点だったのよね。懐かしいわぁ…」
「さて。お買い物も終わった所で、そろそろタミャルを迎えに行くとしましょう」
「ごきげんよう。少し伺いたい事がありますの、セディール男爵家は此方で合っているかしら?」
「良かった。間違えてはいなかったのですね。私、旦那様にお話があるの。だから『今すぐに取り次いで』頂けませんか?」
「お初に御目にかかりますわ。ハンス・ド・セディール閣下。面倒なので手短に済ませましょう……貴方が買った『奴隷を譲ってほしい』の、そうね『公には出来ない』事だものね『貴方は何も知らない』方が都合がよろしいでしょう。では、貰って行くわね」
▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
「タミャル、迎えに来たわよ」
「……ぁ…」
「あぁ【奴隷紋】があったわね…。私では解けないし、帰ったらメメにお願いしないと。『出てきなさい』『帰る』わよ」
「……」
▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲
「ただいま、メメは居るかしら?」
「何? あ、タミャルだ、おかえり」
「んあぁ~っ! やっと解放された! 疲れた! ホント疲れた…そしてただいま」
「まあ入って。臭いからまずはお風呂行ってきて」
「はーい」
▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
「おかえりなさい、タミャル君。さあさあ座ってくれたまえ、君の為に用意した品々だ。遠慮することはない、受け取ると良い。そして寒かっただろう、冷たかっただろう、よく耐えた! もう心配はいらない、この家で私が、いや私達が居━━」
「セゼは相変わらずだなぁ。いや~50年の奴隷生活は中々堪えたよ~。あれ? メメは少し背ぇ伸びた? あっこのシチュー美味しいよ、メメが作った? それともアックス? 野菜が入ってるからやっぱメメだよね。いや~それにしても自宅は落ち着くねぇ、でもちょっとボロくなってきてない? 明日直すからアックスとセゼ手伝って」
「ヒヒッおま、超しゃべって…ヒヒャヒャヒャヒャ!」
「だって~メメの【奴隷紋】が強力過ぎるんだよぉ。超ストレス! て言うか、命令貰わなきゃ呼吸も出来ないってさぁ、強制力が凄すぎ! 何回死んだと思ってんの? はいアリアメリア、答えて」
「んん…200万弱、いえ違うわね、貴方なら100万を少し超えたくらい。多く見積もって140万回」
「数えて無いけど、だいたい合ってると思う。正解!」
「なんと! メメ君! そんな強力な【呪い】を掛けたのか、いくらボク達でも簡単に耐えられるモノではないだろう。分かっていてやったのかい?」
「文句あるのか? 全力でやれって言ったのはお前らだろ、僕は悪くない! 悪くないんだ!」
「えぇ、貴方は悪くないわ。それに私達は既に壊れているのだから、また壊れたところで何も変わらないもの。ねぇ? タミャル」
「まっ、そんなとこだね。それにメメがこの罰ゲームになってても、自分で解けない様な呪いを自分に掛けたはずだし。ウチらの中でも、メメは飛び抜けて公平だ。メメがやった事に、ケチはつけられないさ」
「む、その通りだ。ボクとしたことが、なんて事を言ってしまったのだ。すまないメメ君…」
「クケキャゴホッゴホッ……オエェッ! …オゥエェ…ふひっふひひ」
「アックス、キミは馬鹿なの?」
「アックスはただの馬鹿ではないわ、とびきり賢い馬鹿よ」
「ボクではフォローしきれない程に、事実だ」
「アックスうるさい」
「俺ぁ最古参だぁ、お前らだっていずれこうなる。俺の姿をよく見とけ!」
「うわ! 急に正気を抜かないでよ……って、え? アックス1番古いの!? メメじゃないの!?」
「知らなかった? 因に、2番目に古いのが私。メメは3番目、セゼが4番目、その次に貴女。ちなみに、普段のアックスが正気で、まともなのが狂気よ」
「セゼは知ってるから別に良いけど、そうなの? てっきりメメ、アリアメリア、アックスだと思ってた」
「安心すると良い! 何を隠そうボクも今知った事だからね。タミャル君と同じ考えだったのさ」
「ウヒヒヒヒッメメっとクキキキ…セゼまでぇぇ開いたからなぁっはははは」
「あっ戻った」
「ふふっ。そう言えば、タミャルが来てから賑やかになったわね。アックスは始めからだったけど、私もメメも会話はしても騒いだりはしないし、セゼはいつも何処かに行っちゃうものね」
「確かに、タミャルはよく喋るね。その割りにうるさくないから、僕は結構好き」
「私もよ、タミャルが居ると明るくなるものね」
「ボクは皆が大好きさ!」
「うへへ……面と向かって言われると、流石に照れる…」
