表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺が眷属になったら何故か弱くなりました。  作者: リザイン
第一章 吸血鬼と婚約者
21/25

事件一

「もう戻ってきたの?早いのね」

「ん、ああ。ただ少し散歩してただけだからな。

 そっちは何を話してたんだ?」

「これからどうするかについてちょっとね。

 とりあえず、ユウト達はゆっくりしていていいわ。私とロジャートさんとで少し話したいことがあるから」

「お嬢様。では、失礼します」


 そう言うとソフィアさんは部屋から出ていく。

 俺はそれを追いかけた。


「ソフィアさん」

「ユウト様。どうかされましたか」

「いや、何処かに行くんですか?」

「ええ。ロジャート様から台所の使用許可を頂いたので、今晩の買い出しに行こうかと」


 ソフィアさんは、俺にメモを見せてくる。そこには、今から買ってくる物のリストが書かれていた。


「なるほど。買い出しですか。

 では俺も付いていっていいですか?

 ついでに荷物持ちしますよ」

「それは助かります。少々、一人では持ちきれるか不安だったので」


 どれだけ買うつもりなんだろう・・・。

 リストを見た感じだとそんなに量があるとも思えないが。

 そうして俺はソフィアさんと共に買い出しへ行くことに。

 しかし、この行動が後に大きな事件を巻き起こすことになるとはこの時知る由もなかった。




「・・・」


 ロジャートさんの屋敷を出て、俺とソフィアさんは徒歩で目的地まで向かう。

 そういえば、ソフィアさんと二人きりで出かけるのってこれが初めてじゃないか?

 俺はソフィアさんを見る。

 やっぱ綺麗だよなぁ・・・。背筋もぴんとしてるし、歩くのにも無駄がないというか。


「どうかしましたか?」


 俺の視線に気づいたのか、ソフィアさんと目が合った。俺は慌ててそらす。


「いえ、なんでもないです」

「そうですか。

 街中とはいえどんな危険があるかわかりません。

 ユウト様も十分気をつけてください。私が護れると言っても限界はありますから」

「はい。気をつけます」


 本当ならここで、俺がソフィアさんを護りますからみたいなことを言えればいいのだろうが、あいにく今の俺とソフィアさんでは実力差がありすぎる。そんな俺が言ったところで失笑されて終わりだ。

 はぁ~やっぱもう一度鍛錬しなおすか・・・。 

 俺は少し気落ちしながらソフィアさんについていく。

 最初は肉屋に向かった。

 肉屋の店主は、ソフィアさんを見るなり驚いた。

 そりゃ、メイドが肉を買いに来ることなんて滅多にないだろうから驚くのも無理はない。

 ソフィアさんは、肉をいくらか買ったあと続いて野菜を買いに行く。

そうして次々と食べ物を買っていくソフィアさん。

 その様子を周りの人は見惚れるようにして見ていた。


「あのメイドの子、すごく可愛くない?」

「あぁ・・・。どっかの屋敷のメイドさんかな」

「ちょっとクールそうなところもいいね」


 そんな声が飛び交う中でもソフィアさんは気にせず次々と買っていく。

俺は買ったうちのほとんどを持っていた。

 


「とりあえず、こんなものでしょうか。

 これで1週間程は買い出しをせずとも大丈夫そうです。

 ではユウト様。そろそろ帰りましょうか」

「はい」


 目的の品を買った俺たちは再び屋敷へ戻ることにする。

 街に設置されている時計を見るとちょうど昼食の時間帯だった。


「少しお腹すいたな」


 早く昼食につきたいものだ。

 レミリーの屋敷で出てきた食事は本当においしくて、魔界での食事が質素に見えてくるから不思議だ。あれはあれで美味しいのだが。

 そして、屋敷まであと半分の距離にまで来たときのことだった。

突如大きな音が聞こえたかと思うと、民家のうちの一つが爆発した。それを見ていた街の人たちは一斉に逃げ始める。


「爆発・・・?」

「どうやら、何か良くないことが起きてしまったようですね」


 ソフィアさんは爆発のあった民家へと近づいていく。民家は炎に包まれ、黒煙が上がっていた。


「ソフィアさん!危ないですよ!!」

「大丈夫です。これ以上は近づきませんから」


 しかし、何故いきなり爆発が・・・?

