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俺が眷属になったら何故か弱くなりました。  作者: リザイン
第一章 吸血鬼と婚約者
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事実上の再会

『何・・・魔族・・・?』


 エリーゼは俯き、拳を握り締める。


『ふ・・・ふふ・・・。

 そう・・・魔族が、ね・・・』


 エリーゼの周りから尋常じゃないオーラが溢れる。

 フードの女性にも感じられるほどだった。


『エリーゼ様。

 どうなさいますか』

『そんなこと・・・決まってるでしょ。

 ミンシア。今すぐ出る準備をしなさい!!

 そしてシュタイナーも連れてきなさい』

『出るってまさか魔王城に乗り込む気ですかっ!?』


 エリーゼは頷く。


『当たり前よ・・・。

 私のユウくんを連れ出すような奴には、死んでもらわないと』

『ですが、今すぐに出るのは早計です。兵士達の準備というものもあります!!』

『兵士?

 そんなものいらないわ。私とミンシアとシュタイナーの3人で十分よ。

 さあ、早くシュタイナーを呼んできなさい』


 あのフードの女性、ミンシアという名前なのか。

 男の名前もシュタイナー・・・。確かにそんな人がいたような気がする。

 そうして3人は魔王城へと乗り込んだ。

 だが、その戦いはあまりにも一方的だったといってもいい。

 そもそもエリーゼの放つオーラのおかげで大半の魔族は体中が震え、死の危険を感じたのか逃げ出すもの多数、そして何もできずに倒されたもの多数。

 エリーゼはあの剣をもって魔族達を次々に灰へと変えていった。


「ここから確かエリーゼが城に入ってきて、地下で俺達と遭遇・・・そして、エリーゼから逃げるようにして人間界に行ったんだよな」


 だが、確認する前に映像はそこで途切れる。

 そして次の瞬間、視界がはっきりとクリアになる。


「・・・」


 そこはもう過去の場所ではなかった。

 見えるのは天井。そして傍らにはエリーゼ。


「あ・・・気がつかれましたか」


 顔を上げるとソフィアさんがいた。


「どう・・・かしら。ユウくん、思い出した?」


 恐る恐る聞いてくるエリーゼ。

 俺は頷く。


「ああ。まだほんの少し、戻っていないものもあるが大方思い出した。

 俺が聖族達と共に暮らしていたこと、そしてエリーゼと一緒にいたことも・・・。

 まあ、まさか俺が魔族に誘拐されていただなんて思いもしなかったが」

「じゃあ・・・!!」


 エリーゼの顔が幾分明るいものに変わる。

 俺はエリーゼを見つめるとこういった。


「久しぶりだなエリーゼ。

 そして迷惑をかけてすまない」

「ぅ・・・馬鹿、心配したんだから!!」


 そう言ってエリーゼは俺に抱きついてくる。

 そしてしばらくの間泣き続けた。

 俺はエリーゼの背中をさすりながら、ただただ謝り続けた。察してか、ソフィアさんは俺達の間に口を挟むことはなかった。  

 しばらく経ってから、エリーゼはごしごしと涙を拭き取ると不意に立ち上がる。


「それで・・・そこで盗み聞きをしている5人は私に殺されたいのかしら?」

「え、やっぱバレてた!?」


 同時にドアがばたん!と開かれる。

 ソフィアさんが頭を抱える。


「だからバレるとあれだけ言いましたのに・・・」

「いや、だってユウトの知り合いだっていうから気になるじゃない!」

「そう。これは単純な好奇心」

「うわぁ・・・銀髪少女なんか初めて見たよ。頭にティアラまでしちゃって・・・神々しいなぁ」

「おい、ロジャート。さっきから貴様のヨダレが私の服についているんだが」

「はぁはぁ・・・、幼女・・・いや少女?いやどちらでも構わん!!