「クケケケケケッあの連中よぉ…っブフフッ! また来るっ来る来るくるくルクルクルクルクル」
「うえっ、次は僕の番だ……あいつらいい加減居なくなんないかな。めんどくさいしうっとうしいし……死ねばいいのに」
「全面的に同意するわ」
「チョー同意ィっヒヒヒヒ」
「なにそれ? セゼ?」
「ボクも知らないな。アリアメリア君、どうか教えてくれないかい?」
「あぁ……貴女達は今回が初めてになるのね? 可哀想に…」
「勿体付けないで教えてよ」
「神とその使徒。存在してはいけない私達を消しに来るの。何時も半殺しで追い返してるけど」
「神様? 半殺し?」
「そう。生命の女神<リチア>と軍神<オライ=ヘレオナード>の連合軍。主神<セゼファルト>の<使徒>」
「セゼ、神様なの?」
「ボクの名前の由来はそれだからね。格好いいだろう」
「でも半殺しだよ?」
「……一思いに殺ってほしいかな」
「続けるわよ? 基本的には、<セゼファルト>の<使徒>を、<リチア>と<オライ>が率いて……この家にやって来るわ。<使徒>はただの人形だから、一匹残らず滅殺。<リチア>は動けなくなる程度に痛め付けて、<オライ>は9割9分殺し。<セゼファルト>に対しては、出来れば<使徒>から逆探知してダメージを与えてほしいわ」
「オーウ……」
「アリアメリア君達は、今までそれをやっていたのかい?」
「ええ。前回はアックスがやったわね。えっと先ず<リチア>を達磨にして凌辱しながら半殺し、その姿をずっと<オライ>と<セゼファルト>に見せ付けて、<リチア>の目の前で<オライ>を滅多刺しにして9割9分9厘殺し、人形の<使徒>が感情を持つレベルで<セゼファルト>に間接拷問したわ。一切休ませずに、けれど精神は壊さずに、中々面白い見物だったわ」
「…それは……その、お気の毒と言うか……その…」
「何故そこまでするのかな?」
「だってあいつら、私達を消滅させに来るのよ? 何処に遠慮する必要があるのかしら。あっ、神殺しは面倒だからやらないだけよ。神の代替わりとか後釜とか、こっちから願い下げだもの」
「そう言うアリアメリアは、僕が治癒させなかっったら神殺しを成功させたクセに。何で僕が<オライ>なんかを治さなきゃいけないんだよ」
「メメだって、<リチア>の精神を壊してたじゃない。<オライ>と<セゼファルト>が、異界の神に頭を下げたらしいわよ」
「あんなにも脆いって知らなかったんだよ。<腐海>が発狂する程度の精神攻撃だし、神なんだから耐えると思ったんだ」
「あ~、<腐海>よね? 神界から追放されたって言っても、力は上位神だったのよ ……多分」
「それ、ボク達もやるの?」
「やりたい?」
「やりたい!」
「いつかはと思っていたのだけれど、こんなに早く機会があるなんてね」
「2人とも。一緒やらない? そしたら僕が楽なんだ」
「じゃあ皆でやりましょう。私とメメとアックスの3人ではやったじゃない。セゼとタミャルも入れて5人でやるの。それならきっと楽しいと思うわ。反対意見はあるかしら? 『無い』わね、決まり」
「うわぁ…大人げないな、アリアメリア。こんなのに『令言』を使うなんてさ」
「アックスなんて普段から《魂壊》使ってるわ。貴方が使わないだけではなくて?」
「違う! 【呪術】はそんなじゃないんだよ! 一緒にするな!」
「まぁまぁ、落ち着きたまえよ。アックス君、そのお祭りはいつ頃になるんだい?」
「うししし……ぁっあと10日ちょいっヒヒヒヒッ」
「その神達も懲りないよね、いつも半殺しにされるのにさ」
「あっちにはあっちの都合があるのでしょうね。<セゼファルト>に聞きに行く? 神界への通路は開けるでしょう?」
「えぇー、あれ疲れるからヤダ」
「ボクも同意見だね。彼処には温もりがないから行きたくない」
「じゃ、来たら聞いてみましょう。……それに、別のお客さんが来てるみたいよ」
「ああ、今代の<勇者>かい? あれならこの前に〔濁して〕おいたよ。タイミングをみて〔汚せ〕ば、後は勝手に〔浸透〕していく筈さ。」
「でもまだ白いままでしょ? 僕も<陣>に【呪い】を掛けておいたんだけど、あんまり効いてないし」
「私でも相性悪そうね。アックスとタミャルならどうかしら?」
「タミャル君1人で充分だろうね。メメ君はどう思う」
「タミャルなら大丈夫だね。でも一応<命屍>を持っていく
と良いよ」
「じゃあ奴隷明け記念ってことで、派手にやってくるね! 行ってきます!」
「元気ねぇ」
「もう見えないし」
「ボクが実況しよう!」
「アーヒャッヒャッヒャッ、ンヒヒヒッ!」
▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
「あっ! <勇者>さんいらっしゃーい!」
「■、■■■?」
(ん、君は?)
