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地球よいとこ、たまにはおいで  作者: 相田 彩太
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星をつなぐもの(後編)

 儂は人ではない。

 儂はサムライである。

 儂はサムライの魂である。

 それを宿す刀であった。

 儂には分かる、儂が仕えるべき姫の存在が。

 姫の腕に抱かれ、儂は使命を与えられた。

 姫の与えてくれる鉄の馬に乗って、来るべき日に故郷を守れと。

 故郷とは地球の事である。

 どこからか声が聞こえる。

 声は示す、倒すべき存在とその位置を。

 成程、邪悪な意思を感じる。

 そして時は来た。

 助けを求める少女、心の誓い、機体からだに宿る力、全てを以って敵を誅さん!

 

 

 

 「船長! 緊急事態です!」

 「なんだ!? 銀河連盟軍がゲートに現れたか!?」

 宇宙海賊団バルバの船長ロイは最悪の事態を想定する。

 最悪の事態とは地球侵略が予期されている、もしくは囮として使われていて、銀河連盟軍が星系内に現れる、もしくは潜んでいる事である。

 その場合はプランを変更して逃げなくてはならない。

 航行の速さや一対一の戦闘ならともかく、正面きっての戦闘になれば、バルバの船団に勝ち目は無い。

 「敵との距離を報告せよ!」

 ゲートから現れただけならば、地球の略奪時間を大幅に削れば良い。

 星系のどこかに潜んでいたならば、距離に応じて対策を取る。

 一目散に逃げてしまったら大損だ。それだけは避けたい。

 「敵との距離は約0.1テイ(10億キロメートルの意)、位置は星系最外惑星、現地呼称冥王星付近です」

 「そうか……」

 ロイは少し安堵する。最悪の事態ではなかった。

 その距離なら地球を征服して健康な生命体を差し出させる事は出来ないが、一方的に略奪する事は出来る。

 商品の選定は出来ないが、数だけなら何とかなりそうだ。

 「船長! 逃げましょう!」

 馬鹿か、臆病風に吹かれおって、計算もまともに出来んのか、とロイは思った。

 「敵は一機、ですが相対速度、約0.9ライトイン(光速の90%で接近の意)。機体識別は……、ブラン帝国の戦闘機です! 唯一、始まりの六種族の課題戦闘機を打ち破った!」

 「逃げろ! 全力で!」

 ロイの判断は早かった。

 

 

 

