プロローグ
バンッ!
「はぁ、はぁ、はぁ」
毎日飽きる程座っている石でできた椅子に何時ものように堂々と座っていると、突然部屋の扉が開き、そこからまだ成人してまもないような、細く、そしてとても美しい女性が入って来た。彼女は自分にとって、ずっと見守り応援していた人だ。
しかし、彼女は所々傷があり、血が流れている。さっきの事もあり息切れも激しく、まだこの部屋に入ってから顔を上げず、手を膝につき息を整えている。
そんな彼女に、俺は歓迎の意味を込めて話す。
「...来たか。」
ほんの少し前まで聞こえていた沢山の叫び声や悲鳴が嘘のように静かなこの空間には、その声は気味が悪い程よく通った。
ここまで沢山の人の期待と希望を背負い、責任感に押しつぶされそうになりながらたどり着いた彼女は、やっと最後の目的の場所に着いたうえ、最大の敵にかけられた迎えるような言葉を聞いたせいで、泣いてしまった。
おそらく、彼女は自分を責めているんだ。今まで頑張って来たことが一瞬で崩れてしまった時も泣かなかったのに、彼女にとって最大の敵であり、一番謝りたい相手の俺が迎えるような言葉を言ったから。
彼女は、優しすぎる。
その優しさに漬け込んで利用する人が沢山いた。彼女だってやりたく無いのに、人の心を持っているのに...。
「どうした?敵のボスを前に大泣きか?」
元気付けるために、そんな不器用な挑発じみた言葉を投げると、彼女は泣いたまま俺の目をまっすぐ見て言い返す。
「だって...あんたがっ!あんたがそこにいるのはぁっ!」
「お前はどこまでも優しいな。」
今まで期待されてばかりで褒められたことに慣れていないのか、優しいというと彼女の顔は泣くのを忘れ真っ赤に染まり、少しパニックになっていた。
暫くし落ち着いたのか、彼女は真剣に俺に問いかけて来た。
「ねぇ、私どうすればいいと思う?バカだから分からないよ...。今まで、私はこのことだけを目指して、正しいんだって一生懸命頑張って来た。でも、私は利用されたんだって、私は間違ってたんだってわかった途端、どうすればいいか分からなくなっちゃった。」
「そうか、ならば俺が教えてやろう。」
「え?」
そう。お前のするべき事はもう決まっている。
「お前は_______」
ずっと一人で頑張っていた、優しすぎる君のために。そして、俺が初めて愛した君のために。
俺は_______
お前に殺されよう。