真実
次に目が覚めたとき、俺はベッドに寝かされていた。
傷口には包帯が巻かれている。
起き上がろうとすると、激痛に襲われたため、起き上がることができなかった。
仕方なく俺は首を横に向ける。
どこの屋敷かはおおよその検討がつく。
ロジャートさんの屋敷だろう。
「ふむ・・・」
というか俺は気絶していたのか。
なんか俺って、気絶すること多いような・・・。
というか大事なことを忘れているような・・・。
そうだ!
俺はエリーゼとソフィアさんを止めようとして・・・。
あの二人はどうなった!?一触即発な雰囲気だったから思わずとめにはいったものの、あの二人がもし衝突すればただ事では済まないだろう。
だが、俺の心配はどうやら杞憂に終わったようだった。
よく見ると、ベッドの傍でエリーゼが寝ていたからだ。俺の手を握りながら。
「・・・」
エリーゼがこの屋敷にいるということは・・・。
その時、部屋に誰かが入って来る。
「あ、ユウト様。目が覚められましたか」
「ソフィアさん」
ソフィアさんは、水を注いでくれると、俺に渡してきた。
「ありがとうございます」
ちょうど喉が渇いていたので、俺は一気に流し込む。
「俺、どのぐらい気絶していました?」
「そうですね。現在の時刻が夜中の1時ですから、丁度半日といったところでしょうか」
そんなに気絶していたのか・・・。
いやはや、情けない限りだ。
「すいません。手間を煩わせてしまって。
でも、俺が気絶したあと、エリーゼとは大丈夫だったのですか?」
「はい。ユウト様が止めてくれなかったら、私たちはあのまま戦っていたでしょう。
ですが、ユウト様が倒れたと同時に、彼女は私に矛を向けなくなり、急にオロオロし始めたのです。そんな彼女を見て、私も矛を収めました。
そして、ユウト様を屋敷にお連れしたのです」
なるほどな。
ソフィアさんは、俺の傍で寝ているエリーゼをじっと見ていた。
「エリーゼさんは、つい先ほどまでずっと貴方の傍で看病しておりました。
ですが、私達が近づこうとするとすごい殺気を向けてくるのです」
「殺気?」
「はい。今まで、私は幾度となく戦ってきましたがあんなにすごい殺気は初めてです。まるで、体が震えるような・・・」
あ~・・・それか。
百戦錬磨のソフィアさんでも震えるのか・・・。
エリーゼは一体何者なんだろう。
「ユウト様。このエリーゼさんとは一体どういったご関係なのでしょうか?
それによっては私もしかるべき対処をしないといけないと思います」
「関係・・・と言われても。
実は俺もわからないんです」
「まさか記憶が?」
俺は頷く。
だが、エリーゼと会ったとき、何か懐かしい感じはした。だから過去に何かあったのだろうが・・・。
こうしていても埒があかないな。それなら直接エリーゼに聞けばいい。
そしてちょうどいいことに、エリーゼが目を覚ました。
寝ぼけ眼だったが、俺が起きていることを確認すると、意識がはっきりする。
「ユウくん、目が覚めたのね!」
そのままエリーゼが俺に抱きついてくる。
「いててて!!」
「あっごめんなさい大丈夫!?」
エリーゼは慌てて俺から離れると謝ってくる。
「いや、大丈夫だ」
「そう、それならよかった・・・」
そこで、エリーゼがソフィアさんの存在に気づく。
「ん?貴方もいたのね」
「いてはいけませんか?」
「場合によってはね・・・!」
エリーゼとソフィアさんがお互い睨み合う。
結局こうなるのかよ!!
俺は再び二人を止めに入った。
「はいっストーーップ。二人共喧嘩はやめてくれって」
「う・・・まぁユウくんがそう言うなら」
「・・・」
そうしてひとまず矛は収めてくれたものの、またいつ導火線に火がつくとも限らない。
俺はその前に聞くべきことは聞いておこうと思った。
「なあ、君・・・はエリーゼ=フォンシュタインで間違いないんだよな?」
俺がそう言うとエリーゼは頷く。
「ええ。私はエリーゼ=フォンシュタイン。
聖族界の頂点に最後の切り札とも呼ばれているわ。まぁ正直そんなことはどうでもいいのだけれど」
エリーゼがそう言うとソフィアさんが驚いた。
「聖族・・・?
聖族が何故ユウト様に?ユウト様は聖族ではないと思うのですが」
ソフィアさんが質問すると、エリーゼはこう言った。
「ええ。確かにユウくんは聖族ではないわ。
でもね、ユウくんは魔族でもないのよ」
「ど、どういうことだ?」
「ユウくん・・・やっぱりあの魔王に記憶を消されているのね。
でも大丈夫。今から貴方の全ての記憶をといてあげるから」
そう言うとエリーゼは俺に微笑みかけ、何かを唱える。
「貴方、ユウト様に何を・・・」
ソフィアさんが止めようとすると、エリーゼはソフィアさんに刃を向ける。
「うるさい。部外者は黙っていて。ここからは私とユウくんの問題。
もし邪魔をするなら・・・八つ裂きにするから。
じゃあユウくん、少しの間眠っていてね。
大丈夫、ほんの少しだから・・・」
エリーゼに優しくそう言われると、俺はまもなく猛烈な眠気に襲われ、
意識が深層へと沈んでいった。




