自己愛がーる
愛とか知らないです。
いったいどーいうものなのでしょうか。
主人公のjkから学ぼうかなぁ……。
私には2人の私がいる。
今の私と、もう1人の私。
私達にはルールがある。
もう1人の私と、交換日記をすることだ。
私達の人格は1日ごとに入れかわる。
だから、1日の終わりに細かくその日の出来事を日記にまとめて、次の日の朝もう1人の私がそれを踏まえて1日を過ごす。
私は高校に通っており、今は2年生だ。
学校には2人の仲の良い友達がいて、学校でのほとんどの時間を私を含む3人で過ごす。毎日、休み時間はずっと一緒にいるのだ。私はとても2人のことを大切に思っている。
でも、私にはその2人と同じくらい、場合によってはそれ以上に大切な人がいる。それは、私の彼氏である。
私には、隣のクラスに彼氏がいる。去年同じクラスで、そのときに仲良くなって付き合うことになった。学校での時間は友達2人と過ごすのだが、放課後はその彼氏との時間となる。
学校を出て、町へ行き、買い物をしたり、カフェで話したり、ゲームセンターへ行ったり、なかなか楽しい時間を過ごしている。
彼は爽やかな雰囲気で、顔もイケメンの部類に入るだろう。私とは気も合うし、趣味も合う。話のネタも尽きないし、本当に自分で言うのもなんだがお似合いカップルだろう。
私にとって、彼はとても大切な存在で、いなくてはならない存在だ。本当に私は彼のことを愛している。
……私の次に。
正確には、もう1人の私の次に、だ。
私は、もう1人の私が好きだ。
もう1人の私も、私のことが好きだ。
私ともう1人の私は、互いに愛し合っている。
もちろん、2人の友達は大好きだし、彼のことも心から愛している。これは事実だし、私にとって間違いないことだ。
しかし、私の私への愛はそんなものではない。レベルが違う。比べるのもあきれるほどに差がありすぎる。
彼や、友達の望みには基本的に応えたいと思うし、ある程度のことならこころよく引き受けるだろう。
彼や友達に物を貸してと言われれば大抵貸すし、宿題を見せてと言われてももちろん見せる。過去のこと、嫌なこと、恥ずかしいこと、悲しいこと、たぶん私のほぼ全てを話してしまえるくらい信頼している。私の物なら何だって見せれる気がする。
でも、もう1人の私には他にもうひとつだけ、友達や彼には見せられないが、見せられるものがある。
それが、私と私の交換日記だ。
私の2つの人格については、誰にも話していない。これだけは、友達にも、彼にも言えない。
このことを知っているのは私ともう1人の私のたった2人だけだ。これが、私にとってはとても重要なのかもしれない。
友達や彼と、もう1人の私との差はこの交換日記くらいかもしれないが、そこにある差は私にとってあまりにも大きいものなのだ。
実際にお互い直接話したことはないが、日記を通じて会話が出来る。彼女は賢い。私と同じくらい頭が回るし、学校でも私達が二重人格であることがばれないようにとても上手くやっている。
そうでありながら、好奇心が強かったり、少しかわいいところがあったりする。見た目だって、私なんだから可愛いことに間違いない。まぁ、元が私なんだから頭の良さや可愛さなんかは同じようなものなのかも知れないけれど。
私は、もっと私の愛が欲しい。そして、私も、私の愛がもっと欲しいはずだ。
今日は、私に私への気持ちをこめて、今日の私の写真を日記に挟んでおこうと思う。
きっと、それを見た私は喜ぶし、私は明日の私の写真を明後日、見ることが出来るだろう。非常に楽しみだ。
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翌日
今日、昨日の私から写真を受け取った。
なんて嬉しいんだろう。
私は普段あまり写真を撮らない。撮ったとしても、風景や物の写真だ。人物は基本的に撮らないし、それは友達や彼も同じである。なんとなくだが、写真は特別なイメージがあり、そんなに毎日パシャパシャ撮るものでもないと思うのだ。
そんな私が、自分の写真を撮って私のために置いてくれたのだ。やはり、私にとって私は特別なのだ。
私は昨日の私を見ることが出来た。なんて、可愛いんだろう。なんて魅力的なんだろう。さすが、私。すごい。
私も、私のために今日の私の写真を撮って挟んでおこう。きっと、喜ぶはずだ。どんな顔をして喜ぶのだろう。また、明日の私が見れたらいいなと思ってしまう。写真も、交換日記と一緒に取り入れるべきかもしれない。
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数日後
今日も、私のためにまた写真を撮った。
でも、今日の私の写真はいつもと違う。
今日の写真は彼とのツーショットだ。
最初の写真をくれたのは私ではない方の私だ。
ならば、今度は私がもう1人の私をもっと喜ばせてあげよう。