「んん……やっぱ聞こえないか~。ウチはタミャル! この先の家で皆と暮らしてるんだ」
「■■■■■■…■■■■■■■■■■!■■■■■■■■、■■■■■■■■!」
(タミャルだと…君は<拒絶した者>なのか! 神に叛く者として、討たせてもらうぞっ!)
「なに? 聞こえなーい……って、危ないよ! その剣本物?」
「■■■■■■■■■■! ■■■■■」
(巫山戯た事を抜かすな! <拒絶した者>)
「本当に意味分かんない! 何なのさ、お客さんを迎えに来ただけなのにー! ……糞ガ、殺スゾ」
「■■■■■■■! ■■■、■■■■…■……■?」
(本性を表したな! お前ら、気を付け…ろ……え?)
「無駄、モウ死ンデンダヨォ……君だってほら。これ、君の〝命〟だよ?」
「…■■……■■……■■■、■■■……」
(…何を……ぐっ…お前は、ぃ…たい……)
「んふふっ、優秀な〝命〟を拾っちゃった。何に使おっかなー、楽しみ! 」
▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
「たっだいまー!」
「おかえり、タミャル君! 見ていたよ<命屍>は使わなかった様だね。しかし流石だ、君の〝転命〟は何時見ても無駄が無い。実に美しい!」
「うん。僕もその技術は取り入れてる。お陰で研究も捗るよ」
「いや~、皆の指導があってこそだよ。もう、ただの素人だとは言われないね!」
「まぁ確かに凄いけれど……で、彼らの死体はどうしたのかしら?」
「はっ! しまった! 忘れてました!」
「全く…お庭が臭くなってしまうじゃない。燃やせるゴミは、ちゃんと燃やしておきなさい。……ところで、アックスは何処へ行ったのかしら?」
「はーい、気を付けまーす」
「アックス君ならついさっき、笑いながら海へ行ったよ」
「僕が魚を頼んだんだ。この前の煮付けが美味しかったから」
「あら…仕方ないわね」
「何か用事でもあるのかい?」
「お呼びでないお客様を、お迎えするアドバイスが欲しかったのよ。折角全員が参加するのだから、楽しむためには全力を尽くしたいもの」
「確かに! アックスは上手いよね、そうゆうの」
「彼はお祭りが好きだからね。ボクも祭りは好きだが、流石に企画は人並みだよ」
「……こっち見て言うな! うるさい!」
「メメのやり口は陰湿だものね。私と同じよ」
「アリアメリアと一緒にしないで。僕のはそんな簡単じゃない」
「ふーん……『撤回なさい』」
「それは【無効】だ。僕には聴こえない」
「……はぁ、やっぱり相性が悪すぎるわ、降参よ」
「仕方ないだろ。僕はアックスの前に立てないんだから」
「でもこれが楽しいのよね」
「テーマが尽きないからね」
「イヤイヤイヤイヤ! ウチら死ぬかと思ったんだけど!? 久し振りに見たけどさ、前より激しくなってない?」
「言われてみればそうだね。ボクは身近に見てたから、変化に気付かなかったようだ」
「ふふっ、メメに効くまでは、引退出来ないわね」
「じゃあアリアメリアはずっと現役だよ。僕はアックスを止められたら引退する」
「ではボクは、皆を看取ったら引退しよう。皆を1人には、このボクが絶対にさせないと誓おう!」
「えっ? じゃあ……えっと、皆の命を盗めるように頑張ります!」
「えっ……タミャルが盗むの? じゃあアックスは後回しにしないと……」
「タミャル。何事も程々にしておきなさい」
「タミャル君には成長限界が無いんだよ。きっとボク達の誰よりも高みへ登るだろうね。たがね、まだまだ追い付かせはしないのさ」
「アックスとタミャルはずるい。僕はもう、容量が殆ど無いのにさ」
「だから外部保存してるのね。古いモノは消さないのかしら?」
「全部必要なんだ。【呪術】は学問だから、些細な記録でも大切にしないと」
「貴方が言うのなら、そうなのでしょうね。手伝いましょうか? 『記憶せよ』って」
「それが出来れば苦労しないよ。縛りが解けたら忘れちゃうんだから」
「自力で抜け出すメメがおかしいのよ。吐いた言葉は戻らない筈なのに」
「そんな事言ったら、【呪術】も『令言』も〔汚濁浸〕も効かないタミャルはどうなのさ。もうアックスしか居ないじゃん」
