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俺が眷属になったら何故か弱くなりました。  作者: リザイン
第一章 吸血鬼と婚約者
22/25

究極の助太刀!

「・・・」


 俺よりも一回り大きな体、筋肉で盛り上がった肉体・・・

俺の前に立ちふさがった男はまさに大男といった風貌だった。

 大男は腕を組みながら、俺を値踏みするように見る。

 俺は、買い物袋を地面に置くと、すぐにでも戦えるよう、警戒する。


「誰だお前は!どうして俺の名を知っている」

「あん?そんなことはどうでもいいだろう。

 それよりもだ。

 ユウト=ヴィルヘルム。お前を捕まえて来いとの命令により、一緒に来てもらおうか」

「はぁ?どうして俺がお前と一緒に行かねばならない!!」


 俺は睨みつけるようにして答えた。

 ・・・が、大男は動じることなくこう告げる。


「それはなぁ・・・お前が俺たちゾルバ団にとって必要な存在だとふんだからだ」

「なに・・・ゾルバ団・・・?」


 なんとなくそのような気はしていたが、やはりこいつはゾルバ団だったか。しかし、何故ゾルバ団が俺の名を・・・?

 いや、ちょっと待て。 


「じゃあさっきの鎧の男は・・・」

「あ?あれはただの人形さ。人を殺すためだけのな」

「何・・・人形だと」


 じゃああの鎧の中には誰もいなくて、ただ鎧がひとりでに動いているとでも言うつもりなのか。

 そんな技術が人間界にあるというのか・・・。

 が、俺がそんなことを考えている間に、大男は大剣を鞘から抜いた。 


「まぁとにかくさ。大人しく捕まってくれ・・・よ!!」


 その言葉を皮切りに、男は俺を捕まえようと突進してくる。

 くっ・・・。やはり戦闘は避けられないか。

 俺は、刀を抜くと男を待ち構えた。

 相手は一回り大きな男だ。魔界にもこのような手練はごまんといるが、人間界にもいるなんてな。今日はとことん運が悪い。


「刀なんて洒落たもんもちやがって・・・。 

 だが、そんなもん粉々に消してやるよ!」

「ちぃっ!!」


 男の大剣と俺の刀が交差する。俺は、男の力量に押されて後方に飛ばされた。

 やはり体格差があるおかげで、単純な力勝負なら相手の方が上だ。

 それに、体格がある割には動きがかなり素早い。

 俺は男の攻撃を見てかわすのではなく、ほぼ反射的にかわさないといけなくなっていた。


「やはり・・・魔法が使えないのが大きいか」

「何ごちゃごちゃ言ってるのか知らねえが、さっさとくたばれ・・・や!!!」

「っ!?」


 大剣とは思えないほどの素早い攻撃に、俺は刀で受け止めるが、その衝撃で刀を飛ばされてしまった。


「くっ!」


 なんとか脇差しでしのごうとするものの、ジリ貧だった。


「ちょこまかしやがって・・・さっさとくたばれや!!」


 徐々に斬り傷が増えてくる。

 疲れも出始め、俺の攻撃に切れがなくなってくる。

 そのまま俺は壁に追い詰められてしまった。

 

「それで?もう終わりか?」


 俺は大男に胸ぐらを掴まれ、そのまま持ち上げられる。


「ぐっ・・・はなせ・・・」

「主人からは殺すなって言われてるが・・・俺に歯向かったんだ。

 少しくらい痛い目を見てもらってもいいよな」

「何を・・・ぐぁっ!?」


 大男は俺の鳩尾(ミゾオチ)に渾身のパンチをしてきた。

 その瞬間、意識が途切れそうになる。


「あれ?気絶しなかったか。じゃあもう1回・・・」


 そう言って大男はもう一度殴ろうとしてくる。

 俺は咄嗟に大男の手を思い切り噛んだ。


「ぬぁああ!!!いってぇぇぇえ!」


 大男の手の力が緩んだ隙に、俺は大男から逃れることに成功する。

 だが、腹部のダメージがひどくて少し離れたところで倒れてしまった。

 刀がある位置まではまだもう少し遠い。


「お前・・・やってくれたな?」


 大男は明らかに顔を苛立たせながらこっちに近づいてくる。

 くそ、こんなことなら戦わずにさっさと逃げておけばよかった。

 ゾルバ団が何故俺の名を知っているのかは分からないがどうやらこいつは俺を誘拐する気らしい。

 何でそんなことをするのかは知らないが、ロクなことでないのは確かだ。

 こんなところで捕まるわけには・・・。

 そうしている間に、大男は俺の目の前にまでやってきた。


「どうやらさっきのパンチが効いて立てないようだな。

 これはちょうどいい」


 男は俺の腕を掴もうとする。

 

「じゃあ、さっさとお前を連れ帰って――」


 まさに掴もうとしたその瞬間。

 突如、男に向けて光の槍が飛んできた。


「ちぃ!?何だ!!」


 男は大剣で槍を飛ばすと、槍が飛んできた方向に顔を向けた。


 そこにはなんと、本来ならありえないはずの相手がいた。

  

「・・・」


 風で大きく髪をなびかせながら、大男を睨んでいるのは

あの少女だった。


「エリーゼ=フォンシュタイン・・・」


 俺がそう呟くと大男が驚いた。


「な、何っエリーゼ・・・だと!?」


 大男は大剣を構え直すと、エリーゼと向き直る。

 

「なんでエリーゼがこんなところにいやがるんだ!