私にとって私のことを考えている時以外で最も幸せな時間はやはり彼といるときか、2人の友達といるときだ。
そんな幸せな時間を、私は私と共有したいし、私も私と共有したいと思うに違いない。
それに、私の幸せな瞬間は、もう1人の私にとっても幸せだろう。だって、私が幸せなのだから、私も幸せになるのは当たり前のことだ。
今度は、私の幸せな時間を少しでも共有出来るようにしたいと思う。明日の私の反応が楽しみだ。
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翌日
昨日の私から彼とのツーショットの写真を受け取った。
なんて幸せそうな私なんだろう。
こんな幸せそうな私を見れるなんて、私はとても幸せだ。
昨日の私はこの幸せな気持ちを共有したかったんだろう。
ということは、今日の私も今日の幸せな時間を愛する私と共有出来るのだ。なんて、素晴らしいアイデアなのだろう。
やっぱり私は賢い。すごい。
じゃあ、今日は学校で友達と写真を撮ろう。
その幸せな時間を、明日の私と共有しよう。
こんなに幸せな日々が送れるのも、全て私のおかげなのだ。
私に感謝しなければ。
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数日後
最近は、もう1人の私と彼や友達との写真を日記と共に交換している。
彼も友達も、写真を撮るのはもともと好きじゃなかったから、私が撮ろうと言ったときは驚いていたし、少し嫌そうだったが、私のためにと撮ってくれた。
それからは、私は毎日写真を撮るようになり、友達や彼も写真を撮るようになった。
みんなも、私のことを愛してくれているのだ。
やっぱり、私は幸せだ。
私は彼や友達がとてもうらやましい。だって、私との時間をリアルに送って、その場でこんなに幸せそうにしているのだから。
だけど、これも私と仲良くしてくれる、大切にしてくれる彼や友達だから許されることなのだけれど。
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数日後
私は最近彼や友達が憎い。
どうして彼女たちや彼ばかり、私と一緒にいられるのか。
あんなに仲良くしていいのか。
友達は、私と泊まったりしている。
彼なんかは私とキスまでしている。
私はこんなに私を愛しているのに、私は私と泊まることもできないし、私とキスも出来ない。手すらも繋げない。触れることもできない。こんなに、こんなに愛しているのに。
幸せそうな私と彼や友達の写真は私にとって、やはりとても幸せなものである。
しかし、同時に憎しみをも感じてしまう。
大切な存在であることに違いはないが、私にとって私以上に大切なものはこの世に存在しない。
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数日後
ついに、私はやってしまった。
彼を殺そうとした。
本当は殺すつもりだった。
しかし、失敗した。
彼を登山に行こうと誘い、山頂付近の崖から彼を突き落とす予定だった。しかし、私には出来なかった。というよりは、それを実行に移す前に彼が先に崖から落ちてしまった。石で転んで、崖付近まで行ったところで取り乱してしまい、道から踏み外したのだ。彼は、それほど勢いはなく崖を滑るように落ちたので命だけは助かった。しかし、意識不明で、かなり危ない状態らしい。
私は罪には問われないが、彼が死ぬことはなかった。
私にとって、もはや邪魔で憎い存在であった彼。
元々殺す予定が少し変わってしまったが、このあと死ぬのも時間の問題かもしれない。
これで、私の憎い存在が1人ほぼ消えたようなものだ。
私の私にあんなにべたべたしたのが悪い。
私を本当に愛しているのは私だけだ。
これ以上の愛なんて、地球上、いや、全宇宙上にも存在しないだろう。
これで、私の幸せは守られたのだ。
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翌日
昨日の私が、彼を殺そうとした。
そろそろ私の彼への憎しみも限界に達していたから、ちょうどよかった。私が罪に問われることが無くてよかった。大事な私が殺人の罪で捕まって悲しむところなんて想像もしたくない。
私があんなに私のために頑張ったのだ。やっぱり私は私だけを愛しているのだ。私達の愛は誰にも邪魔させない。
でも、さすがの私でも、彼の意識不明なんて素直に喜べないかもしれない。私だって人間なのだから、少しの罪悪感や、悲しみもあるだろう。
そうだ、私から明日の私へビデオを撮ってあげよう。
録画した私の動画を見れば、きっと幸せになってくれるだろう。
なんといっても私なのだから、私のことはわかっている。
まずは10分くらいでいいだろう。
これで、元気を出して欲しい。
頑張れ、私!
