検討会の準備係 藤堂真帆の苦労
2018年12月、東京は霞ヶ関。
霞ヶ関にあるビルの地下にあるカレー屋で
カツカレーを食べながら女性が頭を悩ませている。
彼女の名前は藤堂真帆。
国の研究員募集という事で応募したところ、
魔法庁の新設の検討会メンバーに振り分けられたのである。
魔法、そんなもの有るはず無い。
東京のオフィス街を見渡せば、魔法のほうきは無く普通に自動車が走り。
テレパシーでの会話は無く、普通にスマホだ。
しかし実は魔法の基礎のようなものの発見がなされ、
日本の特許庁への出願が有った。
出願した発明者は日本人。
特許を取る前に論文発表をすると公知の事実になってしまう、
つまり皆に知られてからは特許が取れない。
特許が取れないと権利が取れないという事。
それが日本政府にとって、世界に先駆けて早く動けることとなった。
しかし悠長なことは言ってられない。
日本の特許申請の審査中に日本で法整備の準備をすべきである。
この発明者は日本の特許が通ったら
次は世界中の特許を出願するだろう。
おそらくは先ずはEU。
EUは1箇所に特許出願したら複数の国の特許として効果が有る。
特許の申請は1つの国に出して数十万。
国の数かける数十万という出費をするだけに値する技術だが、個人が出すには厳しい膨大な金額。
しかし個人で出願している様子を見るに、企業と組む様子は無し。
いずれにせよ他所の国で特許出願された途端に
魔法の存在が他所の国知られる事となり、軍事利用などされる事は目に見えている。
そして特許の出願をし終えたら、恐らく論文発表されて誰でも読める状態になってしまうだろう。
そうすると世の中で魔法を悪用した使った事件が発生するだろう。
科学技術のあり方も変わってくるだろう。
その前に日本政府は何とかして準備せねばならない。
世界中に先駆けて制度を準備し、世界が気づいた時には1つのルールを日本が提示すべきと。
そのためには安全性、知的財産権、犯罪抑止などの準備が大変。
自分が割り振られた仕事は、
有識者やお偉いさん方が魔法に関する法整備をする前の検討会の準備。
1回目の検討会まで1ヶ月ぐらい。
うむむ、時間が無い。
安全性は?、有効性は?、悪用防止は?・・・考え出すとキリが無い。
先ずは国民が魔法を使えるようになったら
どんな問題が発生するか?という想定を書き出して行くことにしよう。
気がつくとカツカレーの皿は空に。
ああ、しまった。
考え事しながら食べたので
味わうこともせずに腹に収めてしまった。勿体無い。
次の客が席を使えるように
サッと席を立ってレジまで行き、
スマホのICカードで代金を支払い。
正面のビルへと歩いていった。
昼からのお仕事、頑張ろう。