 お前は宮殿に引き篭っていたんじゃあ・・・」

「そんなこと、貴方のようなクズに答える必要はないわ」


 きっぱりとそう言うエリーゼ。

 すると、大男は高笑いした。


「な・・・クズだと?

 ハハハ、俺も舐められたものだ。

 まあいい。一体何しにここへ来た?」


 大男はエリーゼの挑発にのることなく答える。


「何をしに?

 今から死ぬ貴方になぜそんなことを言わなければならないの?」


 エリーゼは不敵に微笑んだ。

 すると大男は苛立ちを見せ始める。


「俺が死ぬ?何が言いたいのかは知らないが、とりあえず俺の邪魔をしないでもらおうか。なにせ、こいつを連れ帰らないといけないんでな」


 そう言うと大男は倒れている俺の腕を掴もうとする。

 ・・・が、掴まれる寸前のところで大男の手に光の槍が飛んでくる。

 大男は避けざるを得なかった。


「そんな汚い手で彼に触らないでもらえる?」

「てめぇ・・・」


 俺はその隙を見て、ゆっくりと立ち上がった。

 傷口から血が滴る。


「っ!!その傷・・・」


 エリーゼは、俺の傷を見て泣きそうな表情になる。

 そして今度は、大男に向けて思い切り殺気を飛ばした。

 その瞬間、俺の体が震え始める。

 大男も同様だった。


「お、おお・・・!?

 な、なんで体が勝手に震えて・・・」

「・・・よくも、ユウくんに・・・」


 エリーゼは俯きながら低く何かをつぶやいた。

 するとエリーゼの周囲が淡い光に包まれる。

 

「ちっ・・・。邪魔するならいくらエリーゼとは言え許しはせんぞ!!」


 そう言うと大男はエリーゼに向かって斬りかかっていく!!

 だが、勝負は一瞬でついた。


「な・・・、なんで・・・」


 大男はエリーゼの槍に貫かれていた。

 どういうことだ?今の一瞬の間に何があった?

 大男は、血を吐きながら地面に倒れる。その後頭部を、エリーゼが足で踏んづけた。


「こ・・・この化物め・・・許さんぞ・・・」   

「私が化物?

 違うわ。私は聖族の頂点であるエリーゼ=フォンシュタインよ。

 貴方は私の大事なユウくんを傷つけました。それだけで万死に値します。よって、判決。死刑」


 そしてエリーゼは大男に止めをさす。

 あっけない死だった。

 エリーゼはなおも憎悪を込めた視線で大男を見ていたものの、はっとしたのか、俺に駆け寄ってくる。


「ユウくん!!」


 倒れそうになった俺を、エリーゼは支えてくれる。


「なんで、君がここに・・・」

「それは後で説明するわ!今はそんなことよりもユウくんの傷を治さないと・・・」


 さっきまでの気丈で強気な彼女はどこにいったのか、今目の前にいるエリーゼはまるで何かに怯えているようだった。

 エリーゼは、俺を近くの椅子に座らせると手をかざした。


「今、治療するから――」 


 その時だった。

 後方で爆発音が聞こえてくる。

 俺もエリーゼもその轟音に振り返った。

 そうだ。さっきの大男は倒されたとは言え、まだあの鎧の男が残っている。

 ソフィアさん大丈夫かな・・・。

 が、その心配は杞憂に終わった。

 ソフィアさんが遠くの方から猛スピードでやってきたのだ。

 ・・・が、何か様子がおかしい。

 見ると、エリーゼがソフィアさんを睨んでいた。


「あのメイドの子・・・。まっさぐこちらへ向かってくるわ」


 そしてソフィアさんがやってきた。


「ユウト様!大丈夫ですか!?」


 俺の傷を見るなり、慌てて駆け寄ってこようとするが、その行手をエリーゼが阻んだ。


「貴方誰?」

「貴方こそ誰ですか?

 まさか、貴方もゾルバ団の仲間・・・?」


 エリーゼとソフィアさんがお互い対峙する。


「ゾルバ団・・・?一体なんのことか知らないけど、私とユウくんの邪魔をするなら・・・」


 そうしてエリーゼは鞘から光り輝く剣を抜く。

 ソフィアさんも戦闘態勢に入った。

 俺は慌てて止めに入る。


「待て待て待て!!二人共、喧嘩はダメだ!」


 俺は二人の間に割って入る。

 が、無理して動いたため傷口が開いてしまう。


「ユウくん!?」

「ユウト様!」


 なんでこのタイミングで傷が開くかな・・・。

 二人の声が聞こえてくるものの、俺はそのまま痛みで気絶してしまった・・・。


 

 

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