「あぁ、タミャルもおかしいわよね……」
「うん……」
「待って、それ以外があるじゃん! 何でそうなるの!? まだ皆には及ばないよ」
「まだ、ね…」
「まだ、だね」
「諦めたまえよタミャル君。それぞれに、相性があるのだから。不得手が無い、とでも思っておけばいいだろう?」
「それにどうしても駄目なら、私達は物理で迎え撃つもの。安心なさい」
「あははー…おかしーなー…皆の特技を無効にできるのに、勝てる気がしないなー……」
「それが言えるうちは楽しいものよ」
▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
「うん。美味しい」
「んっんっんん……んぐっ、ンヒハヒヒヒヒふひ!」
「ちゃんと飲み込む辺り、流石アックスだよね」
「まぁ、それはそれとしてだけど、とうとう来てしまったわね。食後まではのんびりしたかったわ」
「僕達古参は恒例の、セゼとタミャルは初めてのお祭りになるか。今回は楽に終わりそうだね」
「良く考えると、刺激に飢えた私達から、嫌われて飽きられたのよね。相当なものだわ」
「呑気なものだな、二人とも。アックス君とタミャル君は外へ駆け出して行ったよ」
「僕達の心配はいらないよ。セゼも楽しめばいい」
「そうね。ちゃんと帰って来てくれれば、寂しくはないわよ」
「そうかい? では、ボクも遊びに行ってこよう! 去らば!」
「行ったね。アリアメリアはどうする?」
「勿論、追いかけるわよ。でも先に、食後の珈琲を一杯頂けるかしら?」
「良いよ。二人だけだし、とっておきの豆を出してあげるよ」
「あら、良いの? それはメメのお気に入りではなくて」
「お気に入りだからだよ。誰かと一緒に飲みたいって思ってたんだ。それに、アリアメリア以外は珈琲を飲まないじゃないか」
「だいたい、お酒か紅茶だものね。メメとは味の好みが近いから、一緒に飲食するのは楽しいわ」
「僕もだよ。アックスだと、こうはいかないもんね」
「アックスとタミャルはセットよね。セゼは誰とでも合うでしょうけど、セゼはセゼになるでしょうし」
「まあそうなるよね。はい、淹れたよ」
「メメも普段からこうなら、可愛いげがあるのに」
「悪かったな、可愛いげが無くて」
「無いわけじゃないわよ。怒った顔も可愛いもの」
「見た目だけ、アリアメリアだってそうじゃん。見た目だけは、非の打ち所がない美人だよ」
「今の私達には、ただの褒め言葉ね」
「全くね」
▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
「あっ、殆ど終ってる」
「やっほー! 遅かったね!」
「珍しくアックス君が、獲物を譲ってくれたよ。いや~楽しかった!」
「おい、まだ終わってねぇぞ。メインイベントが残ってんだ、体力は残しとかねぇとなあ!」
「アックス、かなりテンション高いね。また正気が抜けたんだ」
「貴方達、神は殺しちゃ駄目よ。殺すなら後継を見つけるか、覚悟を決めなさいね」
「あと、限り無く死に近付けるのを、長く繰り返すのもやめた方がいいよ。アックスはやり過ぎて亜神に寄ってるからね。まぁ《魂壊》の性質的に仕方ないんだけど」
「つまり、アックスと同系統のウチは注意しろってこと?」
「タミャルは、盗らなければ大丈夫だと思う。でも気を付けて」
「了解! でもいざってときは、メメとアリアメリアが助けてくれるんでしょ?」
「端から頼ろうとしないで。折角だし、アックスとセゼに手加減を習って来なよ」
「私達は後ろで見守っておくわね。手出しはしないから、気を付けて行ってらっしゃい」
「手出ししないって……助けてくれる気無いでしょ!」
「あっ、アックスとセゼが行った。タミャル、置いてかれるよ」
「アリアメリア。手出ししないってさ……これ以上は、だよね?」
「メメ、貴方だってそうじゃない。既に仕込み終えているのでしょう」
「まあね。僕達はのんびり観戦でもしておくか」
「遊戯盤でも持ってきましょうか」
「この辺に、セゼが持ってきてたはず……あった」
▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