 俺は疑問に思っていたが、それはすぐに解決することになった。

 民家から、一人の男が出てきたからだ。

 全身が黒い鎧のようなもので覆われており、顔は見えない。

 ・・・が、何か邪悪なオーラのようなものを身につけていて不気味だった。


「どうやら、あの男が何かしたようですね」


 ソフィアさんは一気に警戒を強める。

 男は、周囲を見渡すと、今度は別の民家へと入って行く。

 するとまもなくその民家も爆発し、たちまち炎に包まれた。

 

「どうやら、あの男はこのあたりの民家を焼き払いたいようですね・・・」


 街の人たちは尚もパニックに陥り、逃げ惑う。

 すると、近くにいた騎士が男に向かって警告した。


「おい!!お前、何てことをするんだ!!今すぐにそんなことをやめて投降しろ!!」


 騎士がそういうものの、男は無視して次の民家へと入ろうとする。


「くっ!そうはさせるか!!」


 騎士は鞘から剣を抜くと男に向かって突進していった。

 騎士が男に斬りかかるも、難なく避けられる。騎士は何度も男に斬りかかるが、ひと振りも当たることなく、今度は男が攻撃した。

 騎士に向けて手をかざす。すると、手のひらから炎の玉が現れ、騎士に命中した。


「あいつ、魔法が使えるのか」

「どうやら、早く何とかしないとまずいですね。

 それに男の進行方向にはロジャート様の屋敷もあります」


 数人の騎士が男の前に現れるも難なく倒されてしまう。

 あの男、躊躇(チュウチョ)なく殺すところを見るとどうやら普段から人を殺しなれて・・・。これは厄介だ。

 人間は誰しも人を殺すということには抵抗がある。特に初めて人を殺す時なんかには、吐く人もいるぐらいだ。俺も最初は敵を斬ることにはすごく抵抗があった。

 だがあの男は騎士が現れるなりすぐに急所を狙いにいった。まるで殺し屋のようだ。こいつは中々の手練だろうな。

 ソフィアさんは男の動きをじっと見ていた。すると、男がこちらに気づく。


「あの男は私が相手します。

 ユウト様は先にお屋敷へ戻っていてください」

「ですが、いくらソフィアさんとはいえ相手は殺しのプロだ。

 一人で戦うのは危険です。俺も戦います」


 しかし、ソフィアさんは首を横に振った。


「ダメです。もしユウト様に死なれた場合、ユウト様だけでなく、お嬢様も死ぬのですよ?ここはお嬢様に免じて、どうかお逃げください」

「ですが・・・」


 俺が反論しようとした時だった。

 男は一瞬でこちらの間合いに入り、俺に向けて剣を振りかざそうとしていた。


「なっ・・・」


 ソフィアさんとの会話に気を取られていて全くの無防備な俺だったが、


「させませんよ」


 ソフィアさんが間一髪のところで相手の攻撃を防いだ。

 

「さあ、ユウト様。今のうちにはやく!」

「くっ・・・!」


 俺はそう言われて走り出した。

 情けないことに、今の俺はあの男の攻撃に何も対処することができなかった。やはり魔法で強化ができないというのが大きいか。

 あの場で戦っていたとしても、ソフィアさんの足でまといになるだけだっただろう。


「ソフィアさん、どうか無事で」


 俺はそう願いながら屋敷へと走っていく。

 後方では、人々の悲鳴が聞こえてくる。さっきまでは賑やかで楽しげだった雰囲気も今ではなりをひそめている。

 とりあえず、あともう少しで屋敷だ。

 しかし、屋敷まで目と鼻の先という距離にまで来たとき、行く手を阻む者がいた。


「やぁっと見つけたぞ。ユウト=ヴィルヘルム!!!」 

 




 

 




 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