 何かが船団を横切る毎に船団の船が宇宙の藻屑と化していく。

 スペースサムライXの翼で切り裂かれているのだ。

 「いいか、船員と重要資産を本船に集めろ! 他の船を盾にして軌道を逸らすのだ!」

 亜光速航行可能な機体をとらえる事は不可能だ。

 偶然、武装が命中したとしても、亜光速戦闘に耐えれるように設計された機体である、その頑健さを打ち破る事も出来ないだろう。

 だから、ロイは被害を最小限にする事にした。

 亜光速で動けるとしても、一度通り過ぎれば、再び接敵するのに時間が掛かる。

 ちょうど、騎馬で突撃し、敵陣を突破したならば、切り返して再び敵陣に突撃するのに間が空くように。

 そして亜光速といっても、すれ違いざまに何かを斬れば、軌道はズレる。

 そのズレで本船を守るのだ。他の船を犠牲にして。

 バルバ海賊団の船は百を数える、ブラン帝国の戦闘機の弱点は継戦時間が短いという事だ。

 ロイの知識から計算すれば、船団の半分は失ってしまうが、何とかこの星系から脱出できるはずだ。

 「船長! 極悪の事態です!」

 「何だ! もう一機現れでもしたのか!?」

 もう一機現れたとしたら、船団を守る事は出来ない。自分だけでも逃げ延びる策に切り替えなくてはならない、とロイは思案を巡らす。

 「いえ、ゲートに敵感!」

 なんだ、ゲートに銀河連盟軍が現れたのか、だったら現状の維持で逃げ切れる。あいつらの任務はこの星系の防衛のはずだ。深追いはすまい。

 「現れたのは、ゴレム星人の機動師団です。数は二千。既に当方に宣戦布告と殲滅宣言を行っています」

 ゴレム星人の殲滅宣言は、彼らの神を侮辱した時のみに発令される物である。

 これは通常の宣戦布告と違い、交渉の余地も降伏も許さない宣言で、過去に一度だけ発令された事がある。

 その時は銀河連盟から一つの種族が絶滅した。

 それを助けようとした、それをいさめようとした種族にも通常の宣戦布告が行われ、銀河連盟は彼らの怒りが収まるのを待つか、彼らを絶滅させるかの二択を迫られた。

 選ばれたのは前者である。

 「逃げろ! 全力で!」

 もう、船団の維持は考えない。一生ゴレム星人からの追撃を恐れながら、裏社会の日陰で生き残る道をロイは探し始めていた。

 「相対速度、約0.1ライトイン(光速の10%で接近の意)。だめです! 逃げ切れません!」

 「なんで、そんなに速度差があるんだ!」

 船速には自信がある。銀河連盟の最新鋭軍艦からも逃げ切れる自信はあった。

 「おそらく、ゴレム星人が機械生命体だからではないでしょうか。有機生命体では耐えられない加速にも、彼らなら耐えられるのではないかと……」

 ロイは絶望した。

 「ゴレム星人の代表アイ003からタキオン通信が入って来ています」

 命乞いの希望がロイの頭に浮かんだ。

 『こちらゴレム星人、外交統括官のアイ003である』

 『これは誤解だ! 俺達はゴレム星人に敵対する意思も行動もしていない!』

 ロイは必至に交渉の余地を探る。

 『これは宣言である。交渉や降伏の余地は無い。我らは我らの意思を示すために、それを言葉にするだけである』

 そして、数秒の間の後、通信からはゴレム星人の合唱が流れた。

 『神が訪れた聖なる星に我らの守護を!』

 『神の眷属の住まう星に仇なす者に死を!』

 『ゴリラ様へ勝利のトマトとリンゴとバナナのお土産を!』

 ロイは再び絶望した。

 数時間後、宇宙海賊バルバの一団は殲滅した。

 

 

 

 「何とか、僕の、いや地球の安寧は守られたか」

 誰に言うのでもなく、ビクターは呟く。

 「しかし、飛鳥の喪失は痛いな。僕の仕事を減らすために活用していたのだが、失ってみると、その有用さが分かるものだ。馬鹿だったけど、それも可愛らしくもあったしな」

 『あらビクター、馬鹿は余計よ、可愛いいは余計じゃないけど』

 ヘッドセットから声が聞こえて来た。

 『飛鳥! 生きていたのか!?』

 『生霊だけど、生きているわよ』

 明るい口調で飛鳥がしゃべる。その声には精気があふれていた。

 『でもどうやって!? 死にそうだったじゃないか?』

 『うーんとね。スペースサムライXを見送った後、意識を失ったんだけど、身体にちょっとだけ力が湧いて動けるようになったの』

 ビクターはメイが飛鳥の肉体に栄養補給しに行った事を思い出した。

 『でも、それじゃ少し動けるようになっただけだろ?』

 そう、身体と魂は互いに影響し合うが、それだけで疲弊し尽くした、死にかけの状態を脱するとは思えない。

 精々、死にかけが満身創痍になる程度だ。

 『あー、この宝物庫にね”飛鳥さんへ”ってのが結構あったのよ。クーさんとガーさんから出産祝い返しとかね。んで、それを開けてみると、霊体食料が山盛りだったってわけ。見たこともない食べ物だったけど、食べてみるとスッゴク美味しいの! あと、エルマニア星人さんお勧めのヤツとかね。さいっこうだったわ!』

 ビクターは理解した。飛鳥が活力を取り戻した正体を。

 食べたのが、コテラ製の霊体クッキーやマフィンだったら、ここまで飛鳥は回復しなかっただろう。

 プレゼントに最も大切な物、馬鹿の飛鳥でも気づいた物、それは気持ちだ。

 新たな生命の誕生の慶び、新たな美食の発見の喜び、それらをもたらしてくれた飛鳥へのお返し、地球的に言えば”想い”とでも言う物が込められた霊体食料。

 その効果は絶大だ。

 奇跡は起こさない、だが、そのつながりは祝福を与えてくれる、生きる力を。

 『よし飛鳥、元気が出たなら戻って来い。いや、疲れているだろうから身体に戻るんだ。僕もメイも見舞いという形で行く』

 『了解! じゃあまたね』

 『ああ、また地球でな』

 二人は笑って言った。

 

 その後、地球の飛鳥の部屋で、ビクターとメイは飛鳥の鼻血で汚れたシーツをどうしようかと悩んでいた所に、飛鳥の家族と友人が襲来し、その上、飛鳥の霊体が帰還したタイミングが相まって、ひと騒動起こるのだが……

 それはまた別のお話。

 

 前編で出発する飛鳥にメイが言った

 「いざと……つま……を……」は

 「いざとなったら、つまみぐいをするといいですよ」です。

 最後のシーンで、飛鳥のシーツが鼻血で汚れていたのはコテラ特製栄養ドリンクをメイが飲ませたためです。

 スターシップ・トルゥパーズで男が飲んだやつです。

 次のエピローグでこのシリーズは最後になります。

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