「っし、これで<使徒>は終わったな。タミャル、セゼ。お前らに神は譲ってやるよ」
「セゼ! セゼ! <リチア>をやらせておくれ!」
「別に構わないが、タミャル君。きちんと手加減はできるのかい?」
「……セゼのが終わったら、ウチのを見ててくれる?」
「いいとも。では、ボクからやらせてもらおう! <オライ>は何処へ?」
「<リチア>を連れて神界に帰ったよ」
「なんと! 仕方ない……よっと、ちょっと神界へ行ってくるよ。ついでに<リチア>も連れて来ようか?」
「よろしくね~」
▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
「やあやあ<オライ>君。始めまして、ボクはセゼと言う。早速だが、ボクに着いて来てはくれないか? おっと、<リチア>君。逃げる何て薄情だね。当然、君も一緒さ。寂しくはないだろう」
「それ、何か問題があるのかい? 別に君達を殺そうだなんて思っちゃいないさ」
「いやいや、何か勘違いしているみたいだね。君達は、ボク達を消滅させに来たんだ。だったら、消滅させられる覚悟位は出来ているのだろう」
「えっ? そんなの決まってるじゃないか。君達を殺したら、代替わりが起こってしまうだろう。後釜になるのは嫌だし、代替わりして、今よりも面倒になっても困るんだよ」
「はっはっはっ、まぁつべこべ言わずに着いておいで」
「……〔汚濁〕逃げないでおくれよ。手間なんだ」
▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
「ふーん、そんな事言ってたんだ……」
「やっぱりかい? おかしいと思ったんだ。いくら阿呆だと言えども、あれだけ痛め付けられたら覚えている筈ではないのかとね」
「━━記憶の削除…でも……いや、これは初期化か…だとしら納得か。…そうすると……━━」
「メメ君? あぁ…これは聞こえてないな。アリアメリア君、メメ君を宜しく頼むよ」
「……全く。まあいいわ、貴女も彼方に混ざってらっしゃい。私達はここで待っているから」
「すまないね。恩に着るよ」
▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
「ひーまー! …ひーまーだーよー! ねぇ! 暇なんだけど!」
「うるさい! 何で僕の部屋に居るんだ、早く出ていけ!」
「だって皆出掛けてて暇なんだもん! お願い、話し相手になってよぉ……」
「僕だって忙しいんだ、邪魔するな」
「わかった! 手伝いをすればいいんだね!」
「何でそうなるんだよ……はぁ、無闇に触らないでよ」
「任せて! 何すれば良いの?」
「黙ってそこで見てて」
「頼むよ~ウチも関わらせてよぉ~」
「…………呪術書、次元異相跳躍の六節にある、同一箇所に発生する力場。それの閉鎖次元における跳躍不可時、分散する呪力について。実際にやって調べて、レポートに纏めておいて」
「ヨシ来たまかせて! 箱庭の呪具を借りてくよー」
「騒がしい。さてと、続きを……」
「やって来たよーっ! 効果はね、跳躍自体は不可能ではないみたい。ただ、閉鎖次元の異相はほぼ同じだから不可能として扱うんじゃないかな? で、呪力は現象の発現に7割消費、不発によって2割~2割5分は未消費、残りは周囲に霧散するけど、回収可能!」
「チッ……やっぱりそうなるのか。ありがと、帰って良いよ」
「イェーイ! おっつかれさまでしたー!」
「これで静かに続きを━━」
「ちっがーーう! もっと! もっともっともっともっともっと! もっとウチを構ってよー!」
「黙れ。僕は忙しいんだ、出ていけ」
「セゼ、セゼ~! メメがいじめるぅ~」
「なんてことだい!? 可愛そうに……タミャル君、さあこちらへおいで。ボクが慰めてあげよう」
「いやだ、いらない。なんか気持ち悪い」
「タミャル。その言い方は良くない。セゼに謝りなさい」
「なんだいメメまで、君はウチの親か」
「そうだよ。僕は君の保護者だ」
▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
お疲れ様でした(´-ω-`)