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数日後
動画を送り合うようになってから数日がたった。
私は昨日の私を見ることでとても幸せな気分になる。
なんといっても、私が映っているのだから。
かわいくて、賢くて、きれいな私。
最近では動画の時間がどんどん長くなってきて、3時間くらい動画を見ている。そして、私も3時間ほどの動画を撮って明日の私にプレゼントしている。
3時間も何を映しているかと言うと、ただ私の日常と、少しのカメラ目線での話があるくらいだ。
これだけ長くなってくると、日常生活に食い込んでくる。
私のためだからそれもいいのだが、私は私の日常を見れるのがとても嬉しい。そして、交換日記にその動画の感想を書きあったりもしている。
なんて、幸せなのだろう。
こんなに自分を愛せる時間が増えるなんて。
彼はまだ入院中で、意識が戻っていないようだ。
私にとっては、その方が好都合かもしれないが。
また、私の姿を見るのが楽しみでならない。
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数日後
私は学校へ行かなくなった。
部屋からも出なくなった。
私はずっと動画を見ている。
部屋の中を4つのアングルから撮った、昨日の私が部屋で1日過ごす様子を起きている時間ずっと見ている。そして、明日の私も、今日の私が昨日の私を見ている映像を見るのだ。
初めは親がとても心配していたのだが、2、3日前からご飯を部屋に持ってきて、私が食べ終わったり、もう要らないと紙をはっておけば持っていくだけになった。
私は可愛い。とても、魅力的だ。
こうして横になっている姿をみるだけでとても幸せなのだ。
私は私を本当に愛している。
本当に、ずっと、いつまでも見続けられる。
こうして、私を見ている私を見ることで、私の愛を感じている。
愛し合うとは、こういうことなのだろう。
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数日後
私はもう、2日ほど何も食べていない。
そろそろ、睡眠も取れなくなってきた。
もう、部屋の外のことなんて何もわからない。
昼か、夜か、何月何日か、何曜日か、そんなこと、とっくにわからなくなっている。
正直、もはやどれが昨日の自分で、どれが今日の自分かすら怪しくなってきている。
ふとしたときに寝てしまって、次に起きたときに寝るまでの自分を見ている。
なんだか、何をしているのか、わからなくなってきた。
私は可愛い。魅力的だ。何をしていても、寝ているだけでも私は幸せになる。
そう、思っていた。
しかし、最近、何かが足りない。
幸せなはずなのに、幸せでない。
映像の私はよく泣いている。
その映像を見て、私も泣く。
しかし、なぜ泣いているのかわからない。
なにが辛いのかわからない。
きっと、何かが悲しいのだろう。
しかし、私は幸せであるはずなのだ。
だって、私を見ているのだから。
……違う。私は幸せではな…い……。
涙が私の頬をつたう。
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数日後
私は病院のベッドの上で目を覚ました。
白い天井に、白いカーテン。
明るい照明と、窓の外からの日の光。
すべてが眩しすぎる。
いつぶりだろうか、私の部屋以外の物を見たのは。
私の腕には点滴の針が刺さっている。
痛みは感じない。
手を動かしてみようとするが、驚くほど重く感じる。
こんなに手は重かっただろうか。
しかし、私の視界に入ったその手はとても、とても細く、重さを感じる見た目ではない。
私は、こんなにも痩せていたのか。
私は、こんなにも自分以外のことを忘れていたのか。
いや、もはや自分すら忘れていたようだ。
突然、シャッと音がしてカーテンが開いた。
「!」
驚いた様子のナース姿の女性。
「目が覚めたのですね!」
そう言ったあと、続けて何か言った気もしたが、私はまた眠ってしまった。
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私が目を覚ますと、そこには両親がいた。
2人とも、泣きながら笑っている。
「意識が戻ったのね!」
「よかった、本当によかった!」
どうやら、私はしばらくの間意識がなかったらしい。
この体の様子と、飲まず食わずだったことから考えると、栄養失調か何かだろうか。
2人は私の手を握った。
その手から、何かを感じた気がしたが、また私は眠ってしまった。
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次に目を覚ました私は、両親の他に3人の人物の姿が目に入った。
それは、あの友人2人と、私の彼氏だった。
彼は首には大きなサポーターを付け、車椅子に座っていた。
それでも、私が目を覚ましたとたんにぐっと前のめりになり私に近づき、涙を流して私を抱きしめた。
2人の友人も、顔をくしゃくしゃにして、泣きながら私に抱きついてきた。
そして、3人は私の手を握って、泣きながら笑った。
その手には、あの私にはない、あたたかさがあった。
私に足りなかったものが満たされていく。
満たされたものは、私の中からあふれでる。
涙が私の頬をつたう。
読んで下さってありがとうございます。
なんとなく、まじめなのになってしまった。
もっとふざけるよていが、、、
まじめとかいいつつ、じぶんでもまぁまぁやばいなぁとはおもいます……。
でも、はっぴーなえんどにした。