 あの子にヒールを履いてもらって踏んづけてもらいたい・・・!!!」

「あーあ・・・″病気″が出ちゃったよこいつ。

 少し黙らせておくか」

「あひ!!」


 そしてそのまま気絶したロジャートを何処かへ連れて行くエレニア。

 ・・・さりげなく逃げたな。

 そこへ、ソフィアさんの鶴の一声がかけられる。


「とりあえず、ここへいても狭いだけですし、とりあえず食堂へ移動しませんか。食事とともに私から色々と話したいことがありますので」

「なぜ私が貴方の言葉に従わないといけないのかしら?」


 ソフィアさんがこちらに目配せしてくる。

 なるほど、理解した。


「エリーゼ、心配せずとも彼女達は敵じゃない。むしろイレアの攻撃をくらって瀕死だった俺を助けてくれた恩人なんだ。そこにいるソフィアさんがいなければ今頃俺は雪山に埋もれて死んでいただろう。だから敵対しないでくれ・・・」

「な・・・。

 そ、そう。そんなことがあったのね。

 うん、わかったわ」


 そう言うとエリーゼは幾分か毒気を抜く。

 そうしてソフィアさんの元へ行くと頭を下げた。


「ごめんなさい。私勘違いをしていたわ。

 貴女がユウくんを助けてくれたのね?本当にありがとう。

 聖族の頂点である私が、さっきは感情に任せて貴方を攻撃しようとした非礼を詫びます」

「エリーゼ様、どうかお顔を上げてください。

 私は善意でユウト様を助けたわけではありません。あくまでそこにいる私の主、エミリーお嬢様に命じられたから助けただけのこと。だから貴方が感謝を言うべき相手はお嬢様であって、私ではありません」

「そ、そう。なら、貴方にお礼を言わないと。

 ええと・・・」


 レミリーが前へと出る。


「レミリー=オルコットよ。

 貴女がユウトのお知り合いのエリーゼさん?」

「ええ。

 ユウくんを助けてくれたこと、心よりお礼申し上げるわ」

「そんな・・・むしろ私は貴女にお詫びをしなければならない立場・・・。

 だからお礼は不要なの」

「・・・?」

「お嬢様」


 イマイチよくわかっていないエリーゼ。

 ああ・・・あのことか。

 だが、あのことを知ったらエリーゼはどんな反応をするんだろうか。

 怒ることは間違いないだろうが、攻撃だけはしないように止めないと。


「先程も言いましたが、細かいことは食事中に私が説明いたします。

 皆様は先に食堂へお待ちいただくようお願いいたします」


 ソフィアさんが一礼すると、部屋をあとにする。


「確かにお腹も減ったことだし、皆一旦食堂へ行きましょう」

「そうしようぜ! 

 俺、腹減りすぎてシズクちゃんが食べ物に__うぉあああ!!」


 そのままジェームスが逃げるようにして部屋を出ていく。


「次私の名前を言ったら殺すといったはず」


 そう言ってシズクも部屋をあとにする。

 まあ、あの2人は放っておいても大丈夫だろう・・・多分。


「ユウくん、立てる?動けなさそうなら私の肩に・・・」

「あーいえ、エリーゼさん。それは私がやるわ」

「どうしてオルコットさんがやるの?

 私がこうなる原因を作ったのだからこれは私がやります」

「それを言ったら私の″あれ″がなければユウトがこんなに傷つくこともなかったはず。だからこれは私がしなければならないはずで__」

「・・・」

「・・・・」


 おいおい・・・なにやら不穏な空気が漂ってきたぞ。

 このままだと2人の喧嘩が始まりそうだと思った俺は、早急に立ち上がる。


「2人共、その心配は不要だ。幸い怪我はそこまで重傷じゃないしな。

 1人で歩けるさ」


 そう言うと俺は部屋をあとにする。その横をエリーゼとレミリーがついてくる。

 しかし・・・こうして見ると2人共銀色の髪をしているから一瞬見分けがつかないな。

 いや、レミリーの方がよく見ると白いのか。

 そうして俺は3人で食堂へと向かった。 

  

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